院長インタビュー

地域住民から選ばれる病院を目指して-トヨタ記念病院の取り組

地域住民から選ばれる病院を目指して-トヨタ記念病院の取り組
岩瀬 三紀 先生

トヨタ記念病院 病院長

岩瀬 三紀 先生

この記事の最終更新は2018年07月23日です。

トヨタ記念病院は、1938年に診療所としてスタートしました。1942年にトヨタ自動車工業附属トヨタ病院、トヨタ自動車50周年に当たる1987年に現在地に新築移転し、トヨタ記念病院と改称し現在に至ります。今後も人口が微増傾向にある豊田市を支える病院として、トヨタ記念病院はどのように取り組んでいるのでしょうか。病院長である岩瀬 三紀先生にお話を伺いました。

トヨタ記念病院ご提供

トヨタ記念病院は、豊田市にあるトヨタ自動車株式会社のメディカルサポート部に位置付けられる病院です。もともとは工場に併設された附属診療所でしたが、現在は豊田市内を中心とした住民の健康を支える基幹病院となっています。2017年10月には、地域医療支援病院の認可を同じ医療圏域の豊田厚生病院と同時に取得しました。

岐阜県や静岡県に接し、名古屋市の2倍ほどの面積がある豊田市は、今後もしばらく人口は微増傾向にあると予想されまります。豊田市の医療の中核病院として、「『笑顔』と『まごころ』あふれる病院」を理念に、救急医療やがん診療など高度な専門医療を提供しています。

当院は愛知県がん診療拠点病院に指定されています。2015年には放射線治療病棟を新設し、高性能な二つの放射線治療機器を新規導入し、がん腫瘍に対してピンポイントかつ短時の放射線照射とより広範囲な面照射が実施可能になりました。これに伴い、少ない回数で効率的な放射線治療の実施が可能になりました。また、ロボット支援下手術(ダヴィンチ)も導入しました。現在、前立腺がんの治療に積極的に活用しています。今後、消化器領域や婦人科領域が展開予定です。 

救急医療への注力も当院の特徴であり、2011年には救急医療センターを設立しました。救急搬送件数は、2016年には年間約7,690件(2016年1月~2016年12月実績)になりました。

小児科は豊田厚生病院と協働して輪番制をとっています。

トヨタ記念病院ご提供
トヨタ記念病院ご提供
トヨタ記念病院ご提供

当院は、トヨタ生産方式(TPS)を用いて業務の改善を続けています。その改善運動ひとつが、看護助手さんの運搬における無駄をなくそうというものです。たとえば、看護助手の1日の動きを見てみると、シーツの交換と患者さんのお着替えに時間がかかっていることがわかりました。そこで、もともと2段だった台車を3段に変更したり、サイズを大きくしたり工夫をしたところ、1日の歩行距離が4.6kmから0.6kmに、移動時間は57.5分から7.5分に改善しました。トヨタ生産方式(TPS)の導入により小さな無駄をなくすことで、ほかの業務を丁寧に実施できたり、残業の低減が可能となりました。

発生した問題をどう「見える化」し、可能な限り早く対応するか、ということは非常に大切です。

たとえば、トヨタの生産工場ではアンドンの黄色いランプが点くと、班長などが集まってトラブルを解決し、すぐにラインを再稼働させます。また、赤いランプが点灯した際は、問題が解決しないままラインが進み不良品が生産されている可能性があるため、ライン全体が停止します。これを、トヨタの「あんどん方式」と呼んでいます。当院でもこのシステムを参考に、問題発生をいち早く把握、迅速な解決を目指しています。

トヨタ生産方式(TPS)に則した考え方に、「ジャストインタイム(必要なものを必要なときに必要な分だけ)」というものがあります。当院では、それを当直日誌に導入しました。

現在当院では、当直医師や薬剤師、放射線技師などが当直日誌を記入し問題点を明確化、それに対して院長である私や副院長が直接返事をするという方法を採用し、効率化を図っています。

また、迅速な問題解決のため、日誌の記入後すぐに私たちが確認することを徹底しています。

患者さんの満足度の向上を図る「CS向上活動」の一環として「気づきボード」というものを運営しています。これは、職員が院内で気になったことを書き込み、職員同士で患者さんにとって良い点と悪い点をきちんと評価・検討するシステムです。最近始めた取り組みですが、続々といい気づきが報告されています。

我々が目指しているのは、「総合力がある病院」です。脳卒中心不全などの急性期疾患やがん診療はもちろん、今後は複数の病気を持つ患者さんを総合的に診療する力が必要だと思っています。

「特定の優秀な医師がいなくなると、診療能力が落ちる」などということがないように、若手医師の教育もしっかりと行いながら、総合力の高い病院を目指してまいります。

トヨタ記念病院ご提供
トヨタ記念病院ご提供

当院は、能動的に働く若手医師に対しては、どこよりもレスポンスが早い病院ではないかと思っています。医師にとって大切なことは積極性であることと、どんなことにでも興味を持つことです。院内外の問題や自身の興味がある分野、取り組みたいことについて上司や同僚に相談すれば、きっと応えてくれます。また、若手医師には、周囲からの指摘を素直に受け入れられる人になってほしいと考えています。たとえば、何か責任のある仕事を任されることは、周囲から信頼されている証拠です。しかし、そこで間違いを指摘されたり、指導を受けることから逃避すれば、上司や同僚からの信頼は薄れてしまいます。そのため、若手医師には常に周りの意見に耳を傾ける、謙虚な姿勢を持ってほしいと考えています。

どれほど有名な医師がいて、高度な医療があったとしても、地域のみなさまの求める病院でなくては意味がありません。当院は、地域の方々が誇りに思えるような病院になりたいと考えています。そのためには、地域の開業医の先生方や、慢性期医療を担う病院などとの協力が必要です。これからは関連病院の従業員の教育などにも積極的に取り組んで地域完結の医療を推進する予定です。

地域の医療機関との連携を強化し、教育を推進して地域全体の医療技術の向上に努めてまいります。

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