院長インタビュー

救急・急性期医療を基盤に、地域に密着した医療を提供する新潟県立十日町病院

救急・急性期医療を基盤に、地域に密着した医療を提供する新潟県立十日町病院
吉嶺 文俊 先生

新潟県立十日町病院 病院長

吉嶺 文俊 先生

目次
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新潟県十日町市の新潟県立十日町病院は、24時間365日体制で提供している救急医療と急性期医療を基盤とし、地域に密着した医療を提供しています。日本有数の豪雪地域で、中核的な病院として重要な役割を担う同院の特徴や今後について、院長の吉嶺 文俊(よしみね ふみとし)先生に伺いました。

当院は1944年に日本医療団十日町病院として創立され、1949年に新潟県立十日町病院となりました。2024年で開院より80周年、県立病院としては75周年を迎えます。現在の稼働病床数は一般病床250床で、内訳は急性期が192床、回復期が58床です。開院より増改築を重ねてきましたが、2004年の新潟県中越地震での建物被災をきっかけに病院建て替えの機運が高まり、新病院整備へ向け動き始めました。外来棟、病棟と少しずつ建て替えが進み、2024年6月に駐車場を含め全て竣工し、新たなスタートを切りました。

新外来棟2階からの風景(新潟県立十日町病院よりご提供)
新外来棟2階からの風景(新潟県立十日町病院よりご提供)

当院は、1992年にへき地中核病院、1996年に災害拠点病院、2003年にへき地医療拠点病院に指定されました。また、2008年には災害派遣医療チーム(DMAT)の指定を受け、その翌年にはDPC対象病院となっています。さらに、2011年に公益財団法人 日本医療機能評価機構による病院機能の認定(Ver6.0)を受け、2023年には4回目の認定(3rdG,Ver2.0)を受けました。

当院が救急病院に指定されたのは1966年で、現在は十日町市と津南町で形成される越後妻有地域に、長野県栄村を含めた日本有数の豪雪地で二次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)を担っています。ウォークインを含めた救急患者の受け入れ総数は年間で約6,800件、そのうち救急車による搬送は約2,300件です(2022年度実績)。

糖尿病・生活習慣病センターの開設

2021年には糖尿病生活習慣病センターを開設し、糖尿病予防教育などに積極的に取り組んでいます。また、当センターでは糖尿病専門医(日本糖尿病学会認定)による外来を行っており、医師の診察の後に看護師の療養指導や栄養士による栄養指導、理学療法士などによる運動療法を受けることも可能です。

遠隔病理診断システムの導入

2023年には県立がんセンター新潟病院の協力を得て、“遠隔病理診断システム”を導入しました。これによりがんの手術中に組織を検査して方針を決める術中迅速病理診断が可能になり、当院での手術を希望する患者さんにも対応できることが増えてきました。

当院の整形外科は、常勤の整形外科専門医(日本整形外科学会認定)と新潟大学、魚沼基幹病院などからの非常勤医で診療にあたっており、身体の運動に関係する骨や関節、筋肉、神経などに生じた病気やけがを中心に、整形外科疾患全般にわたって診療しています。

得意分野は、骨折をはじめとした四肢外傷や、関節鏡を使った靱帯(じんたい)再建術を伴うスポーツ障害、外傷、人工関節置換術・関節鏡手術などを伴う変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)関節リウマチなど多岐にわたります。また、リハビリテーションにも積極的に取り組んでいます。

また、当院は日本整形外科学会認定専門医研修施設、日本手外科学会認定の基幹型研修施設としても知られており、整形外科部長を務める倉石 達也医師は、毎年夏に開催される『新潟手の外科セミナー』で講師を務めています。

このように幅広い領域で専門的な診療を行っていますが、近年は高齢化が進んで骨粗鬆症(こつそしょうしょう)に悩む人が増えていることから、骨粗鬆症による骨折で入院された方や、骨折のリスクがある方を対象にしたリエゾンサービスに注力しています。

リエゾンとはフランス語で“連携・連絡”などの意味を持っており、言葉どおりさまざまな分野の専門職がチームになって、骨粗鬆症治療のサポートを行っています。当院では内科医、歯科口腔(こうくう)外科医、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、ケースワーカー、管理栄養士が連携して、リエゾンサービスを提供しています。

骨粗鬆症の予防をメインにしていますが、大腿(だいたい)骨近位部骨折(大腿骨頚部(けいぶ)骨折、大腿骨転子部骨折)で入院された患者さんに対しては、リハビリなどを通して早期離床と再発防止のサポートをしています。また、入院中に歯科口腔外科を受診していただき、口腔内ケアを実施しているのが当院の特徴です。

骨粗鬆症と口腔内ケアは無関係に思えるかもしれませんが、骨粗鬆症の治療薬には歯の病気があると使えない薬があるため、口腔内ケアはとても重要です。また、しっかり食事を取ることができれば、退院後のQOL(生活の質)向上にもつながります。

患者サポートセンターでは、センター長を務める角道 祐一副院長を中心に、地域の医療機関や福祉施設などとの連携を大切にしながら、患者さんやご家族が安心して医療・福祉サービスを受けられるよう、スタッフが一丸となり活動しています。

また、病院内の職員同士あるいは地域住民の方々との連携や絆を深められるよう、越後妻有地域ならではの要素を取り入れた取り組みなども行っています。

健康ファイル
健康ファイル

当院には、健康や病気に関するさまざまな情報を1冊につづっておける“健康ファイル”があります。A4サイズの書類などを挟み込むもので、ファイルに挟む書類は医療機関からもらう書類や健康診断の結果、おくすり手帳などの各種手帳、使用中の抗がん薬記録など多岐にわたります。これらの情報は患者さん自身がファイリングして、病院にかかるときや検診を受けるときなどに持参し、必要に応じて医師や医療従事者に見せていただければと思います。

健康ファイルを持っていれば、自身の体調・健康管理に役立ち、健康への関心が高まるといったメリットも期待できます。また、病院や薬局などに提示することで、情報の共有をしやすくなります。特に新しい病院にかかるときや薬を処方してもらうときなどに、持病の有無や過去の病歴などを説明しようと思ってもうまく伝わらないときがあるかと思います。そのような場合でも健康ファイルを持参すれば、必要な情報がスムーズに伝わるのではないでしょうか。

また、当院は患者さんの医療や介護の情報を共有する仕組み“うおぬま・米(まい)ねっと”とも連携しています。ネットワークに参加している医療機関は、患者さんの診療情報などをネットワークを介して入手できますので、緊急性を要する場合でもスムーズに適切な医療サービスを受けることができます。健康ファイルとうおぬま・米ねっとをうまく活用すれば、地域の皆さんの健康維持に大いに役立つと思います。

今後は健康ファイルを活用して、自身が受けている医療の内容をもっと知ってもらい、健康な状態から病気になりかけている“未病”に陥ることを防げるような活動を展開していく予定です。そのためには将来的に“健康ファイル外来”を設置するのもよいかなと考えています。

少子高齢化が進むこの地域では、今後も高齢者を中心とした医療ニーズが拡大していくと予想しています。そのようななか、地域の中核的な病院として、住民の皆さんに密着した医療サービスを提供し続けていかなければなりません。理念に掲げている“生命の尊厳、信頼と安心の病院”を実践するために尽力してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

*病床数や診療科、医師、提供する医療の内容などについての情報は全て、2024年7月時点のものです。

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