院長インタビュー

教職員の健康、そして地域医療を守る─北陸中央病院が担う役割

教職員の健康、そして地域医療を守る─北陸中央病院が担う役割
清水 淳三 先生

公立学校共済組合 北陸中央病院 病院長

清水 淳三 先生

この記事の最終更新は2018年07月27日です。

北陸中央病院は、富山県小矢部市で日々地域住民の診療を行いながら、公立学校の教職員の人間ドックや診療なども行っています。急性期から慢性期、地域包括ケア病棟まで備える同院は地域医療を守るために市民病院的な役割も担っています。同院の取り組みについて、公立学校共済組合 北陸中央病院 病院長 清水淳三先生にお話を伺いました。

北陸中央病院外観(北陸中央病院よりご提供)

北陸中央病院は1964年に組合員やそのご家族に対する結核の療養病院として開院しました。その後、結核患者さんの減少を受けて、急性期医療を提供し、地域医療に貢献してきました。H26年度には、より地域医療に貢献できる病院を目指すために医療型療養病棟、H28年度には地域包括ケア病棟を設置しました。

医療型療養病棟とは、慢性期の患者さんのなかでも治療が必要な方々に入院していただくためのベッドを備えている病棟です。また、地域包括ケア病棟は急性期の治療を終えて在宅復帰までに、まだ不安のある患者さんを受け入れ在宅復帰の支援を行う病棟です。

近年、地域包括ケアシステムの構築が叫ばれるなか、急性期治療から回復期や慢性期、在宅復帰までを地域で包括的に提供していく必要があります。

急性期の診療が終了すれば治療が完了するのではなく、患者さんの在宅復帰に向けた取り組みを実施することで地域医療に今まで以上に貢献できると考えています。

清水先生と地域医療連携センターのスタッフの方々(北陸中央病院よりご提供)

当院の位置する小矢部市は2018年5月現在、市が経営母体となる市民病院がありません。しかし、地域医療を支えていくうえでは、市民病院的な役割を担う医療機関が必要です。そこで小矢部市に位置する公的病院である当院が、地域の市民病院的な役割を担うことになりました。

地域の市民病院的な役割を担うことで、地域のみなさまの健康を支え、守っていくことになります。そのために、当院ができる限りの治療をし、必要であれば地域や近隣の医療機関へのご紹介をして連携を強化しています。

以下では、当院が提供している急性期医療についてお話しします。

手術スタッフ(北陸中央病院よりご提供)

呼吸器外科、消化器外科を中心に外科一般の診療を行っています。呼吸器外科の分野では肺がんの治療を多く実施しています。2009年度の呼吸器外科の手術実績は4件と少なく、地域医療を支えていくには力不足な部分がありました。

しかし、2016年度の手術実績では71件と大幅に手術件数を伸ばしています。2010年に呼吸器外科を専門としている私が赴任し、色々な手術を実施する体制を整えることができたからです。

手術の際には、血管、消化器の外科の医師にも協力してもらいます。互いに協力して治療を行うことで、切除困難な呼吸器外科領域の治療に今まで以上に貢献できる手術体制を整えることができました。そして、外科治療の終わった患者さんを地域で継続してサポートしてもらえるように、地域の医療機関との連携を強化してきました。その結果、地元小矢部市だけではなく、近隣の南砺市や砺波市からも多くの呼吸器外科患者様をご紹介頂けるようになりました。特に呼吸器疾患については、砺波医療圏で唯一の呼吸器外科専門医を有する病院として、診断から治療、看取りまで地域で行えるよう、今後も尽力していきたいと思います。

手術の様子(北陸中央病院よりご提供)

整形外科では外傷のほかに、リウマチやスポーツ医療の診療に力を入れています。スポーツ医療では地域でスポーツをしている学生が多く来院しています。また、市内には小矢部市立小矢部ホッケー場があり、ホッケーが盛んに行われています。そのため、学生だけでなくホッケーの選手が来院することもあります。

スポーツ医療は、治療のほかにリハビリテーションもとても重要です。治療後にはまたスポーツをしても問題ないようにしなくてはなりません。そのため、整形外科とリハビリテーション科では密接に連携をし、患者さんの治療にあたっています。

内科では糖尿病の診療や研究が盛んに行われています。当院では、人間ドックの結果をデータベース化して保存してあり、そのデータを用いることで、糖尿病予備軍だった患者さんが何年ほどで糖尿病を発症するのか、血糖値の変化などから研究することができます。

内科の医師のなかには、このデータベースを利用して多くの論文を発表している方もいます。日々の診療も行いながら、研究、論文発表のアカデミックな分野で活躍することもできるのが当院の内科の特徴です。

当院を利用する組合員は、北陸3県および新潟県、長野県の公立学校の教職員です。特に地元の富山県や石川県だけでなく、遠距離の福井県、新潟県、長野県の一部の地域からも毎年人間ドックを受けに来ている方々がおり、教職員の健康を守るのが当院の役割のひとつです。健康を守るという観点でいうと、近年、教職員のメンタルヘルスが問題になっています。

教職員の仕事はハードであり、一部では過激な保護者の対応などで心が疲弊してしまう教職員もいます。しかし、問題なのは教職員本人が自身の心の疲弊に気が付いていないことです。心が疲弊していることに気が付かず、そのまま体調を崩してしまうこともあります。

当院では、そういった教職員のメンタルヘルスケアとして3名の常勤臨床心理士の相談事業を行っています。さらに精神科の医師が週2回の診療も行っています。

人間ドック受診の際に、メンタルヘルス相談を受けていただけます。メンタルヘルス相談のみのご予約も可能です。また、来院しての相談だけではなく、2017年は北陸3県を中心に公立学校を訪問し、学校内で相談ができるメンタルヘルス訪問相談を実施しました。2018年度は更に拡充していくつもりです。

2016年8月から小児科を再開させ、地域の小児医療を提供しています。小児科を再開させたことを受けて院内に病児・病後児保育「おやべにこにこ園」を開設しました。

病児・病後児保育室とは、保護者の方が就労などによって病気中や病気が回復しつつあるお子さんの看護ができないときに一時預かりをする施設です。当院では病児・病後児保育室を小児外来の隣に設置しています。そのため、お子さんの病状が変化したときでも迅速な対応ができます。

おやべにこにこ園の対象となるお子さんは生後6か月から小学6年生までです。また、対象の病気は麻疹(はしか)以外の病気や感染症で、風邪だけでなく水ぼうそう胃腸炎なども受け入れています。

病児・病後児保育を開始したことで、地域の働くお母さんや、今後就労を考えているお母さんの就労支援につながることを期待しています。

カンファレンスの様子(北陸中央病院よりご提供)

当院の医師には「診療はローカルに、発信はグローバルに」ということを伝えています。日々の診療をしっかり行うことはもちろんですが、自分の研究成果は積極的に全国学会で発表するように指導しています。そして、更に最終的には論文に残すことが重要であり、できるだけ多くの人が目にする英文雑誌に掲載されることを勧めています。研究は自身の実績となり、医師としてのキャリアを形成していくうえでも重視されることも多くあるからです。

また、市中病院にはさまざまな病状の患者さんが来院します。その患者さんに対してどのような診療をしたのか、どのような治療結果が得られたのかを後世に残すということも、発信することの意義のひとつと考えています。自身の経験が、同じ病状の患者さんが別の医療機関でみられた際の治療の指針のひとつになってほしいという思いで、日々診療の傍ら取り組んでいます。ぜひ、若い先生方にもこういった思いで日々頑張っていただきたいです。

診療の面では、当院は急性期から慢性期、地域包括ケア病棟を備えているので、幅広い経験ができる環境であると考えています。地域の医療ニーズに対応し、どんどん変化していく医療の状況に対応していける医師になってほしいと思います。

北陸中央病院よりご提供

北陸中央病院は患者さんに対して親しみやすい病院を目指しています。そのために、地域のニーズを迅速に取り入れ対応し、地域医療に今まで以上に貢献していきたいと思います。また、組合員の心身の健康を守るために相談事業や人間ドックも注力していきます。

地域のみなさまに親しみを持ってもらい、なおかつ病気に対する啓蒙活動として市民フォーラムを年1回開催しています。地域のみなさまはがんについての関心が高いため、がんをテーマに開催することが多くあります。また、金沢大学附属病院と協力し、金沢大学の整形外科教授にロコモティブシンドロームについてお話ししていただいたこともありました。

当院は、教職員の健康維持に貢献していくとともに、地域の市民病院的な役割を担っていきます。スタッフ一同研鑽を重ねてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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  • 公立学校共済組合 北陸中央病院 病院長

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