院長インタビュー

医療への確固たる信念を貫く川崎幸病院

医療への確固たる信念を貫く川崎幸病院
山本 晋 先生

川崎幸病院 院長/川崎大動脈センター長

山本 晋 先生

目次
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川崎幸病院は、1973年に開院した急性期医療を中心に手がける病院です。

病院長を務めておられる山本晋先生は、アメリカで心臓血管医療の臨床業務に従事したのち帰国、大学病院での勤務を経て、同院の代名詞でもある脳心血管診療の充実と発展にご尽力されました。2018年1月の院長就任以降は、脳心血管診療・がん診療・総合内科診療を同院の3本柱に据えた改革を進めています。

同院における脳心血管診療・がん診療・総合内科診療のそれぞれの特性、先生が考える同院の将来像について、山本晋先生にお話を伺いました。

病院外観(川崎幸病院よりご提供)

川崎幸病院に入職するにあたって、法人理事長と次のような話をしました。

詳しくは後ほど『「大動脈瘤は手術しても死ぬ、しなくても死ぬ」が常識だった時代があった』でお伝えしますが、心臓血管外科診療の中でも特に大動脈瘤治療は、病院にとっても非常に負担の大きいものです。そのため、治療には時間も人件費もかかることをお伝えした上で、病院にはこれらの負担を受け止めてもらうこと、一度いただいたゴーサインは決して変えないこと、この2点を約束していただきました。このときの約束は未だ破られていません。

心臓血管外科医として赴任してみると、やる気も技術も持ちあわせている看護師やコメディカルが多く、現場のモチベーションも非常に高いものでした。

米国で学んできた大動脈疾患治療の全てを総動員して1件ずつ症例を重ねていったところ、スタッフ全体の技術力向上がみられるようになりました。やがて当院での手術件数や、病院見学の申し込みや問い合わせが増えてきました。全ての歯車が少しずつ動き出したのです。2003年には大動脈センター(現:川崎大動脈センター)を立ち上げて、大動脈疾患治療が川崎幸病院のアイデンティティへとなっていきました。

2018年4月より病院長に就任したことを機に、大動脈疾患診療での成功体験を他分野にも広めると同時に、病院の独自性を打ち出すために病院の3本柱を脳心血管診療・がん診療・総合内科診療に定めて、それぞれ強化を図りました。

ドクターカー(川崎幸病院よりご提供)

私がまだ若手医師と呼ばれても差し支えなかった当時、日本国内では心臓血管手術の中でも特に大動脈瘤手術は実施件数自体が少なく、死亡率も決して低いものではありませんでした。これは、手術が長時間化しやすいことや死亡率・合併症の発症率の高さを考慮して、あえて積極的に手術せず循環器内科で様子見することが多かったことも関係しているのですが、いずれにしてもやがて大動脈瘤が破裂して亡くなったり、緊急手術で一命をとりとめても合併症で寝たきりになったりすることは避けられません。そのため、患者さんやご家族のみでなく医療従事者間でも、大動脈瘤と治療方法に対するイメージは非常に悪いものでした。

手術件数には現れていないものの大動脈瘤手術を必要としている患者さんは大勢いる。一人でも多くの方に必要とされる治療を届けるためにはどうしたらよいか考えぬいた結果、大動脈治療に特化した「川崎大動脈センター」の構想と開設に至りました。

手術風景(川崎幸病院よりご提供)

川崎大動脈センターの診療は、一般的な心臓血管対象疾患ではなく、大動脈疾患診療に特化しています。

大動脈瘤治療には、開胸・開腹手術およびステントグラフトと呼ばれるメッシュ状の金属が内蔵された人工血管を留置する方法があり、患者さんの病態を見極めながら治療方法を選択しているのが特徴です。

センターには専用の手術室・ユニットを導入したほか、大動脈瘤破裂や大動脈解離は時を選ばず起こり即手術が必要となることから、緊急手術に24時間対応可能にしました。

超高齢者と呼ばれる90歳以上の方や透析が必要な方、脳梗塞など合併症を有しているなどいわゆるハイリスクの方、また他院でステント留置術をしたものの再治療が必要となった方にも対応しています。

がん診療は、今後さらなる充実が必要とされる医療分野の1つです。当院も、各種がんに対する診療体制や患者さんへのサポートを手厚くすべく院内改革を進めている最中です。

胃がん大腸がんといった消化管のがんに対する診療は、2007年に開設された消化器病センターが中心となり、内視鏡を使用した体にかける負担を極力減らした治療を積極的に行っています。

消化器以外では、泌尿器科疾患、婦人科疾患に加え、乳がんに対する手術や形成外科との共同による乳房再建などにも取り組んでいます。

患者さんは複数の病気を抱えがちなことに加え、ある病気が別の病気や症状を招いていることも多いため、全ての病気をきれいに割り切れるわけではありません。

しかしここ十数年の流れを見ていると、たとえば心筋梗塞なら循環器内科、腎不全なら腎臓内科など専門の診療科が担当する一方で、原因がよくわからないものはいわゆる内科が診るといったように、同じ内科でもサブスペシャリティーが優先され、これらを追求するような方向に流れているように感じられます。

全ての病気や症状はお互いに影響を与えあっていることを考慮すれば医師、特に研修医には患者さんの様子から「まだ原因はわからないけど、何かが変だ」と感じ取れる診察力の習得と研鑽が必要といえるでしょう。

こうした技術を習得することは、将来自分の選択するサブスペシャリティーに進むとしても、医師としては必須の基礎と考えます。したがって、このような研修医教育のためにも充実した総合内科あるいはそれに類する能力をもった医師を揃える必要があります。

 

医学生や研修医など若手医師とお会いするとき、名医になること、一流を目指すことの重要性について話しています。

まず良医について、よく「良医」や「名医」という呼び方を耳にしますが両者は性質が異なるものと考えており、心臓血管外科を志すならば「名医」を目指していただきたいです。

慢性的な病気で長期間のお付き合いが必要なものであれば、患者さんとご家族の心情などにも配慮できる「良医」の存在が重要でしょう。

しかし心臓血管外科では、どれほど感謝されても患者さんが亡くなってしまえばそれまでです。そして、手術が成功すれば以前のような生活に戻ることも不可能でない場合が多いです。手術で治せる可能性が残されているからこそ、どのような症例にも立ち向かい手術を成し遂げる「名医」になっていただきたいのです。

感謝の言葉をかけられることがなくても、患者さんの記憶が時を経るにしたがって「そういえば心臓手術を受けたな」というレベルで風化してもよいのです。自分の足で歩いて退院する姿を見届けることができれば、心臓血管外科医冥利に尽きると考えています。

一流を目指すことの重要性は、技術面はさることながら心臓血管外科医としてのあり方や心構えを教えていただいた恩師からの言葉がベースになっています。

この先生は「心臓血管外科医に一流あって二流なし」と、常に弟子である私達に説かれていました。

患者さんの立場に立ってみたとき、一流と呼ばれる医師の手術を受けたいと思うでしょう。助けを求めて手術を受ける患者さんに応えるためには、心臓血管外科医は一流の存在であり続けなければならないのです。

心臓血管外科手術は飛躍的な発展を遂げ、手術を受けた患者さんが亡くならない、自分の足で歩いて退院していくなど、以前では想像すらできなかった夢のような光景が広がっています。これらが実現した背景には大勢の先輩外科医の努力があることを決して忘れてほしくないからこそ、この2点をお伝えしています。

少し厳しい内容ではありますが、これから心臓血管外科を志す方、すでに歩み始めている方には、ここでお伝えしたことを胸に刻んでいただければと考えています。

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  • 川崎幸病院 院長/川崎大動脈センター長

    山本 晋 先生

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