院長インタビュー

患者さんの生き方と自立を支え継続可能な医療を模索するJA高知病院

患者さんの生き方と自立を支え継続可能な医療を模索するJA高知病院
谷木 利勝 先生

高知県厚生農業協同組合連合会 JA高知病院 名誉院長

谷木 利勝 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年11月26日です。

高知県厚生農業協同組合連合会 JA高知病院(以降、JA高知病院)は高知県中央部にある、「診る・治す・看る・癒やす」を合言葉に、ホスピタリティあふれる医療の提供を目指す病院です。院長を務めておられる谷木利勝先生は、この地域の医療体制を途切れさせることのないよう、地域医療を充実させることの重要性や病院経営について職員一人ひとりにも考えてもらうようにしているとおっしゃいます。

谷木先生に、同院の診療体制とその特徴、地域医療、経営状態改善のための取り組みと採用教育体制についてお話を伺いました。

病院外観 JA高知病院よりご提供

当院のある南国市は高知県中央部にあり、高知市と隣接しています。こうした地理的特徴から、当院のある南国市のみでなく高知市や周辺地域にお住まいの方が来院されることも多いです。

当院では、救急医療のほか、周産期医療や小児科医療、そして内科が中心となって呼吸器診療を手がけています。

複数の病気を抱えている患者さんも多くそれぞれに適した医療が異なるため、当院では複数の診療科同士と、医師・看護師・薬剤師など多職種の連携をそれぞれ意識した診療体制を取っています。必要に応じて、近隣地域の医療機関をご紹介させていただく場合もあります。

手術風景 JA高知病院よりご提供

当院は高知県指定の救急指定医療機関として、二次救急医療を手がけています。二次救急医療とは、クリニックや比較的小規模な医療機関では対応が難しい、入院を伴う治療が必要な救急医療のことです。

南国市および高知市東部で発生した救急車をできる限り受け入れています。当院では対応が難しい症例に関しては、三次救急医療機関への搬送を行っています。

当地域のお産と子供の健やかな成長を見守るため、産婦人科と小児科が中心となって周産期医療と小児科医療を手がけています。

産婦人科では、妊娠判定から妊婦検診、分娩などの産前管理と産後の定期検診といった診療のほか、出産や育児に対する正しい知識を深めていただくために母親・両親学級などを開催しています。ご実家などがこの地域にある方を対象に、里帰り出産も受け付けています。ほかにも、不妊症治療や生殖器腫瘍、内分泌疾患などに由来する婦人科一般診療も行っており、女性の生涯をつうじて健康をサポートできる体制を整えました。

小児科では風邪や肺炎など日常的な診療のほか、心疾患アレルギー疾患、神経疾患など身体的疾患と、不安や心の問題に対するケアにも力を入れています。

CT写真 JA高知病院よりご提供

当院では、内科が消化器疾患・呼吸器疾患・糖尿病など内分泌疾患・腎疾患に対する診療を担当しています。特に、脂質異常症や糖尿病といった生活習慣病に悩む方が多いため、必要に応じて各診療科と連携しながら早期診断と早期治療、予防にも取り組んでいます。

高齢の患者さんでも治療の選択肢が狭まることのないよう、内視鏡を使用したポリープ・粘膜切除術や止血術など、「低侵襲治療」と呼ばれる体への負担をできるだけ減らした治療にも取り組んでいます。

院内に高知健診センターを併設しており、地域の皆さんの健康管理や病気の早期発見・早期治療に貢献しています。

健診センターでは、各種健康診断のほか、特定健診、事業所健診、協会けんぽによる生活習慣病健診、人間ドックを実施しています。内容や費用について、詳しくは当院までお問い合わせください。

JAいなほとJAみのりは、生きがいをテーマに実りある生活を支援するため2006年に開設した施設です。家庭・地域の結びつきを大切にしながら、医療・看護・介護・リハビリテーションなどを提供して、無理のない在宅復帰支援や在宅生活支援を行っています。

カンファレンス風景 JA高知病院ご提供

日本全国で少子高齢化が進行しており、当院のある高知県や南国市も例外なくその波が押し寄せています。JA組合員や地域の方の健康を支え続けてきた当院にとって、年を重ねた方でもこの地域で安心して暮らしていただくために必要な医療体制の構築とサービス提供は、大きな課題であると同時に使命でもあります。

当院では地域内での医療を円滑に回すため、地域包括ケア病床を2014年10月、地域包括ケア病棟を2016年8月にそれぞれ導入しました。これは、急性期という病気や症状などが急激に進行しやすい時期を脱した患者さんを受け入れて、在宅復帰を目指したリハビリテーションや療養支援などを行ったり、ご自宅や施設などで療養中の方が体調を崩されたときの受け入れ先となったりする場所です。

病病連携と病診連携と呼ばれる、医療機関同士の連携にも注力しています。

病病連携は病院と病院同士、病診連携は病院とクリニックなど診療所との連携のことです。医療機関同士がお互いの強みをいかした連携をすることは、患者さんの病気や身体状態にあわせた医療や介護・保健サービスを地域全体で提供しやすくなると同時に、医療機関側にも地域内の医療資源有効活用をしやすいというメリットがあります。

退院された患者さんが療養生活をスムーズに開始できるようにするための退院支援を行っています。

具体的には、患者さんやご家族に要望や不安などをヒアリングして、スタッフ間で情報共有や問題点の洗い出しと解決策の模索を行い、退院前カンファレンスによる地域の看護職やケアマネージャーなど在宅医療を手がける方たちへの橋渡しなどがあります。

訪問看護ステーションからの看護師派遣がはじまるまでの間、必要に応じて当院から看護師派遣を行っているほか、医療措置が必要なものの訪問看護ステーションを利用されていない患者さんなどに対するサポートなども行っています。

また介護施設との交流会を年に2回のペースで開催しており、日頃から顔の見える関係づくりを進めています。

地域に必要とされる医療を提供し続けるためには、質の向上と維持といった努力ももちろん、「いかにして赤字を減らして病院事業を継続させるか」といった経営的な観点とマインドが重要になります。これは全体の舵取りをする院長だけでなく、病院に携わるすべての職員にも真摯に向き合ってもらう必要があります。

当院ではコンサルタントによる経営分析結果をもとに、断らない救急医療の実現や、先にご紹介したような医療機関同士の連携による患者さんの確保などに、職員全員で取り組み続けています。

経営改善に向けた当院独自の取り組みに、ワーキングチームによる活動があります。

これは、診療科ごとに複数名で構成されているグループで、毎月の外来患者数と入院患者数の目標人数を設定、実績がこれらを下回った場合には改善点の洗い出しと検討を重ねたうえで、達成可能な内容から取り組んでいただいています。

現場に立つ方たちだからこそわかる感触を数値化して、目標設定・達成に向けて挑戦していただけたことで、経営状態の改善を少しずつ実感しています。がんばっていただいた職員にはインセンティブも用意しており、達成感を感じてもらうのみでなく労働に対する意欲の活性化にもつなげています。

医療体制存続には若手医師育成が不可欠です。これは、当院のある南国市や高知県のみでなく、日本全体が抱えている問題といえるでしょう。

当院は、日本内科学会教育関連病院、日本外科学会外科専門医制度関連施設、日本耳鼻咽喉科学会専門医制度認可研修施設などに認定、また日本産科婦人科学会 徳島大学産婦人科研修プログラム専門研修連携施設として参画、地域密着型の病院として地域に貢献するだけでなく、後進の医師育成の面でも活躍しています。

二次救急医療を担い地域密着型の病院として地域に親しまれている当院には、病気や心身の不調に悩む方が大勢訪れます。この地域で学んでいる医学部生や若手医師に向けて門戸を拓くということは、医療技術の習得だけでなく、医療との向き合い方や地域の未来に向けた医療を考えていただくきっかけの提供にもつながっていると考えています。

医学部生や若手医師とお会いする機会があるとき、先輩医師と院長としての立場から「自分の信念を貫くこと」と「自分なりのストレス解消方法を見つけること」の必要性についてお話ししています。

自分の信念を貫くことの大切さは特に院長就任後に痛感しました。さまざまな考えや意見があるなか、自分の頭で考えて進むべき道を探してください。そして、正しいと思う道を見つけたら、自分を信じて歩み続けてください。

自分なりのストレス解消方法に関しては、仕事とのオンとオフをしっかりつけるためにも、何か自分に合った方法を探してください。私は学生時代にはじめた剣道を今でも続けていて、運動不足とストレス解消に役立てています。

研修医や若手医師などには、必要あれば病院のお金で短期間の国内留学も許可しようと考えています。

当院は、地域の皆さんの健康を支え、そして皆さんから選んでいただけるような存在となるため、職員全員で医療・福祉サービスの提供に取り組んでいます。

健康や医療に対する不安などがありましたら、いつでも当院にご相談ください。

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  • 高知県厚生農業協同組合連合会 JA高知病院 名誉院長

    谷木 利勝 先生

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