院長インタビュー

北海道のがん医療の充実に向けて多角的アプローチを行う北海道がんセンター

北海道のがん医療の充実に向けて多角的アプローチを行う北海道がんセンター
加藤 秀則 先生

独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター 院長

加藤 秀則 先生

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この記事の最終更新は2018年12月07日です。

北海道がんセンターは、北海道内のがん医療の中核を担うがん診療連携拠点病院です。胃がん大腸がん肺がんなどの患者数が多いがんをはじめとして、骨肉腫口腔がんといった特殊ながんの治療にも力を入れています。病院全体ががん医療に特化しているため、他科連携によって手術から術後のケア、容体管理、再建手術、緩和ケアに至るまで、包括的にがん患者さんを支えることができます。病院の改築を控え、外来化学療法の拡大を目指したいという北海道がんセンターは、今後どのように発展していくのでしょうか。院長の加藤秀則先生にお話を伺いました。

 

病院外観(画像:北海道がんセンターご提供)

北海道がんセンターは、1896年に開設された衛戍病院をルーツとする、長い歴史を持つ病院です。終戦を機に国立札幌病院と改称し、1957年には総合病院となりました。1968年、がん患者数の増加によるがん診療体制の強化要請により、国立札幌病院に北海道地方がんセンターが併設されます。ここから当院はがん医療の基幹病院になることを目指して発展を続け、2004年には独立行政法人国立病院機構北海道がんセンターとして新しいスタートを切りました。

当院はがん診療に特化した病院であり、5大がんと呼ばれる胃がん大腸がん乳がん肺がん、肝臓がんはもちろん、子宮がん(子宮頚がん、子宮体がん)や泌尿器がん(前立腺がん)など、あらゆるがんの治療に力を入れています。このような一般的ながんだけでなく、骨肉腫口腔がんなど、非常にまれながんの治療も行っていることが特徴です。

 

手術風景(画像:北海道がんセンターご提供)

前立腺がんや胃がん、子宮がん、大腸がんの場合には手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いた手術も行っており、患者さんの要望と容体に応じた方法を採用しています。

高齢のがん患者さんは合併症を持っている場合が多く、手術前後に心臓や目、皮膚など障害の起こりやすい部分や全身を管理する医師が必要です。

北海道がんセンターでは循環器内科や眼科、皮膚科、形成外科などの科が術前・術後、抗がん剤投与時など必要に応じて各科と連携しています。

たとえば、脳神経外科はがんが脳に転移した場合に備えて即座に対応できるような体制をとっています。また、皮膚科や眼科は抗がん剤による副作用が皮膚や目に生じないよう管理を行い、循環器内科は心臓に病気を持った患者さんの全身管理を担っています。

歯科・口腔腫瘍外科では口腔がんの手術治療だけではなく、一般歯科診療での口腔ケアも実施しており、術後の口腔内トラブル予防に努めています。

当院の形成外科は再建に特化した診療科で、乳腺外科と連携体制で乳がん手術後の形態的改善に取り組んでいます。実際に、当院で乳房切除を行った患者さんの多くが形成外科で乳房再建を受けています。

こうしたチーム連携の鍵を握るのは、毎週開催している定例のキャンサーボードです。医師や看護師、栄養士など、治療に関係する担当者が一堂に会し、患者さんの治療方針や状態について共有しあいます。

 

定例キャンサーボードの様子(画像:北海道がんセンターご提供)

緩和ケアセンターは公益社団法人日本看護協会認定がん看護専門看護師や精神科医などを含めた専門の緩和ケアチームが、がん治療の過程で起こる症状や不安、苦痛を和らげるためにさまざまな治療や心理的支援を行う施設です。患者さんががん治療と向き合いながら、より良好な生活を送ることができるよう、チーム一丸となってサポートをしています。

また、2020年には病院の改築を完了し、新病棟に緩和医療専用の病棟が設置される予定です。これにより、緩和医療をさらに充実したものにしていきたいと考えています。

当院は厚生労働省指定の都道府県がん診療連携拠点病院(以下、「拠点病院」)で、北海道内のがん診療の中核を担う施設です。拠点病院として、相談支援と人材育成を積極的に行っています。

注)がん診療連携拠点病院:その地域でがん医療の拠点となる病院。医療の提供だけでなく、地域連携体制の構築や相談支援、情報提供などを包括的に行う。)

がん治療に関する相談をはじめ、就労やセカンドオピニオン、介護、医療費など、病気によって生じるさまざまな困りごとの相談を受け付けています。北海道全域から医療ソーシャルワーカーを集めて院内でがんに関するセミナーを開催したり、当院から医師を派遣して講演会を開いたりすることもあります。

 

がん相談支援センターでの講演会の様子(画像:北海道がんセンターご提供)

北海道がんセンターでは後期研修医のサブスペシャリティ取得を支援しています。がん医療をより専門的に学んでいきたいという方は、当院で研修を受けることでスキルアップが望めるでしょう。

また、医師以外の医療従事者の育成にも努めています。公益社団法人日本看護協会認定の各種専門看護師(緩和ケア、皮膚・排泄ケア、乳がんなど)の資格取得の支援や、日本病院薬剤師会認定のがん専門薬剤師などの資格取得のためのトレーニングプログラムを用意し、専門性を持ったスタッフの育成に力を注いでいます。

今後は外来化学療法の実施体制を充実させ、患者さん主体の治療により近づいていきたいと考えています。

2018年現在、当院の外来化学療法の受付日時は平日の日中のみです。しかし、がん患者さんの社会復帰を考えた場合、平日の実施のみでは日々の就労を妨げてしまいます。そのため、夕方から深夜や土日に外来化学療法を行えるような体制を整えていくことが求められます。そもそもがん治療とは患者さんを主体として行われるべきものであり、病院の都合で患者さんの生活が治療にとらわれるような状況は望ましいとはいえません。がん患者さんが退院後に仕事に就き、家族と過ごす時間を保ちながら治療を受けていただくために、現状の外来化学療法の在り方を見直す必要があるでしょう。

職員が無理なく働けるようにシフトの調整や人員を調整しながら、徐々に外来治療の拡大を目指していきます。

 

 

北海道がんセンターは、患者さんにお気軽にご相談いただける病院を目指して努力を重ねてきました。

当院では、医師、医療ソーシャルワーカー、看護師など、職員皆が団結して患者さんの悩みや病気を解決するために日々尽力しています。いきなり医師のもとを受診することが不安な方は、まずがん相談支援センターを訪れて下さい。社会福祉士、看護師、ピアサポーターなどが揃っており、状況に応じた相談ができます。

先にも触れましたが、2020年には病院の全面改装も終えられる予定であり、患者さんによりよい医療を提供できるよう引き続き取り組んでいきます。がんに関して少しでも不安なことがある場合は、どうぞお一人で悩まず、お気軽に当院にいらしてください。

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  • 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター 院長

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