院長インタビュー

坂出市民に必要な医療過不足なく提供することが使命─坂出市立病院の取り組み

坂出市民に必要な医療過不足なく提供することが使命─坂出市立病院の取り組み
岡田 節雄 先生

坂出市立病院  院長

岡田 節雄 先生

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この記事の最終更新は2019年01月07日です。

坂出市立病院は、香川県坂出市で急性期医療を主に、在宅医療も提供する公立病院です。沿革上のターニングポイントとなった1991年以降、経営改善のために職員一同で努力を重ね、大きな成長を遂げて今の病院があるのだと院長の岡田節雄先生はおっしゃいます。どのような取り組みを行い、現在の姿へと成長したのか、お話を伺いました。

 

坂出市立病院外観(坂出市立病院よりご提供)

坂出市立病院は1946年に開院し、2018年現在に至るまで70年以上の歴史を誇る市民病院です。増床や診療科の拡充を行い、また急性期医療と在宅医療に力を入れながら、地域医療に貢献できるように尽力してきました。

前々任の院長が赴任した1991年当時、当院は医業収支の赤字が続き、民間病院であれば倒産していてもおかしくはない状況でした。この危機的状況を受けて、当時の院長は職員を厳しく指導し、職員は自らを奮い立たせるようになったといいます。

当時の院長が初めに着手したのは組織風土の改革でした。自分たちは公立病院の職員であるということや、地域医療の担い手だということについてより深く考えることで、よりよい医療の提供とは何か改めて意識することにつながったと思います。

職員の努力の甲斐あって、当院は地域の急性期医療を担う病院として成長し、病院経営は持ち直しました。その結果、救急告示病院、へき地中核病院などの指定を受けました。2010年には、地域の急性期医療を支える健全な病院経営の努力が認められ、自治体立優良病院総務大臣表彰を受賞しました。表彰を受けられたことは、地域の皆さんのご支援のもと、職員が努力を重ねてきた結果だと思います。

 

救急外来(坂出市立病院よりご提供)

地方の中規模病院に求められる要素とは、ひとつの診療分野に特化することではなく、すべての診療科をカバーできる総合力だと思います。急性期医療はもちろんのこと患者さんの在宅復帰に向けたサポートも合わせて充実させることで、地域に求められる医療を充実させることができるのではないでしょうか。

そのため、当院では多くの診療科を設置し、さまざまな病気に対応できる体制を整えています。たとえば、呼吸器疾患については内科と外科を備えることで、呼吸器感染症アレルギー性疾患などの内科的な診療だけでなく、肺がん気胸などの外科的な治療が必要な病気にも対応しています。

血液内科では、白血病悪性リンパ腫多発性骨髄腫などの血液がんを中心とした、血液疾患に関する治療を行っています。当科には、一般社団法人日本血液学会が認める血液専門医が在籍しており、患者さんの病状に配慮しながら、造血幹細胞移植や抗がん剤治療などを行っています。また、知識と経験をもとに、なるべくご希望に添った医療を提供するように努めています。坂出市だけでなく、周辺地域からの患者さんも広く受け入れています。

 

HCU病棟(坂出市立病院よりご提供)

訪問診療は急性期医療の提供とともに力を入れていることのひとつです。急性期の治療が一段落した患者さんは、その後の病状やご家庭の状況に応じて回復期リハビリテーションや慢性期の医療機関へ転院、またはご自宅へ戻ることになります。当院では可能な限りご自宅への復帰を目指し、患者さんが治療後も住み慣れた地域で過ごせるようにサポートします。しかし、治療後から間もない復帰を不安に思う患者さんもいらっしゃると思います。当院では、訪問診療や看護を充実させることで、ご自宅に帰ったあとも医療が受けられる環境を整えることで、在宅復帰への不安を軽減できると考えています。

訪問診療や看護を充実させるにあたり、1997年にすこやかライフ支援室を設置しました。すこやかライフ支援室は、訪問診療を利用している患者さんが夜間に具合が悪くなった場合や、ご自宅でのお看取りなどに対応するため、スタッフを派遣する部署です。支援室に所属しているスタッフは、24時間体制でご家族からの連絡に対応するために、交代でPHSを所持しています。患者さんの具合が悪いときはすぐにご自宅に向かい、必要であれば当直医の手を借りて処置にあたります。

退院後も、在宅診療、看護の面からサポートすることで、患者さんが住み慣れた地域で過ごせるように尽力しています。

当院の今後の目標は、地域の期待に応えられるように病院機能をさらに充実させていくことです。たとえば、診療科については、産科と脳神経外科の開設を計画しています。

産科の充実は地域からも望まれており、再開に向けて医師の確保や設備の拡充を進めています。当院で産科を再開し、地域でお産を考えている妊婦さんやご家族の期待に応えたいと考えています。

脳神経外科は、2018年12月現在、香川大学から派遣された脳神経外科の医師が週に半日診療を担当している状況です。脳神経外科を開設し、常勤の医師が在籍していれば、外来診療でより多くの患者さんに対応できることはもちろん、くも膜下出血などの緊急の処置を要する病気の治療にも迅速な対応が可能なため、救急医療の面でも地域に貢献できると思います。

地域の皆さんの期待に応え、求められる医療を提供していくことが、公立病院としてのあるべき姿だと強く感じています。産科と脳神経外科の開設に向けて、尽力していきます。

 

瀬戸大橋まつりに参加する坂出市立病院の職員の方々(坂出市立病院よりご提供)

当院は病院経営が困難な状態から地域の皆さんのご支援のもと、急性期医療に主軸を置きつつ、在宅医療の提供も可能となるまで、成長しました。地域の皆さんが坂出市で充実した急性期医療、そして在宅医療を受けることができる環境をさらに整えていくために、職員一同、今まで以上に努力を重ねてまいります。急性期医療とその後の在宅医療に注力しながら、地域に求められる機能を発展させ、維持してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

院内で開催されたクリスマスコンサートの様子(坂出市立病院よりご提供)

若い医師には、自身の専門分野の技術や知識を多く身に付けると共に、総合診療の大切さも改めて理解してもらえたらと思います。専門性を重視し、知識と技術を身に付けていくことは、医師としてひとつの正しい姿です。しかし、診療とは、病気そのものを診ることだけではありません。患者さんの家庭環境、入院中や退院後に必要なサポートなどのさまざまなことを考えて、患者さん自身を診療することが大切です。医師として患者さんからも高い評価を受けることができる地域医療の担い手になってください。医療の半分はサイエンス、残りの半分はヒューマニティーです。高い医療技術の習得と同時に、豊かな人間性と正しい倫理観を養ってください。

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