院長インタビュー

先端医療の積極的導入と医師の教育を介して、患者さんが来たいと思う病院を目指す木沢記念病院

先端医療の積極的導入と医師の教育を介して、患者さんが来たいと思う病院を目指す木沢記念病院
出口 隆 先生

社会医療法人厚生会木沢記念病院 病院長

出口 隆 先生

石原 哲 先生

中部国際医療センター 理事長補佐官、泌尿器科 部長、がんゲノム診断・診療センター長

石原 哲 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年05月30日です。

木沢記念病院は、岐阜県美濃加茂市に位置する総合病院です。同院は、医療技術の拡充や若手医師の教育に力を入れて取り組んでおり、近年ではがん治療にも注力しています。その一環として、2017年には「がんゲノム診断・診療センター」も新設されました。

先進的な医療と独自の取り組みで地域への貢献を目指す木沢記念病院について、病院長の出口隆先生とがんゲノム診断・診療センター長の石原哲先生にご紹介いただきました。

木沢記念病院 外観
木沢記念病院 外観

当院は、地域の方に「行きたい」と思われる病院となることを目指し、さまざまな取り組みを行っています。そのひとつが、がんなどの病気を早期に発見するための医療技術の提供です。たとえば、今まで見つけることの難しいとされていた小さながんを発見するためのPET-CTや、少ない痛みで乳がん検査が可能な乳房専用PET装置を導入しています。また、検査時間が早く、鮮明な画像を撮影することが可能な320列CT装置など、診断の精度を上げるための技術も積極的に取り入れています。

治療においても同様で、周りの正常細胞を傷つけることなく、がん細胞にのみ放射線を照射するトモセラピーや、内視鏡下手術支援ロボットのダヴィンチなどを率先して導入しています。

ダヴィンチは、前立腺がん胃がん大腸がんなど幅広い手術に使用しています。

これらの機器を活用し、患者さんに還元するためには、医師の技術力も必要です。そのため、当院では技術向上を目指した教育にも力を入れています。トモセラピー導入時には、放射線科の医師が3か月間にわたり米国へ留学し、習得した技術を駆使してがん治療にあたっています。

皮膚科/皮膚がんセンターでは、特に皮膚がんのひとつであるメラノーマの治療に力を入れています。患者さんの状態に応じた診断から治療までを行っており、全国から患者さんに来ていただいています。

泌尿器科は、ダヴィンチとトモセラピーを用いた前立腺がんの治療に注力しています。また、岐阜大学で准教授を務めていた医師の赴任に伴い、2018年3月には前立腺疾患センターを立ち上げました。

当科では、ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP:ホーレップ)と接触式レーザー蒸散術(CVP)といった前立腺肥大症に対するレーザー治療も実施しています。大きな前立腺肥大症にはHoLEPで対応し、合併症がありハイリスクな高齢の患者さんにはCVPで対応することで、多様な患者さんへの安全な手術の提供に努めています。

乳癌治療・乳房再建センターには、乳房再建ができる形成外科の医師が在籍しており、自家組織による乳房再建、人工物(シリコンインプラント)による乳房再建、どちらにも対応しています。再建時には、血流の確認に適したカメラシステムを用い、安全性を確保するだけでなく、整容性(見た目の美しさ)を保つことも重視しています。

なお、マンモグラフィーや超音波など乳房の検査は全て、女性スタッフが行っています。

整形外科では、岐阜大学で准教授を務めていた医師が赴任したことで、人工関節置換手術を実施できるようになりました。これにより膝関節や股関節の人工関節置換術の件数が増えています。具体的には、2018年には膝関節と股関節の人工関節置換術を合わせて102件の実績を収め、整形外科全体の手術件数も703件となりました(2019年3月時点)。

画像診断の際には、これまで画像上で骨組織が重なってしまい、検出することが困難だった肺結節や異常陰影などを確認できるよう、X線画像上の肋骨や鎖骨などを透過させる画像処理を利用しています。さらに、同じ患者さんの現在と過去の画像における差を抽出して強調することで、病変の見落としを防ぎ、診断精度を向上させることに努めています。

また、放射線科では医師の過重労働を減らすためのユニークな試みも行っています。その試みとは、午前0時から朝8時の間にリアルタイムで撮影された画像に関しては、ハワイやニューヨークなどに在住する日本人放射線診断医が診るというものです。この取り組みにより、24時間、放射線診断医による救急画像診断が可能になっています。これらの画像は翌日に当院の常勤放射線診断医が別途読影し、診断するダブルチェック体制をとっています。

このように、きめ細やかで見落としのない診断を行うために、独自の体制を構築し、工夫を凝らしています。

24時間対応の救急画像診断体制
24時間対応の救急画像診断体制

当院は、2017年11月にがんゲノム診断・診療センターを開設しました。がんゲノム医療とは、がんの原因を遺伝子的に検査し、その結果から患者さんに適した個別治療を行う医療です。

当センターは、遺伝子解析によるがんの診断や治療が、がん医療の新たな潮流になると考えた現理事長である山田實紘先生の発案で設立されました。

当センターは、プレシジョン検査という遺伝子検査を実施しています。この検査で得た結果に基づき、患者さん一人ひとりに適した個別治療を提供しています。

現在主流となっているがん治療とは、手術治療・薬物治療・放射線治療の3つ、あるいは2つ以上を組み合わせる治療です。これを標準治療といいます。

がんゲノム医療の登場は、標準治療では期待する効果がみられなかった患者さんの救いにつながるといえるでしょう。今後は、遺伝子解析により患者さんに適した薬や治療を提供することで、不要な治療などによる患者さんの負担を減らしたいと考えています。

当センターは、がんゲノム医療連携病院として厚生労働省より指定を受けています。これは、がんゲノム医療中核拠点病院と連携し、がんゲノム医療を提供する病院のことです。

当センターは、がんゲノム医療中核病院のひとつである慶應義塾大学病院を中心とする、がんゲノム医療連携グループに属しています。がんゲノム医療連携グループでは、検査結果をもとに、定期的に検討会を実施しています。この検討会では、遺伝子領域・病理領域・薬物領域などさまざまな領域の専門家が参加しています。

病院の垣根を越えた話し合いの場は、治療について多角的に検討できるため、患者さん一人ひとりに適した治療提供に結び付いています。

左から石原先生、出口先生
左から石原先生、出口先生

がん治療は、患者さんの体にかかる負担と経済的な負担が大きい治療といえます。これらの負担を減らすために、当センターでは、先述したがんゲノム医療などに注力しています。

遺伝子解析によりがんの原因となっている遺伝子異常を割り出すことができれば、個々の患者さんに適した薬や治療法も知ることができます。その結果、副作用や病気による症状を和らげる治療の提供につなげることができます。

しかしながら、遺伝子解析検査は保険適用の検査ではないため、患者さんの経済的負担がさらに大きくなってしまうことは否めません。そのため、国は負担軽減も目的としたがんゲノム医療の提供体制を築くべく検討を重ねています。当院においても、患者さんの経済的負担を減らす取り組みを行っています。

遺伝子解析検査は保険適用外の検査となります。木沢記念病院での標準的な費用:712,800円(2019年3月時点)

当院は臨床研修病院でもあります。そのため、病院内で研修の目的や到達目標を共有できるよう、院内向け研修ガイドを発行し、教育のシステム化を進めてきました。

また、指導医の判断で自由に使える教育費も設けています。広い裁量で症例提示やレクチャーなどの勉強会を実施していくことで、当院で研修を受けられる研修医の方には医学知識だけでなく「医師としての感性(Fitness to Practice)」も身につけてもらいたいと考えています。

初期研修医の募集にあたっては、当院の受け入れ体制を知ってもらうべく、指導医の学歴・経歴と治療実績を明記した冊子を作り、配布しています。

当院で研修を受けた初期研修医の54%が後期研修医として当院に残り、さらに27%が現在も当院で働いています(2004年4月から2017年3月までのデータより)。この残留率は、研修病院として、ぜひとも維持していきたい数値であると感じています。

また、当院の一部診療科*では、2018年に始まった新専門医制度への対応も、すでに開始しています。

内科・皮膚科・救急科・総合診療科

自己研鑽を積みながら専門医資格を取得し、長期的なキャリアを築きたいとお考えの若手医師の方には、ぜひ当院での研修をひとつの選択肢としていただきたいです。

2008年に当院は地域医療支援病院の指定を受け、地域の診療所や病院でかかりつけ医の役割を果たされている先生方との連携を進めてきました。

その一環として、患者さんを紹介しやすい体制づくりも行っています。たとえば、地域のかかりつけ医の先生方に安心感を持っていただけるよう、当院で働く医師の学歴や経歴、近時の治療実績をまとめた顔写真入りの冊子を年2回作製し、配布しています。

この冊子の配布を行うきっかけは、「どんな医師がいるかわからない」という紹介にあたっての不安を解消したかったからです。冊子配布を始めた年以降は、当院をかねてからご存じの地元の病院だけでなく、隣の市の病院からご紹介も受けるケースも出てきており、地域連携の強化につながっていると感じています。

今後も、地域医療支援病院として地域連携を強め、地域の医療と共に生きていきたいと考えています。

当院は、ダヴィンチや320列CTなどの先進的な医療機器の導入と、がんゲノム医療の提供で、これからも地域の方の生命と健康を支えてまいります。また、医師の教育にも力を入れて取り組み、地域の方に「木沢記念病院に行きたい」と思っていただける病院づくりに努めます。

健康への不安や病気に関するお悩みがある方は、ぜひ当院にご相談いただきたいと考えています。

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  • 中部国際医療センター 泌尿器科 顧問

    出口 隆 先生

  • 中部国際医療センター 理事長補佐官、泌尿器科 部長、がんゲノム診断・診療センター長

    石原 哲 先生

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