独立行政法人国立病院機構 宇都宮病院(以下、NHO宇都宮病院)は、栃木県宇都宮市の北東部に位置する病院です。急性期医療(病気を治す医療)から回復期医療(自宅復帰を目指す医療)・慢性期医療(地域での暮らしを支える医療)までを担うケアミックス病院の使命を果たすため、地域の医療ニーズに応じた切れ目のない医療の提供に尽力しています。また、体への負担の少ない低侵襲な治療の提供にも力を入れています。
ケアミックス病院として取り組むさまざまな医療提供について、病院長である沼尾利郎先生にお話を伺いました。
当院は、急性期医療から回復期医療・慢性期医療までを担うケアミックス病院です。急性期医療とは、病気が発症して間もない不安定な時期に提供する医療です。回復期医療とは、在宅復帰への橋渡し時期のリハビリテーション中心の医療です。慢性期医療とは、病気がある程度安定するも、一定の医療が継続的に必要な時期の医療です。これら3つの機能を持つことにより、当院では手術からリハビリテーション、在宅復帰、生活支援まで切れ目なく医療提供を完結することが可能です。
当院は、これからも多様な病気の患者さんの幅広い医療ニーズに応じた医療提供に努めてまいります。
膝関節や股関節の変形は、変形性膝関節症・変形性股関節症という病気が主な原因です。
これらの原因は、加齢や肥満、O脚などの長期的な負担によって、膝関節および股関節が変形することです。いずれの病気も症状の程度によって治療法が異なります。
次の項目では、当院で提供する関節疾患に対する手術や、近年増加している脊椎狭窄症などの脊椎疾患に対する手術に関してご説明します。
初期の変形性膝関節症に対し、膝関節の温存を図る手術です。内視鏡を用いる手術であるため、傷口が小さく痛みが少なく、体への負担が少ない手術とされています。
中度の変形性膝関節症に対し、膝関節の温存を図る手術です。O脚を矯正することで膝の痛みや負担を減らす目的で行われます。
変形性膝関節症・変形性股関節症に対する手術です。変形した関節を人工関節に置き換えることによって、痛みの原因を取り除きます。
当科では、今後とも患者さんの病状やご希望に応じた手術の提供を目指します。そのために、手術手技の向上と患者さんに寄り添う治療に励んでまいります。
外科では、可能な限り患者さんの体に負担の少ない手術の提供に努めています。特に、消化器外科領域での、腹腔鏡手術に力を入れています。腹腔鏡手術とは、お腹にあけた小さな穴から内視鏡を入れて行う手術です。開腹手術に比べて切開部が小さく、出血が少ないため、体への負担が少ない手術です。当科では、虫垂炎、胃がん、大腸がんなど幅広い病気に対して、腹腔鏡手術を行っています。
消化器内科では、患者さんの体の負担を可能な限り減らした検査として、経鼻内視鏡検査、小腸カプセル内視鏡検査、大腸内視鏡検査を行っています。経鼻内視鏡検査は、通常の口から入れる内視鏡検査に比べて吐き気が起きにくく、検査中に医師と会話することも可能です。小腸カプセル内視鏡検査は、小型のカプセルを内服するだけで小腸内部を観察することができ、発見しにくい出血の診断に有効です。
また、当科での大腸内視鏡検査は、消化器内部に内視鏡とともにCO2を送り込むといった挿入法の工夫によって、検査中の腹痛や腹部の膨満感を減らすなど、患者さんの検査中の体の負担軽減に努めています。
呼吸器内科では、肺がんの疑いや胸部異常陰影の精査を目的に気管支鏡検査を行っています。気管支鏡検査では、局所麻酔や静脈麻酔を適切に使用して苦痛の少ない内視鏡検査を心がけています。また、超音波を用いた内視鏡検査も実施しており、診断精度の向上や安全性の確保にも努めています。
当科では局所麻酔下胸腔鏡検査を実施して、胸水の原因となっている疾患の迅速な診断に努めています。膿胸や難治性気胸などの一部の症例では、胸腔鏡を治療にも応用しています。
当院は公的医療機関として、地域住民の方々に救急処置や医療知識を普及する役割を担っています。そこで当院では、地域住民の方々に救急処置を身につけていただくことを目的として、日本ACLS協会 栃木トレーニングサイトを立ち上げました。
日本ACLS協会 栃木トレーニングサイトでは、心肺機能が停止した状態にある方の蘇生を試みる心肺蘇生法(以下、CPR)を実践講習しています。
CPRには、気道の確保と心臓マッサージ、人工呼吸を行う一次救命処置と、専門知識を持った医師や看護師などが医療機器を用いて処置する二次救命処置があり、日本ACLS協会 栃木トレーニングサイトではどちらの処置も身につけることができます。当院は、医療従事者から一般市民まで参加できる救急処置を学ぶコースを用意することによって、公的医療機関としての地域貢献に努めています。
当院は、地域包括ケア病棟を有する病院です。地域包括ケア病棟とは、症状が安定した患者さんが自宅復帰を目指すための病棟であり、さまざまな患者さんを受け入れることができる多目的・多機能な病棟です。たとえば、手術後に症状が安定してリハビリを行う患者さんや普段は在宅介護を受けている方の一時入院にも対応しています。また、最近では緩和ケア病棟に準じた利用の仕方も増えてきました。このように、地域包括ケア病棟では、多様な患者さんの幅広い入院目的に対応可能となっています。
アニマルセラピーとは、医療や介護の現場で活用されている動物との触れ合いのことです。地域包括ケア病棟では、入院中の患者さんのストレスを和らげることを主な目的に、トレーニングを受けた日本アニマルセラピー協会認定のセラピー犬によるアニマルセラピーを、月1回のペースで実施しています。「入院が長期化して単調な日々になりがちが患者さんや、リハビリに取り組む意欲が低下している患者さんに、少しでも喜んでもらいたい」と考え、アニマルセラピーをはじめました。その結果、患者さんが喜ぶだけでなく、それを見た病院スタッフも幸せな気持ちになり、動物の癒しの力を誠に実感しています。
当院は「Teaching is the best learning」(教育は最高の学習・教えることは学ぶこと)という方針を実践しています。その一環として、毎年多くの医学生や看護学生、薬学生、研修医などを受け入れています。
一方、働く職場の環境整備と働き方改革にも努めており、2018年には看護師の働き方を改善した病院として日本看護協会から「カンゴサウルス賞」を受賞しました。当院は多職種が共に働く医療機関として、全てのスタッフが「働きやすくて働きたくなる」職場になるよう努力しています。
医療に携わる仕事は大変やりがいに満ちていますが、仕事だけが人生の全てではありません。医療に携わる皆さんには、仕事と同様にプライベートも充実した人生を送ってほしいと願っています。
当院は、地域の医療機関や介護施設などとの連携をよりいっそう推進していきます。また、病気や障害を抱えていても住み慣れた地域で自分らしい暮らしが続けられる「地域包括ケア」の構築と「地域共生社会」の実現を目指して努力いたしますので、皆さんのご支援とご協力をよろしくお願いいたします。
独立行政法人国立病院機構宇都宮病院 名誉院長、宇都宮セントラルクリニック
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。