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NTT東日本関東病院「第2回 医療連携懇談会」レポート

NTT東日本関東病院「第2回 医療連携懇談会」レポート
メディカルノート編集部  [取材]

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この記事の最終更新は2019年10月10日です。

2019年7月25日、NTT東日本関東病院主催の、「第2回医療連携懇談会」(第1部:講演、第2部:懇親会)が都内にて開催されました。

本記事では、第1部、NTT東日本関東病院 乳腺外科部長の沢田 晃暢先生とロボット手術センター長の志賀淑之先生の講演を中心にレポートします。

はじめに、NTT東日本関東病院 院長 亀山 周二先生より、第1部の開会の挨拶がありました。530名を超える参加者に対する感謝の言葉と、本日の講演者の簡単な紹介がありました。

院長 亀山周二先生
院長 亀山 周二先生

続いて、NTT東日本関東病院 脳神経内科部長の吉澤 利弘先生の進行で、講演が行われました。

座長 吉澤利弘先生
座長 吉澤 利弘先生

まず、「乳がんについて聞かれても困らない知識」というタイトルで、乳腺外科部長の沢田 晃暢先生による講演が行われました。患者さんから寄せられる乳がんについての質問に医師がどのように答えるべきかという実践的な内容でした。

講演で取り上げられた質問のなかから、いくつかピックアップして紹介します。

沢田晃暢先生
沢田 晃暢先生

Q:牛乳やチーズなどの乳製品の摂取と、乳がんになるリスクの関係性はあるか?

A:2019年7月時点では、乳製品を摂取すると乳がんのリスクが高まるという論文もあれば、低くなる、あるいは、変わらないという論文もあり、まだはっきりといえる段階ではない。

ガイドラインでは、乳製品の摂取は、乳がんの発症リスクを下げる可能性があるとされているが、牛乳そのものと乳がんリスクの関係性についてはよく分かっていない。

Q:子どもに乳がんは遺伝するか?

A:2014年のデータでは、乳がんの生涯発症率は約9%といわれており、これは日本の女性において、生涯で乳がんを発症する人が11人に1人の割合を示すものである。なかには、遺伝子変異が関与して乳がんを発症する場合があり、特に、BRCA1あるいはBRCA2という遺伝子に変異がある方は、乳がんの生涯発症率が高いといわれている。

このため、BRCA1あるいはBRCA2という遺伝子に異常がみられたら、MRI検査を実施する。特に血縁者に乳がんの方がいる40歳未満の患者さんには、スクリーニング検査をすすめるとよい。

Q:乳がん患者さんにステージ分類を教えるべきか?

A:乳がんは、バイオマーカー別に5つに分類することができ、この分類結果によって、ホルモン療法が有効か、化学療法が有効かを判断する。

乳がんは、バイオマーカー別の分類と併せて、腋窩リンパ節の転移の有無によって、ステージを分類している。ただし、このステージ分類は、患者さん一人ひとりの病気の状態や予後を反映していないため、ステージ分類によって患者さんを一概に分けることができない。そのため、ステージ分類をもとにご説明することはあまりない。また、海外では、このステージ分類を変えようという試みもある。

Q:男性も乳がんになるか?

A:日本乳癌学会の統計によると、男性乳がんの比率は、毎年、乳がん全体の0.5%~0.6%程度である。女性の乳がん患者の増加に比例して、男性の乳がん患者も増加しているといわれている。発症年齢に男女差があり、女性は40代から50代で発症する患者さんが多く、男性は70代から80代で発症する患者さんが多い。

Q:乳がん検診マンモグラフィで腫瘤が見えにくいのは、どのようなタイプか?

A:高濃度乳房とよばれるタイプの乳房の場合、腫瘍と乳腺全体が白く映るため、マンモグラフィで異常所見が検出されにくいといわれている。高濃度乳房の方には、超音波検査をすすめるとよい。

患者さんから寄せられた質問を織り交ぜた講演内容で、参加者の方のなかには、頷いたり、メモを取ったりする方が多数いらっしゃいました。患者さんに実際に接する医療従事者の方々にとって、これからの診療に大いに役立つ知識だと感じました。

次に、「当院におけるロボット手術の現状とデジタル医療の最前線」というタイトルで、NTT東日本関東病院ロボット手術センターのセンター長である志賀 淑之先生による講演が行われました。医療技術の発達と、デジタル医療の今後の大きな可能性について知ることができる内容でした。

沢田晃暢先生
志賀 淑之先生

NTT東日本関東病院では、外科・産婦人科・呼吸器外科・泌尿器科において、ロボット手術を保険適用で実施しているとのことでした。

各科のロボット手術の特徴を、以下にまとめます。

  • 外科…ロボット支援下直腸手術を実施。ロボット支援下直腸手術は、鉗子(かんし)の操作性によって繊細な手術手技を可能にし、排尿・排便機能を温存しながら、根治性を担保できる。
  • 産婦人科…良性の子宮疾患や子宮体がんに対してロボット手術を実施。開腹手術に比べ、ロボット手術では出血が少ないため、入院期間が短く、早期回復につながる。
  • 呼吸器外科…肺がん縦隔腫瘍に対してロボット手術を実施。今後、拡大胸腺全摘出手術に対してもロボット手術を実施する予定。
  • 泌尿器科…3Dナビゲーションシステム*を用いたロボット手術を実施。

*3Dナビゲーションシステム…ITソリューションシステムと3Dプリンターを使用することで、より正確で安全な手術を目指すことのできるナビゲーションシステム。

同院の泌尿器科のロボット手術で用いられている3Dナビゲーションシステムは、Holoeyes株式会社 取締役兼COOの杉本 真樹先生とNTT東日本関東病院ロボット手術センターとが共同で開発されたシステムと紹介がありました。

このシステムを用いると、患者さんの実物大の臓器を3Dプリンターでプリントアウトすることができます。臓器そのものは透明樹脂で造形し、腫瘍や動脈・静脈などを色分けすることによって、腫瘍の深度や血管の走行などを事前に確認し、手術で切除できる範囲をシミュレーションすることが可能です。

手術中にしか直接見ることができなかった患者さんの臓器を手術前に立体的に可視化できるようになったため、手術のシミュレーションや研修医の教育において、役立っているそうです。

同院の泌尿器科では、新たな挑戦として、腎臓がんの部分切除手術にVRナビゲーション手術を取り入れているそうです。VRナビゲーション手術では、専用のゴーグルをかけることで、患者さんの臓器のどこに腫瘍があるかを見ることができます。

これまで主流であった、モニター画像や3Dプリンターの技術では、奥行きまでは把握することができませんでした。しかし、VR技術を取り入れたことで、奥行きを含めた空間認知が可能になりました。また、3D模型とVRを併用することで、整容性をより考慮した手術が可能になったそうです。

外科手術は、医療技術の発達とともに、開腹手術、腹腔鏡手術、そしてロボット手術と移り変わってきました。本講演では、VR*やAR*などの先進技術の応用によってこれまで困難だと思われていた手術が可能になるなど、デジタル医療の大きな可能性を実感する内容でした。

*3Dナビゲーションシステムおよび、VRナビゲーションは、医薬品医療機器等法の未承認品です(2019年7月時点)。

*VR…Virtual Reality(仮想現実)の略。

*AR…Augmented Reality(拡張現実)の略。

針原康先生
針原 康先生

最後に、NTT東日本関東病院 副院長 針原 康先生からの挨拶をもって、「第2回 医療連携懇談会」の第1部は閉会しました。この後、第2部 懇親会が開かれ、医療機関同士が顔の見える連携の会となりました。

 

乳がんについて聞かれても困らない知識」についてご講演いただきました、沢田 晃暢先生のプロフィールはこちらをご覧ください。

「当院におけるロボット手術の現状とデジタル医療の最前線」についてご講演いただきました、志賀 淑之先生のプロフィールはこちらをご覧ください。

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