院長インタビュー

岩手県全体の医療を支える病院を目指す岩手県立中央病院

岩手県全体の医療を支える病院を目指す岩手県立中央病院
宮田 剛 先生

岩手県立中央病院 院長

宮田 剛 先生

目次
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岩手県立中央病院は、1933年に有限責任購買販売利用組合盛岡病院として発足しました。1960年に現在の名称へ変更を行った同院は“高度急性期医療を推進し、県民に信頼される病院”の基本理念のもと、岩手県全域を対象に医療の提供に努めています。

同院の診療体制の特徴、地元医師会との連携をはじめとする地域との関わり方、初期臨床研修医など若手医師の受け入れ体制などについて、院長の宮田(みやた) (ごう)先生に伺いました。

当院は主に高度急性期医療を行っています。当院は、多職種連携によるチーム医療の実施を前提とした診療センターを開設して、救急医療(二次救急輪番制病院、小児救急輪番制病院)をはじめ、がん脳卒中、急性心筋梗塞(こうそく)糖尿病、災害医療、地域医療支援、周産期医療、小児医療、認知症を診療しています。そのため当院は、盛岡二次保健医療圏が中心ですが、そのほか、岩手県全域を対象にした医療提供を行っているのが特徴といえます。

ここでは、脳神経センター、循環器センター、消化器センター、腎センターの4つのセンターを中心にご紹介します。

岩手県立中央病院 外観
岩手県立中央病院 外観

脳神経センターは、脳卒中、脱髄疾患などの神経疾患や認知症なら神経内科、手術が必要な脳卒中、脳腫瘍(しゅよう)外傷なら脳神経外科といったように、両診療科が連携して診療しています。

当院の脳神経センターの特徴は、脳卒中を発症した患者さんに対して24時間365日体制で診療を行っていることです。特に、発症後早期の患者さんなら、t-PAによる脳梗塞超急性期血栓溶解療法、血栓回収療法、ステント治療、コイル塞栓(そくせん)術といった、脳卒中治療に対して従来から行われている開頭手術以外の治療も実施可能です。

循環器センターは、循環器内科と心臓血管外科が協働で診療しています。循環器の病気には、発症すると死に至る危険性の高いものもあります。当センターでは、患者さんの治療に対する希望を伺ったうえで、両診療科の医師や看護師などが意見を出し合って、患者さんの診断や治療方針をチームとして決定します。

当院では、東北大学と連携して植込型補助心臓による重症心不全治療をしています。また、大動脈(りゅう)と呼ばれる血管の一部にコブができる病気に対しては、ステントグラフト内挿術という血管内治療の一種を実施可能です。当院では、胸部および腹部でのステントグラフト留置術が実施可能です。機器が進歩したことにより、弓部大動脈瘤と呼ばれる心臓につながる血管にできたコブに対する治療も可能となってきました。

心不全など循環器疾患で搬送されてきた患者さんに対しても、両診療科の医師がハートチームとして24時間365日体制で対応します。

消化器センターでは消化器内科と消化器外科が中心となって、食道、胃、腸管などの消化管疾患および肝臓、胆嚢、膵臓(すいぞう)脾臓(ひぞう)など消化器疾患に対する診療をしています。具体的には、良性疾患やがんなど悪性腫瘍に対する診断と治療、消化管出血の診断と内視鏡を使用する止血、肝硬変とそれに伴う腹水や肝不全の管理・治療などがあります。

消化器センターでは毎週月曜と金曜の夕方にカンファレンスを実施しています。当センターのカンファレンスは、化学療法や放射線治療などを行う診療科も参加していて、患者さんに手術が必要かどうかの判断や、治療方法の選択などについて議論しています。

毎週木曜朝に開催される死亡症例検討会
毎週木曜朝に開催される死亡症例検討会

2002年、当院に腎臓内科が創設されて以来、たくさんの腎不全患者さんが当院での腎移植を希望されてきた経緯がありましたが、他院にご紹介せざるを得ない状況でした。このたび、同科スタッフが名古屋第二赤十字病院での腎移植の修練を経て腎移植開始に向けて準備を開始し、東北大学総合外科、岩手医科大学泌尿器科の協力を得ながら診療科の枠を超えメディカルスタッフも加えた腎移植チームを結成。2019年12月に生体腎移植を開始し、これまでに実施した同手術はいずれも無事終了し術後経過は良好です。当院の特徴は、腎臓内科医が中心となって腎不全早期から腎移植を含めた治療プランを提案できる体制を築いている点です。腎移植を選択された方には、周術期から移植後長期にわたる生活の質の維持・改善、移植後合併症への対応、移植後透析再導入への対応など、チームでのサポートを実施しています。

地域の医師会とは日ごろから連絡を取り合って、お互いの近況などを伝えています。当院では、入院患者さんが急増したときには地域の医療機関をご紹介していただいたり、反対に地域の医療機関では検査などが難しい患者さんを当院へご紹介いただいたりしています。医療が必要な患者さんを地域全体で支えるのに必要な、医療機関同士の連携協力体制が整備されているのも、日ごろの情報共有がしっかりなされているからだと考えています。

当院では、ボランティアの方々の協力のもと、七夕コンサートやクリスマスコンサートなど季節ごとのイベントを開催しています(2020年8月現在、新型コロナ感染予防のためにボランティア活動は休止中)。

外来ホール
外来ホール

当院は基幹型と協力型双方の認定を受けている臨床研修病院です。

基幹型はその病院独自の臨床研修教育プログラムを作成・実行できる医療機関です。協力型は、基幹型からの依頼を受けて、基幹型が設定している研修プログラムの一部を担当する医療機関です。

当院は、当院に入職した研修医のみでなく、同じ地域にある医療機関や関連先の医療機関に所属する研修医も受け入れて臨床研修を行っています。さまざまな大学出身の研修医が同じ目標に向けて協力し合う仲間が多い当院は、医師として大きな成長が見込める環境だと思います。

当院は、患者さんのためには何がベストなのか、医師やスタッフが職種の垣根を越えて積極的に検討して模索する風土があります。

医療行為には直接関わることのない事務方も例外でなく、当院の方針に基づいて今自分が何をすべきか考え行動しています。

1年目の研修医は2年目が、2年目の研修医は院内のベテラン医師がフォローする、屋根瓦方式による研修教育を行っています。指導する立場にあるベテラン医師の中には、研修医時代を当院で過ごし、ほかの医療機関へ移った後に、再度当院に戻ってきた者もいます。

当院は高度急性期医療を行う病院のため、脳卒中に対する救急医療やがん診療なども先輩医師の指導の下で積極的に担当していただきます。そのため毎日が目の回るような忙しさで、時間もあっという間に過ぎていくと感じると思います。そうしたなかで、助からないと思った脳梗塞の患者さんが回復していく様子を目の当たりにすることもあります。

当院の臨床研修を経験した若手医師には、同時期に研修を受けた仲間を得て、患者さんのために能動的に行動することの重要性を知り、治療を担当した患者さんが元気になって元の生活に戻る姿を見届けることのできる医師という仕事の醍醐味(だいごみ)を経験して、これからの医師人生の礎にしていただきたいです。

岩手県立中央病院 外観
岩手県立中央病院 外観

医療を必要としている患者さんが必要な医療を受けられなくなることは、本来あってはならないことです。人員や環境設備など医療資源が潤沢でない岩手県では、医療機関と医療従事者が知恵を出し合いお互いに協力することで諸問題を解消してきました。

患者さんには、“地域全体を大きな病院として考えてみてください”とお伝えしています。県内には、当院をはじめたくさんの医療機関があります。それぞれ異なる使命と地域における役割を持っていて、ときに医療機関同士が連携することで、患者さんが抱える医療ニーズに応え続けています。

当院は急性期医療を行う病院として、皆さんの生活を医療面から支えていきます。今後も、地域の皆さんが求める医療を提供し続け、皆さんから寄せていただく信頼に応えられるよう職員一同励んでまいります。

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