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慢性腎臓病の検査――進行すると回復が難しい慢性腎臓病を見つけるには?

慢性腎臓病の検査――進行すると回復が難しい慢性腎臓病を見つけるには?
高野 秀樹 先生

国立国際医療研究センター病院 腎臓内科 診療科長

高野 秀樹 先生

目次
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慢性腎臓病とは、慢性的に腎臓の機能が低下していく病気の総称です。慢性腎臓病は、目立った自覚症状が遅いため発見が遅れるケースも少なくありません。糖尿病高血圧脂質異常症などが大きなリスクとなるため、これらの生活習慣病を持っている方は特に注意が必要です。今回は慢性腎臓病が診断されるきっかけや具体的な検査方法について、国立国際医療研究センター病院 腎臓内科診療科長でいらっしゃる高野 秀樹(たかの ひでき)先生にお話を伺いました。

自覚症状が現れにくい慢性腎臓病は、健康診断の尿検査がきっかけで見つかることが多いです。代表的な検査の項目は、“尿タンパク”です。

通常、アルブミンのような分子量の大きなタンパク質は、糸球体(しきゅうたい)の小さな網目を通過できないため、尿から排出されることはほとんどありません。しかし、腎臓の機能が低下して糸球体のフィルター機能が壊れてくると、尿にタンパク質が漏れ出てくるようになります。尿中にタンパク質が検出されると、尿タンパクが陽性(プラス:+)と判定されます。

また、尿検査の尿潜血(にょうせんけつ)という項目で見つかる方もいらっしゃいます。

タンパク質と同様、赤血球も分子量が大きいため正常では尿中には混入しません。腎臓からの出血のこともありますが、腎臓以外、すなわち尿管や膀胱、尿道など下部尿路からの出血もあり、泌尿器科的疾患のことも多く注意が必要です。

さらに、クレアチニン値(Cr)、尿素窒素(BUN)などの血液検査も慢性腎臓病が見つかるきっかけになることもあります。

そのほか、慢性腎臓病の原因となる糖尿病高血圧脂質異常症などの生活習慣病が先に見つかり、腎臓についても詳しく調べてみたら慢性腎臓病と診断されるケースもあります。

PIXTAより加工

糖尿病を持っている方は、微量アルブミン尿という精密検査がきっかけになることがあります。糖尿病では微小な血管が損傷するため、腎機能が低下する以前の段階でアルブミンが漏れ出てきます。この検査は尿タンパクが陰性の早期から糖尿病性腎症の病態が分かるため、糖尿病の患者さんに対しては、定期的に微量アルブミン尿を調べることが推奨されています。

腎機能の低下が疑われたら、病院で詳しい検査を行います。慢性腎臓病には原因によって、糸球体腎炎糖尿病性腎症、腎硬化症、多発性嚢胞腎などいろいろな病気が背景にあるため、まずは検査でどのような病気なのかを見極める必要があります。また同時に、その病気が治療によって治るものなのかを判別することも重要です。

検査では、健康診断よりも詳細な尿検査や血液検査を行います。また、腎臓に障害があると腎臓が小さくなっていたり、腎臓の血流が低下していたりすることがあるため、こうした異常がないかを超音波検査(エコー検査)で確認します。さらにCT検査やMRI検査で、腎臓と同時に腎臓以外の尿管や膀胱の異常も確認します。

確定診断のためには、腎生検を行います。これは腎臓の一部を採取して、採取した組織を顕微鏡で詳しく調べる検査のことです。

検査の際はうつ伏せに寝ていただき、背中側から腎臓に向けて針を刺します。腎臓の中心付近には太い血管があり、針が刺さると大量出血を起こしてしまうため、腎臓の端から組織を採取します。また、腎臓は呼吸の動きに合わせて常に動いているため、超音波画像で腎臓の動きを確認しながら慎重に針を進めていきます。

検査の結果、下の(1)(2)のいずれか1つ、または両方を3か月以上満たしている場合には、原因によらず慢性腎臓病と診断されます。

(1)尿異常、画像診断、血液、病理診断などで明らかな腎障害がある。特に0.15g/gCr以上のタンパク尿(または糖尿病で30mg/gCr以上のアルブミン尿)を認める場合。

(2)糸球体ろ過量(GFR)<60ml分/1.73㎡

糸球体ろ過量(GFR)とは、1分間で糸球体が血液をろ過する量のことです。老廃物の代表であるクレアチニンの血中濃度を調べることで、腎臓のはたらきを確認することができます。

このクレアチニンの値から、年齢、性別を考慮して算出されるeGFRが診断に有用になります。

なお、タンパク尿(またはアルブミン尿)や糸球体ろ過量(GFR)の数値は、慢性腎臓病の重症度を決めるうえでも大切な指標となります。

 

MN撮影

慢性腎臓病は進行してしまうと回復が難しいため、早期発見・早期治療が大切です。そのために欠かせないのは、まず健康診断をきちんと受けることです。定期的に健康診断を受けていただければ、腎機能が低下している場合は比較的早い段階で見つけられることがほとんどです。特に慢性腎臓病のリスクとなる糖尿病高血圧脂質異常症などの生活習慣病がある方は、日頃からの生活習慣の改善に加えて、しっかりと定期的な検査を受けていただくことをおすすめします。

また健康診断で異常を指摘された場合は、必ず医療機関を受診するようにしてください。症状がないからといって放置してしまうと、人工透析*が必要な状態にまで進行してしまうこともあり、この段階になると手の施しようがありません。

慢性腎臓病は、症状がないうちに進行していきます。これは腎臓だけではありませんが、健康診断で受診をすすめられた場合は積極的に医療機関を受診することが大切です。

*人工透析:腎臓に代わり、機械を使って人工的に血液をろ過する治療のこと。

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