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IgA腎症のガイドラインに基づくステージとは? 〜ステージによって透析療法のリスクが異なる〜

IgA腎症のガイドラインに基づくステージとは? 〜ステージによって透析療法のリスクが異なる〜
天野 方一 先生

イーヘルスクリニック新宿院 院長、帝京大学大学院公衆衛生学研究科 非常勤講師、帝京大学ちば総合...

天野 方一 先生

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IgA腎症とは、腎臓の糸球体(しきゅうたい)にIgAという免疫グロブリン(体内に異物が入ったときに排除しようとはたらくタンパク)が沈着することで糸球体に持続的な炎症が生じる病気です。初期は無症状のことが多く、健診などで血尿やタンパク尿を指摘されて発見されることも少なくありません。進行すると腎臓の機能が低下し、未治療の場合では透析などの腎代替療法を必要とする末期腎不全に陥るケースもあります。そのため、早期の治療が重要です。

IgA腎症は進行の程度に応じてステージが分けられ、治療はステージなどから決定されます。ステージは予後予測の重要な指標にもなるため、ステージについて十分理解することが大切です。本記事ではガイドラインに基づいたステージ分類と治療法について解説します。

IgA腎症のステージは病気の進行の程度を数値で示したもので、治療方針を立てるうえで重要な判断材料となります。日本においては主に“組織学的重症度分類(H-Grade)”、“臨床的重症度分類(C-Grade)”、そして両者を加味した“透析導入リスクの層別化”が用いられ、治療方針の指針が定められています。

組織学的重症度分類とは、組織学的障害度を表した指標のことです。これは、腎臓の組織の一部を採取して、糸球体におけるIgAの沈着を確認する“腎生検”という検査によって判断します。組織学的な変化として、細胞性半月体、線維細胞性半月体、全節性糸球体硬化、分節性糸球体硬化、線維性半月体と呼ばれる5つが透析の導入に関連すると考え、これらのいずれかを持つ糸球体が全糸球体に占める割合(%)に応じて重症度を4段階に分類します。

具体的には、H-Grade I(25%未満)、II(25%以上50%未満)、III(50%以上75%未満)、IV(75%以上)に分けられ、数字が大きいほど重症となります。

臨床的重症度分類は、尿検査で分かる尿タンパク(g/日)と、血液検査で分かるeGFR (mL/分/1.73 m2)から重症度を表したものです。いずれも腎臓の機能を測る数値で、1日の尿タンパク量が多いほど、またeGFRの数値が低いほど腎機能が低下していると判断します。

臨床的重症度分類においては、C-Grade I(尿タンパク0.5未満)、II(尿タンパク0.5以上かつeGFR60以上)、III(尿タンパク0.5以上かつeGFR60未満)とし、数字が大きいほど重症となります。

透析導入リスクの層別化は、組織学的重症度分類(H-Grade)と臨床的重症度分類(C-Grade)から、透析療法に至るリスクが今後どのくらい高いかを示したものです。低リスク、中等リスク、高リスク、超高リスクの4つに分けられます。

低リスク群

“透析療法に至るリスクが少ないもの”と定義されています。低リスク群は、以下の場合です。

  • H-Grade I(25%未満)+C-Grade I(尿タンパク0.5未満)

中等リスク群

“透析療法に至るリスクが中程度あるもの”と定義されています。中等リスク群は、以下の場合です。

  • H-Grade I(25%未満)+C-Grade II(尿タンパク0.5以上かつeGFR60以上)
  • H-Grade II(25%以上50%未満)+C-Grade I(尿タンパク0.5未満)
  • H-Grade II+C-Grade II

高リスク群

“透析療法に至るリスクが高いもの”と定義されています。高リスク群となるのは、以下の場合です。

  • H-Grade I(25%未満)+C-Grade III(尿タンパク0.5以上かつeGFR60未満)
  • H-Grade II(25%以上50%未満)+C-Grade III
  • H-Grade III(50%以上75%未満)/IV(75%以上)+C-Grade I(尿タンパク0.5未満)
  • H-Grade III/Ⅳ+C-Grade II(尿タンパク0.5以上かつeGFR60以上)

超高リスク群

“5年以内に透析療法に至るリスクが高いもの”と定義されています。超高リスク群となるのは、以下の場合です。

  • H-Grade IIIIII(50%以上75%未満)/IV(75%以上)+C-Grade III(尿タンパク0.5以上かつeGFR60未満)

IgA腎症の治療法には、生活規制や食事療法、薬物療法(RA系阻害薬・副腎皮質ステロイド薬・免疫抑制薬・抗血小板薬・魚油など)、手術(口蓋扁桃摘出術)があります。しかし、いまだ確立された治療法はありません。そのため、ステージ分類などから患者さん本人と話し合って治療方針を決定することが一般的です。

ガイドライン上でのIgA腎症のステージ分類には、組織学的重症度分類(H-Grade)、臨床的重症度分類(C-Grade)、両者を加味した“透析導入リスクの層別化”が用いられ、ステージIといった簡潔なものではないため、少々読み解くのが難しいでしょう。

また、これらを基にして治療方針が立てられますが、患者さん本人との話し合いのうえで治療方法を決定するため、ステージや治療について疑問や不安がある場合には医師に相談し、納得して治療を受けることが大切です。

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