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慢性腎臓病のステージ分類と治療法とは?〜ガイドラインに基づいて分かりやすく解説〜

慢性腎臓病のステージ分類と治療法とは?〜ガイドラインに基づいて分かりやすく解説〜
天野 方一 先生

イーヘルスクリニック新宿院 院長、帝京大学大学院公衆衛生学研究科 非常勤講師、帝京大学ちば総合...

天野 方一 先生

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慢性腎臓病(CKD)は、成人の約8人に1人もの患者がいるといわれ、“腎臓の障害”と“腎臓の機能低下”のいずれか、または両方が3か月以上続いている場合に診断される病気です。腎臓には尿を作り出したり、体の水分や血圧、体液のバランスを調節したり、生きるのに必要なホルモンを作り出したりするなどのはたらきがあります。しかし、腎臓機能が低下すると体にさまざまな影響が出るようになります。この重症度に応じて5段階のステージに分けられ、治療ではステージに応じた適切な方法が選択されます。そのため、各ステージの概要や治療法について知っておくことは大切です。

本記事では、ガイドラインに基づき慢性腎臓病のステージや治療方針について解説します。

慢性腎臓病はステージは血液検査、尿検査、画像検査などによって分かります。特に尿検査で“タンパク尿が0.15g/gCr以上”もしくは、“糸球体ろ過量(GFR)が60mL/分/1.73m2未満”の場合に腎臓機能が低下していると判断されることが一般的です。

GFRとは、腎臓に老廃物を尿へ排泄するはたらきがどの程度あるのかを反映する数値で、この値が低いほど腎臓機能が低下しているということになります。このような検査結果などから診断がされ、1〜5までのステージ(重症度)に分類します。

慢性腎臓病は、腎臓機能の低下を糸球体濾過量(GFR)で評価し、G1(ステージ1)~G5(ステージ5)の5段階に分けられます。そのうえで、ステージに応じた治療計画を立てていきます。

GFR 90以上の場合はステージ1と診断されます。腎臓機能は正常もしくは高値と推定され、通常自覚症状はありません。また、タンパク尿などの尿検査異常がない場合には慢性腎臓病ではありません。一方、尿検査異常が続いている場合には慢性腎臓病が疑われます。

治療法

腎臓機能は正常であることから治療の必要はありません。ただし、喫煙糖尿病高血圧症、肥満、メタボリックシンドローム、腎臓病の家族歴(家族で腎臓病になった人がいるか)がある人などは、慢性腎臓病になりやすいことが分かっています。そのため、このような病気・生活習慣がある人は、禁煙、運動、減量、塩分やカロリー制限など、生活習慣を改善することがすすめられます。

GFR 60~89の場合はステージ2と診断されます。腎臓機能は正常もしくは軽度に低下していると推定され、通常自覚症状はありません。ステージ1と同様、タンパク尿などの尿検査異常がない場合には慢性腎臓病ではありませんが、尿検査異常が続いている場合には慢性腎臓病が疑われます。

治療法

ステージ1と同様に、喫煙、糖尿病、高血圧症、肥満、メタボリックシンドロームなどの病気・生活習慣がある人は、原因に応じた治療や生活習慣の改善を行うことが大切です。

GFR 30~59の場合はステージ3と診断されます。しかし、ステージ3は細かくG3aとG3bに分けられ、G3aではGFR 45~59で腎臓機能の低下が軽度~中等度、G3bでは30~44で腎機能の低下が中等度~高度となります。尿アルブミンやタンパク尿の数値が高い場合には、末期腎不全や心血管死亡の発症、死亡のリスクが高まります。

治療法

ステージ3でも適切な治療を行えば、腎臓機能低下の進行を防げる場合があります。治療としては、腎臓機能悪化の原因をコントロールすることや、血圧・血糖管理を中心とし、日常生活の改善や食事療法に加えて薬を用いた薬物療法が行われるのが一般的です。

GFR 15~29の場合はステージ4と診断されます。腎臓機能は高度に低下していると推定され、多くの場合、貧血やミネラル異常、骨の異常など腎臓機能低下によるさまざまな異常を伴います。

また、重症な腎不全や、重篤な心血管疾患にかかりやすく、末期腎不全や心血管死亡の発症、死亡のリスクが高い状態にあります。

治療法

ステージ4では、より厳格な生活改善、食事療法、薬物療法が必要となります。これらの治療によって現状を維持しつつ、透析の開始をできるだけ遅らせます。

GFR 15未満の場合はステージ5と診断されます。もっとも重症であり、末期腎不全の状態であると推定されることが一般的です。腎臓機能低下によるさまざまな異常を伴っている場合が多く、腎代替療法を必要とする直前の状態となります。

治療法

ステージ5では放置すると命に関わる可能性もあるため、腎代替療法が検討されます。腎代替療法には血液透析、腹膜透析、腎移植から患者さんにあった方法が選択されます。それぞれの治療法に長所と短所があることから、患者さん本人にとってもっともよい治療法を選ぶことが大切です。

腎臓は一度機能が低下すると回復することが難しく、徐々に低下していくのが一般的です。しかし、早い段階で治療を受けることによって進行を抑えることができる場合があります。

ステージによっては厳格な管理が求められるほか、治療の選択肢が複数ある場合もあるため、診断や治療について何か不明なことがあれば医師に相談するようにしましょう。

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