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インタビュー

CKD(慢性腎臓病)の可能性と初期症状:蛋白尿(たんぱく尿)は早期発見のサイン

CKD(慢性腎臓病)の可能性と初期症状:蛋白尿(たんぱく尿)は早期発見のサイン
菅野 義彦 先生

東京医科大学腎臓内科主任教授

菅野 義彦 先生

腎臓の仕事は「尿をつくり、体内の水分の過不足を自動的に調整する」ことです。腎臓の機能が何らかの原因で低下し、このような働きが低下してしまう疾患を「CKD慢性腎臓病)」といいます。CKD(慢性腎臓病)の初期症状にはむくみや蛋白尿などがありますが、ほとんどが気づかれずに放置され、発見が遅れてしまうケースが多くあります。CKD(慢性腎臓病)を早期に発見するためには、尿検査の結果をしっかりとみて、異常があった場合はすぐに専門医を受診することが大切です。東京医科大学腎臓内科主任教授の菅野義彦先生に、CKD(慢性腎臓病)に関する現状の問題点と、様々な尿検査の項目の見方について伺いました。

CKD慢性腎臓病)は誰にでも起こりうる一般的な病気の一つで、非常に緩やかに進行する慢性疾患です。

CKD(慢性腎臓病)の特徴には下記の2点が挙げられます。

  • 発症初期は自覚症状がない
  • 一度発症したら腎機能を取り戻すことができない

CKD(慢性腎臓病)の一番の問題点は「はっきりとした自覚症状が出ない」という点にあります。特徴的な症状が出ないため、異変に気づかず(あるいは気づいても放置してしまう)発見が遅れるケースが多くなっています。また、一度かかってしまうと腎臓の働きを取り戻すことはできません。ですから、早期発見が非常に重要です。

CKD慢性腎臓病)は無症状ではありません。具体的な症状にはむくみ、蛋白尿、血尿などが挙げられますが、いずれも痛みや痒みなどの不快な自覚症状は生じません。

むくみは自分ではなかなか気づくことができませんし、たとえ気づいたとしても「むくみ」を訴えて医療機関を受診される方はまずいません。むくみは大抵の場合、翌朝になれば元の状態に戻っているからです。むくみにより体重も増加しますが、体重の増加を理由に来院される患者さんもいないでしょう。

むくみと同様、患者さんご本人がたんぱく尿を自覚することもありません。蛋白尿が出ていても見た目には何の変化も起きず、検査を受けて初めて異常を知る方がほとんどです。

しかし、検査で蛋白尿が出現していたとわかっても、ほとんどの方は病院に来ません。

尿検査の結果は-、±、+の3種類で評価します。しかし、多くの方はこの結果を見て良いのか悪いのか判断できないでしょう。たとえば最高血圧(収縮期血圧)が正常値135未満に対して200という結果が出れば、ほとんどの方が異常に数値が高いことに驚いて受診します。血糖の場合も、正常値と自分の数値がかけ離れていれば不安に思って病院に向かうでしょう。

蛋白尿の結果には、こうした「驚き」や「不安」といった受診を急がせる要素がありません。これは大きな課題だと考えています。(蛋白尿検査の重要性と新しい試みについては記事2『「検尿コップの色が変わる」? 尿検査の蛋白尿からCKD(慢性腎臓病)を発見するための取り組み』を参照)

腎臓の機能を長く健康に保つためには、できる限り早く腎機能の低下を発見し、早い段階で病院に来ることが大事です。

ここからは、一般的な尿検査の項目と、結果の見方についてご紹介します。健康診断などで出た結果をよくみて照らし合わせ、自分がCKD慢性腎臓病)になっていないかをしっかりと確認しましょう。

●蛋白尿

蛋白尿は、CKD慢性腎臓病)で最初にみられる症状のひとつです。腎臓の組織が障害を受けると、尿中に蛋白質が漏れ出てきます。通常は-あるいは±となり、24時間蓄尿(24時間で出た尿の総量)に0.15g以内であれば、蛋白尿が出ていても問題ありません。

蛋白尿は、運動や発熱によって出ることもあるため、一度蛋白尿が出ただけならば大きな心配はいりませんが、+が続く場合は異常が考えられます。長期にわたって大量の蛋白尿が続くようであれば、腎機能悪化のスピードも速くなるので注意が必要です。

●血尿

尿中に血液が漏れ出ている状態です。血尿は尿潜血検査によって診断します。-~±までは正常であり、+が続くようならば異常が考えられます。

尿検査で血尿が出たとしても、この検査では腎臓から出血しているのか尿路に発生した異常から出血しているのか特定できないため、どの部分から血液が出ているかを調べる必要があります。

●推定糸球体濾過量(eGFR)

学校や市町村の検診で「推定糸球体濾過量(eGFR)」という項目をみた方は多いのではないでしょうか。これは、血液のクレアチニン(Cr)という数字と年齢、性別を利用し、特殊な計算式を使って腎臓のろ過機能を計算した値です。

腎機能はこれを用いて推算します。eGFRが通常の6割以下になってくると腎臓の働きが軽度~中程度低下していると予測され、要注意と診断されます。

●糸球体濾過量(GFR)の計算

☆糸球体濾過量(GFR)の自動計算を行えるWEBサイト:日本慢性CKD(慢性腎臓病)対策協議会 

☆計算式を用いて計算する場合

・男性:eGFR (ml/分/1.73㎡) = 194×Cr-1.094×年齢-0.287

・女性:eGFR (ml/分/1.73㎡) = 194×Cr-1.094×年齢-0.287×0.739

※eGFR=推算糸球体濾過量

※Cr=血清クレアチニン値

関連記事:山縣邦弘先生記事「CKD(慢性腎臓病)とは―慢性に経過するさまざまな腎臓病の総称。メタボリックシンドロームをはじめ生活習慣病が大きく影響する

●血清クレアチニン(Cr)

クレアチニンは体内から発生する老廃物の一種で、腎臓のろ過機能が低下すると増加します。

クレアチニンは筋肉から発生するので、高齢の方や女性など、筋肉が少ない方は数値が上がりにくい傾向にあります。また、ろ過機能が約50~60%にまで低下しないと数値に現れないため、クレアチニンの値が上昇したときにはかなり腎機能が悪くなっているといえます。

●クレアチニンクリアランス(Ccr)

クレアチニンクリアランスは、24時間蓄尿検査による成分分析の結果と血液検査の値から、腎機能を計算した値です。eGFRよりも少々高くなる特徴があります。

●血中尿素窒素(BUN)

BUNはクレアチニンと同じく老廃物の一種で、蛋白質を代謝した後に出てくる物質です。クレアチニンと同様、ろ過機能の低下に伴って上昇します。ただし、脱水や消化管出血などCKD(慢性腎臓病)以外の要因でも増加する場合があるので、BUNの上昇でCKD(慢性腎臓病)と確定することはできません。

●ヘモグロビン、ヘマトクリット

腎臓は造血ホルモン(血を新しくつくるホルモン)を分泌しており、腎臓機能が低下すると血色素量(ヘモグロビン)およびヘマトクリットが低下し、貧血になることが知られています。

CKD慢性腎臓病)と診断された場合、腎臓をもとの状態に治すことはできません。CKD(慢性腎臓病)とうまく付き合っていくために、下記の2点に注意した生活を送ることが大切です。

  1. 残っている腎臓の働きを大事にして長持ちする
  2. 出現してくる症状を緩和して過ごす

CKD(慢性腎臓病)の原因には糖尿病や腎硬化症など様々な疾患がありますが、原因疾患に関わらず共通の治療が必要となります。

第一は適正な血圧の管理です。

CKD慢性腎臓病)が進行すると高血圧を発症します。高血圧になると、血管の負担が増大して動脈硬化が進行します。これにより、さらに腎臓の機能が悪くなって蛋白尿が増え、蛋白尿の増加によってますます腎機能が悪化してしまいます。

このような高血圧と蛋白尿の悪循環を絶たなければ腎機能を維持できません。

血圧を良好に保ち、腎機能に影響を与えないよう調整することが大切です。

血圧の目標値

糖尿病を合併している方の場合130/80mmHg未満

糖尿病ではなく、尿たんぱくが出現している方の場合130/80mmHg未満

糖尿病ではなく尿たんぱくもみられない方の場合140/90mmHg未満

患者さん自身が自宅で日常的に血圧を計測するよう心掛けましょう。

腎臓は老廃物を排泄する臓器であるため、食事のバランスが悪ければ当然多量の排泄物が腎臓によって排出されます。つまり、バランスの悪い食事は腎臓の酷使につながるのです。腎機能を悪化させないために、バランスのとれた食事を目指しましょう。特に、塩分を控え(6g程度)、蛋白質を適正な量に調整することが重要です。

減塩の例:醤油やソースは「かける」よりも「つける」ことを意識すれば少ない塩分で済む

日常的な健康状態の管理はCKD慢性腎臓病)を含め、様々な疾患の予防につながります。喫煙している方は禁煙し、感染症にかからないよう注意して、定期的に体重と血圧を測るようにしましょう。体重を測る理由は、むくみが発生していないか、栄養がきちんと摂れているかを確認するためです。医師は、計測された体重と血圧をもとに治療方針を決めていきます。

また、状態が安定していれば運動制限はありません。水分をしっかりと補給しながら積極的に運動しましょう。

進行したCKD慢性腎臓病)の患者さんはカリウムの排泄がうまくできず、カリウムが高値になる傾向にあります。高カリウムの状態は突然死につながるため、カリウムの上昇を抑えることが大切です。生野菜や果物の過剰摂取には注意しましょう。

CKD慢性腎臓病)の方は造血ホルモンが少なく貧血になりやすいため、貧血を起こした場合は薬物療法を行います。

慢性CKD慢性腎臓病)は現状維持ができれば100点といえる病気で、医学的介入によって尿中たんぱくの量が減ったり腎臓の機能がよくなったりすることはありません。一度病気になってしまうと元には戻らないのです。ただし、腎臓の機能がすぐに低下することはありません。

私たち腎臓内科医は、たとえば現在の腎機能が普通の方の70%程度に低下していて、今後10年かけてその機能が10%にまで落ちていくというとき、10年という期間を15年、20年に延ばすためのお手伝いをします。

一人だけではなかなかすべてを実行するのは難しいものです。医師や周囲の方と協力しながら、よい状態の腎臓の維持を目指しましょう。

 

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