院長インタビュー

先進的ながん治療から介護福祉まで、幅広く活動する関西医科大学附属病院

先進的ながん治療から介護福祉まで、幅広く活動する関西医科大学附属病院
松田 公志 先生

関西医科大学附属病院 病院長、泌尿器科学講座 教授/評議員・理事

松田 公志 先生

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大阪府枚方市にある関西医科大学附属病院は、大阪府北東部の北河内地区を支える基幹病院として、急性期から慢性期までの医療をシームレスに提供しています。特定機能病院として先進的ながん治療や患者さんに負担の少ない治療に取り組む同院の地域での役割や今後について、病院長である松田(まつだ) 公志(ただし)先生に伺いました。

当院は関西医科大学の旗艦附属病院として、京阪枚方市駅から徒歩3分と交通至便で淀川の近くの緑に囲まれた地に、2006年に開院しました。開院と同時に特定機能病院の指定を受け、その後、同年に総合周産期母子医療センターや地域災害拠点病院に指定され、続いて2010年には地域がん診療連携拠点病院、さらに2012年には高度救命救急センター、2018年には大阪府難病診療連携拠点病院と大阪府アレルギー疾患医療拠点病院にも認可され、救急疾患から難病希少疾患まで対応できる医療体制を充実させてきました。開院当初から、北河内二次医療圏115万人市民の医療の最後の砦としての役割を果たしています。

現在は、専門的な49の診療科と、一人の患者さんに複数の診療科がかかわって診療する、9つの集学的治療センターで、高度で一人一人の患者さんに適した医療の提供を行っています。また、高度救命救急センターでは、年間に4,600件以上の救急車を受け入れるとともにドクターカーを運用し、地域医療を支えています。

地域医療機関との密な連携も、特定機能病院、大学病院には求められます。当院は、関西医科大学が中心となって、18の病院と1クリニックで構成されている地域医療連携推進法人“北河内メディカルネットワーク”の中心病院として、ネットワーク内の医療機関と強く連携し、互いに協力しながら、患者さんに適切な医療の提供を努めています。

本院が特に力を入れているのは、高度ながん診療の提供です。北河内二次医療圏内唯一の地域がん診療連携拠点病院として、地域医療機関と連携しながら、手術、放射線治療、がん化学療法、免疫療法のほかに、第5のがん治療として注目されている光免疫療法など、先進医療をいち早く取り入れています。また、大阪府小児中核病院であり小児がん連携病院でもある当院では、小児のがん治療にも力を入れ、小児医療センターで多数の患児の治療を行っています。

手術、放射線治療とともにがん治療の中心となるがん化学療法は、外来のがんセンターで毎日100人以上の患者さんを診療し、2022年の診療実績は年間2万件を超えました。また遺伝子情報を活用するがんゲノム医療にも積極的に取り組み、一人ひとりの体質や病状に合わせて治療方針を決定しています。2024年には臨床腫瘍科も立ち上げ、体制を強化しました。

がん新薬の開発は目覚ましく、当院でも多くの新薬の治験を行ってきました。さらに、世界で開発されるより有効な最新の薬剤を、世界で最初に当院で使用できる体制を整えるべく、2024年中にがん新薬開発科を新設する予定です。ご期待ください。

がん診療では、診断と治療だけではなく、緩和ケアやがん患者の支援も重要です。特に若年層のがん患者は学業、仕事、出産など若者特有の悩みを抱えていることがよくあります。しかし、中高年以降のがん患者と比べて少数のため、十分にサポートできる医療施設が少ないのが現状です。

そこで当院では、15〜39歳までのがん患者を対象として、2022年に“AYA(Adolescent and Young Adult)世代支援チーム”を立ち上げました。主に小児科や女性診療科の医師が中心となり、看護師や介護福祉士などさまざまなメンバーが活躍しています。

若年層のがん患者の中には、抗がん剤や放射線治療の影響で卵巣や精巣の機能が損なわれ、不妊症に陥るケースがあります。当院ではこのようなリスクのある患者さんに対して、妊娠する可能性を残す“妊孕性温存治療”、すなわちがん治療前の卵子や精子の温存を提案しています。

当院は、第5のがん治療として注目されている光免疫療法をいち早く取り入れました。がん細胞に特異的に集まる特徴と光に反応してがん細胞を殺しその結果としてがん免疫も強化する性質を持つ薬剤を投与し、その後に体表から、あるいは針を刺して特殊な光を照射する治療です。

まだ誕生して日の浅い治療法なので採用している病院は多くなく、現時点では保険適用の範囲は難治性再発頭頸部がんなどに限られています。関西医科大学にはこの治療法の開発者である小林久隆博士を所長に迎えて、光免疫医学研究所を設置していますので、その研究成果を当院光免疫療法センターにいち早く取り入れて、将来的に適用する範囲を広げていければと考えています。

当院は、治療による患者さんへの侵襲(からだへの負担)を小さくすることを特に重視しています。わずかな切開で治療できる腹腔鏡手術を、全国に先駆けて1991年からいち早く取り入れていましたが、今注目されている手術支援ロボット(“hinotori”や“ダビンチ”など)も2013年に導入、現在は3台体制とし、がんだけでなく多くの疾患に低侵襲で精緻な手術を行っています。

手術支援ロボットはダビンチだけではありません。当院では、整形外科の脊椎やひざ関節手術でも専用の手術支援ロボットを導入し、これまでより正確な手術が行えるようになっています。

心臓や血管の治療でも、切らずに治療ができる経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)やマイトラクリップ、あるいはステントグラフト、さらには内視鏡を用いた心臓手術などの治療法を取り入れ、負担の大きい開胸による外科手術が困難な患者さんに対しても低侵襲な方法で治療しています。心臓血管外科の内視鏡手術やステントグラフト手術については、日本有数の専門医が質の高い治療を行っています。

医師の働き方改革の正式施行を迎え、病院での診療はこれまで以上にチーム医療が大切となっています。当院では専門的な研修を受けた看護師特定行為研修修了看護師(特定看護師)を、全国の病院で最も多い約110人配置し、医療サービスの質を上げています。特定看護師は、これまで医師しかできなかった医療行為を、あらかじめ医師から指示された手順書に基づいて行うことができます。患者さんの容態が変化した場合も、忙しい医師に相談することなく、これまでよりタイムリーな処置を安全に提供することができ、患者さんのより早い回復につなげています。

遠方から受診される患者さんやそのご家族、あるいは外来でがん化学療法を受けられてお疲れになられた患者さん、さらに放射線治療など連日の外来受診が必要な患者さんに、少しでも受診しやすい環境を提供するために、2022年6月に、附属病院敷地内に関医タワーホテルを開業しました。このホテルは、患者さんとそのご家族専用のホテルで、宿泊中に体調が悪くなった場合には当院救命救急センターから医師と看護師が駆けつける体制をとっており、安心して泊っていただくことができます。また、ホテル玄関から病院入り口まで専用のカートを運行しており、楽に移動していただけます。

また、病院敷地内は緑が豊富で、隣接する医学部学舎そばには季節によって多くのバラや桜が咲き誇り、また病院6階には患者さん専用の庭園も造られています。このように、当院は患者さんにとって快適な療養環境の整備に力を入れています。

患者さんには、地域で唯一の特定機能病院として、急性期から慢性期までのシームレスな質の高い医療をできる限り低侵襲な方法で提供していきます。これからも一人ひとりの患者さんの声に耳を傾け、患者さんに寄り添った病院になれるよう真摯な医療活動に取り組んで参ります。

医師や看護師を目指す方に対しては、当院のような最先端の医療を実践している環境でしっかりキャリアアップしてほしいと思います。当院では大学附属の医育機関として関西医科大学の医学部、看護学部やリハビリテーション学部の学生を教育するほか、看護師の特定行為研修指定機関として多数の特定看護師を育成しています。当院の特徴である働きやすい環境と先進的な医療はこれからも伸ばしていきたいと思います。

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