院長インタビュー

“人々の健康と命、安心のこころ”を守るべく変革を続ける埼玉病院

“人々の健康と命、安心のこころ”を守るべく変革を続ける埼玉病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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埼玉県和光市にある独立行政法人国立病院機構(以下、NHO)埼玉病院(以下、埼玉病院)は、埼玉県南西部医療圏で唯一の紹介受診重点医療機関(2023年指定)として地域医療の中核的な役割を担う総合病院です。近年はロボット支援下手術の導入や働き方改革を推進し、より質の高い医療を目指して取り組んでいます。そんな同院の取り組みや特長について、病院長の細田 泰雄(ほそだ やすお)先生にお話を伺いました。

当院のルーツは、1941年に朝霞駐屯地で創設された白子陸軍病院です。その後、医療体制を拡充して2004年に独立行政法人の運営と現在の名称になり、埼玉県南西部医療圏の医療需要に応えるため2021年には550床に増床しました。近年は、ロボット支援下手術の推進や人員増加による医療体制の刷新などに取り組み、先進的な医療の提供に尽力しています。

当院のある埼玉県和光市は東京都の練馬区や板橋区に隣接しているため、都内からの患者さんも少なくありません。近年、東京メトロ副都心線の開業や東京外環自動車道の整備により当院へのアクセスがスムーズになったことで、地域医療の中心を担う病院としての出番がますます増えました。

当院は2023年10月に国産初の手術支援ロボット“hinotori”を導入し、全国の国立病院機構の病院で初めて医療現場で活用しています。

ロボット支援下手術は、患者さんの体への負担が少ない治療法です。ロボットアーム操作でありながら術者の微細な動きを再現でき、高精細な3D画像や動作状況をモニタリングするネットワークシステムなどが搭載されています。従来の腹腔(ふくくう)鏡下手術に比べて術中の出血や術後の痛みを軽減できるというメリットがあり、当院では積極的にロボット支援下手術を推進してきました。今のところ、前立腺全摘除術(RARP)など泌尿器科の手術において活用していますが、今後は外科や婦人科の手術にも活用の場を広げ、患者さんのニーズに応えたいと考えています。

当院は、長年研鑽を積んだ医師たちによる手厚い診療体制が強みです。なかでも特に小児科は小児救急、新生児集中治療室(NICU)、幅広い専門外来、在宅医療支援という4本柱で包括的な診療に取り組んでいます。

24時間体制の小児救急では年間約8,100人(2023年度診療実績)の患者さんを受け入れています。2021年に当院は県内の救命救急センターに位置付けられ、それまで受け持っていた2次救急(入院を要する重症患者の救急医療)に加えて3次救急(重症かつ複数の診療科領域にわたる全ての重篤な救急患者に対する医療)の対応を行うとともに、朝霞地区医師会の医師たちと共に小児の1次救急(初期救急、比較的軽症な症例)にも対応しています。2018年に開設した12床のNICUも、赤ちゃんと家族に優しいNICUとしてフル稼働して迅速かつ的確な治療に努めてきました。また、小児科では腎臓や心臓、アレルギーなどの病気に関することに加えて乳児検診や発達相談などの専門外来を設けるほか、地域の医療機関や訪問看護ステーションなどと連携しながら重症児の在宅移行も支援しています。

当院には現在、麻酔科に20人の麻酔科医*が在籍し(2024年3月時点)、外科医が手術に専念できるような環境を整えています。患者さん1人ずつに麻酔科医が1名以上付く体制を整え、安全で快適な手術を受けられるよう努めています。麻酔科医は、夜勤を含め患者さんの急変時や救急搬送時に備えて常に待機していますので、必要に応じて迅速に緊急手術への対応が可能です。2019年には中央手術室9室、外来手術室2室、産科病棟手術室1室の計12室体制に拡張され、より幅広い分野の手術に対応可能となりました。

当院の麻酔科には、各分野のスペシャリストがそろっています。たとえば、心臓血管麻酔専門医(心臓血管麻酔学会認定)、小児麻酔学会認定医(日本小児麻酔学会認定)、区域麻酔(神経ブロック)認定医・指導医(日本区域麻酔学会認定)などです。患者さんが手術を受ける前には麻酔科術前診察にて体の状態や合併症の有無などを把握したうえで、各分野の専門医と麻酔科医が連携して適切な麻酔法と全身管理の計画を行っています。

*麻酔科医:山田茂行、和田弘樹、荒牧良彦、松岡信広、遠藤暢人、德永元秀、幡生洋介、塚本加奈子、木村隆平、筒井麻里、亀井信孝、風間大樹、平野達也、大原研太、市ノ川桜子、中村凌太朗、戸塚拓志、辻村祐一郎、近江淳平、木本康瑛

当院の内科系診療科は、長らく循環器、脳神経、消化器、呼吸器内科4科の体制でしたが、現在はそれらに加え、緩和ケア内科、腫瘍内科、血液・膠原病内科、腎臓内科、糖尿病内科が整備され、充実した体制となりました。多くの診療科がそれぞれの分野における地域の中核的な病院となっており、さまざまな領域の合併症を有することが多い高齢者の患者さんにおいても、互いに協力して診療にあたっています。

当院は、患者さんによりよい医療を提供できるよう年1回の外部審査を受け、毎年、ISO認証を更新し続けています。ISOは何らかの製品やサービスに関して世界中で同じ品質、同じレベルのものを提供できることを目標とした国際的な基準です。当院は“品質マネジメントシステム”および“臨床検査室の認定”で認証を受けており、さらに専門的なスキルをもつ職員の確保や働きやすい環境づくりなどを通じて診療体制を整えてきました。このような取り組みにより患者さんと仲間(職員)、自分自身それぞれが満足できる医療機関、職場を目指しています。

また医療サービスを一定の水準以上に保つため、業務の標準化にも取り組んできました。たとえば、以前は病棟によって与薬(患者さん個々の病態や症状に合わせて薬を与えること)の手順が異なりましたが、院内で共通のルールを設けて文書として見える化し、さらにヒヤリハットの原因をプロセス指向で明らかにして共有するようにしました。このようなきちんとした仕組みづくりと実行によってヒューマンエラーの防止に努めています。

2024年4月には、新社会人を含めて約200名の職員を採用しました。それに伴い全職員の2割ほどが入れ替わることとなりましたが、これまで培ってきた品質マネジメントシステムのおかげで従来どおりの医療を提供できています。地域の皆さんに信頼していただけるよう、これからも安定感のある医療体制を継続していきたいです。一方で、現状に満足せずにより質の高い医療を目指し、改革し続ける病院でありたいとも強く思います。まずはより先進的な医療体制に向けて手術支援ロボットの適用範囲を拡大し、さらにハイブリッド手術室(外科手術とカテーテル治療の両方が実施可能な多機能手術室)などの設備拡充を積極的に進めます。

当院は、埼玉病院2030年ビジョンである“患者さん、職員、地域が3つの家族主義を日本一と誇れる病院になろう”を中長期目標として掲げ、三方よしの環境を実現するべく活動しています。これからも当院は“この地の人々の健康といのち、そして安心のこころを守る”という理念を礎に、職員同士で切磋琢磨しながら患者さん中心の医療に励み、誠実な医療を通じた地域貢献に努めて参ります。

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