院長インタビュー

“断らない救急”と災害医療への対応で真摯に地域を支える福島赤十字病院

“断らない救急”と災害医療への対応で真摯に地域を支える福島赤十字病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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福島県福島市にある日本赤十字社 福島赤十字病院(以下、福島赤十字病院)。同院は“可能な限り救急患者を断らない”をモットーとして2次救急の患者さんに対応するとともにナビゲーション支援下手術など体に負担の少ない治療を取り入れ、さらに全国各地で献身的に取り組む災害医療にも尽力しながら、地域の人々を真摯に支える総合病院です。そのような同院の特徴と思いについて、院長の鈴木 恭一(すずき きょういち)先生にお話を伺いました。

2023年に創立80周年を迎えた当院は、長らく福島県北部を中心に地域医療を支えてきました。その一方で公的医療機関としての責務を果たすため、2011年の東日本大震災など数々の災害医療においてDMAT(災害医療派遣チーム)や救護班を派遣しています。近年は、2019年の病院移転に伴って新たな医療設備を導入したほか、外来患者さんおよび入院患者さんを対象とした電子カルテシステムの運用を開始するなど、医療提供体制の改革に励んでいます。

福島県における人口10万人対比の医師数は、全国ワースト6位(2022年データ)です。さらに当院においてはコロナ禍で起こった受診控えの名残か、入院や外来診療の患者さんの数は落ち込んだままでした。東日本大震災や原子力災害からの復興も長らく課題となっており、現状、県内の医療を取り巻く環境は厳しいものとなっています。当院としては、引き続き安定した医療体制を維持するべく医師の確保に努めるとともに、地域連携を推進して近隣の医療機関と機能を分担し、質の高い医療を提供できるよう取り組む所存です。

2006年に脳神経外科と脳神経内科の共同で脳卒中センターを開設して以来、時間との闘いである脳卒中に対して迅速な対応を行ってきました。当センターは24時間365日体制で脳卒中に対応する“一次脳卒中センター”および、24時間体制でカテーテル治療を行う“一次脳卒中センター(PSC)コア施設”に認定されています。

福島県内のPSCコア施設は、当院を含めてわずか5施設しかありません(2024年3月末時点)。このような背景から、当院は県北部における脳卒中治療の中核的な役割を担い、脳卒中患者さんの救急搬送を積極的に受け入れてきました。また専門性の高い脳卒中診療に対応する医療機関として、当院には日本脳神経血管内治療学会認定の指導医が在籍するほか、県内に3か所ある日本脳神経血管内治療学会研修施設の1つに指定されており、後進の育成にも尽力しています(2024年7月時点)。また、地域に開かれた病院として県内各所で公開講座を定期的に実施し、住民の皆さんに脳卒中について知っていただく機会を設けています。

泌尿器科は東日本大震災の影響で人員が不足し一時休止していましたが、現在は無事に再開しています。当科の部長は片岡 政雄(かたおか まさお)先生が務めており、腹腔鏡技術認定医(ふくくうきょうぎじゅつにんていい)(日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会認定)や泌尿器ロボット手術プロクター(前立腺・膀胱)(日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会認定)などの資格を生かして、泌尿器のさまざまな病気に対して専門性の高い治療を行っています。

設備面では、2022年に前立腺がんの診断に用いる“MRI-TRUS 融合画像ガイド下前立腺生検”を導入して、より精度の高い診断を目指すとともに、直近では前立腺肥大症に対するレーザー治療の1つで従来法よりも出血が少なくて済む、“光選択的前立腺レーザー蒸散術(PVP)”を取り入れました。これらの設備投資により、これまでにも増して体への負担が少ない治療の実現を目指しています。

先方提供
福島赤十字病院 泌尿器科の診療でPVPを活用する様子

当院は屋上にヘリポートを備える災害拠点病院として、2011年の東日本大震災をはじめ、2016年の熊本地震、2019年の台風19号など、非常事態が起こるたびに救護班を派遣してきました。中でも、2024年の元日に起きた能登半島地震では当院の迅速な支援活動がテレビなどで取り上げられ、地域の方々から応援や賞賛のお声を多数いただきました。このことをきっかけに、院内の災害医療に対するモチベーションはさらに高まったように感じます。災害医療に携わる医療機関の職員として、我々一同は、今後起こり得る災害に対しても積極的に支援していく心持ちです。

現在、日本赤十字社全体で医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進めています。当院でもDX推進室を開設し、院内の業務を効率化するべくRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション:これまで人間が行ってきた定型的なパソコン操作をソフトウエアのロボットにより自動化する仕組み)の運用を開始しました。これは、医師やスタッフの人手不足を補完し、安定した医療体制を構築するための重要な施策です。現在は4名のシステムエンジニアが中心となって、数台のロボットを稼働させています(2024年7月時点)。今後さらに業務の自動化と効率化を進めることで、当院のスタッフがそれぞれの役割により集中できる環境を整えたいと思っています。

私は福島県立医科大学医学部の脳神経外科に入局して以来、一貫して脳神経に関する臨床、研究、教育に携わり、当院に移ってからも脳神経に関する診療に注力してきました。現在も、院長であると同時に今も現場に立つ医師でもあります。

医療DX推進などを通じて医療現場の機能分化を進めるなか、今後は働き方改革に伴い医療者自身の健康やワークライフバランスも考慮し、医療の質と安全性を担保できる健康的な医療現場を作っていく必要があるでしょう。時代によって医療に求められていることは変わります。これからも当院は社会や地域のニーズをいち早く察し、皆さんに喜んでいただけるような病院を目指して全力で取り組んで参ります。

MN

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