院長インタビュー

患者さん中心の救急医療と地域連携:平成立石病院の使命と取り組み

患者さん中心の救急医療と地域連携:平成立石病院の使命と取り組み
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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平成立石病院は、東京都の城東地区にある葛飾区に位置する二次救急病院です。

同院は地域全体での救急医療を考えて多くの救急患者さんを受け入れており、また地域で完結できる医療の提供に尽力されています。平成立石病院の院長である大桃 丈知(おおもも たけとも)先生に同病院の特徴や活動についてお話を伺いました。

平成立石病院は、203床を抱える救急医療をメインとした病院です(2024年1月時点)。

平成14(2002)年に100床の病院として開院し、救急医療機関として増築・増床を経て東京都指定地域救急医療センター、災害拠点病院などに姿を変えつつ成長してきました。

当院がある東京都東北部二次保健医療圏は、荒川区、足立区、葛飾区の3つの区から構成されています。当院はこの地域の二次救急医療機関の中核的な存在として、患者さんを24時間365日体制で断ることなく受け入れています。また、グループ施設とも連携して急性期から在宅まで、地域で完結できる医療の提供を大切にしています。

当院は、全館急性期病床として稼働しており、救急車を独自に保有して救急救命士も24時間対応できる体制をとっています。

年間約9,000台の救急車に応需しており、当院の規模を考えると都内でもかなり多い部類に入ります。場所柄荒川区、江戸川区からの応需もありますが、ほぼ葛飾区の方々が運ばれてきており、まさに葛飾区に根付いた救急医療を展開しているといえるでしょう。また、時間との戦いになる救急医療において、Mobile ER (モバイル救急救命室)という高規格救急車を活用しています。このシステムは、患者さんを搬送中の救急救命士と音声と画像でやりとりをし、必要に応じて搬送中の段階から救急救命士が実施可能な救急救命処置を遠隔で指示、コントロールをしつつ一秒でも早い措置ができるような仕組みを取り入れています。

当院では、地域の皆さんが他区の見知らぬところに運ばれることなく、住み慣れた地元で救急医療を受けられるよう、頑張っています。

また、私個人は救急と災害医療を専門としています。一分一秒を争う中、時間の使い方次第でその人の命が決まってしまう極限の医療環境において貢献したい気持ちが大きく、今日まで救急領域で活動してきました。災害においては、いろいろな能力を持った人たちの力を結集して、被災地の人たちを助けるチーム医療に取り組んでいます。

さらに、この経験や知識を最も発揮できる自衛隊に予備役として参加し、災害招集や訓練の場において医官や看護官や救急救命士の教育にあたっています。

2023年12月に創設した総合診療科は、とくに複数の基礎疾患を有する方へ、科の垣根を越えて医療提供が行えるよう、内科系・外科系の医師で構成されています。総合診療科は年齢、性別、臓器に関係なく患者さん一人ひとりを俯瞰的、包括的に診ていく診療科です。

細分化・専門化した今の医療において横断的なアプローチが可能な診療科として、当院では特に力を入れています。

当院の整形外科では、特に脊椎脊髄病疾患と肩・膝関節疾患に重点を置いた幅広い整形外科疾患の治療に取り組んでいます。

的確な診断・治療を行い、患者さん一人一人に合ったわかりやすい医療を提供したいと考えており、患者さんご自身が治療の選択をして方針を決めていただくために、医師はそれぞれの治療法の利点・欠点をご説明するなど意思決定のお手伝いをしています。

患者さんが治療の意思決定をする際は、直接医師と対話し、疑問をなくして納得されることが大事だと考えています。また、インターネットの多様な情報があふれる中、少しでも安心して治療していただけるよう正しい情報を提供したい思いで、当整形外科の公式ページを立ち上げております。

脳神経外科においては、2002年の開設以来葛飾区とその周辺地域の基幹病院として、24時間365時間体制で、脳神経領域における内科的・外科的治療や頭部外傷治療などに積極的に取り組んでいます。

近年は脳血管内治療を行える体制を強化し、2024年6月には都内に31施設しかない日本脳卒中学会の一次脳卒中センター(PSC)コア施設に認定されました。これは、血栓回収療法を行う資格を持つ常勤医師3名以上、同療法を24時間365日体制で行っているなどの条件があり、当院はその基準を満たしたことで認定を受けて、実績を積み重ねています。

当院では、診療看護師(Nurse Practitioner / NP:ナースプラクティショナー)を配置しています。

診療看護師とは、もともとは米国で取り入れられた看護師職の一つですが、所定の経験と大学院修士課程での知識習得と実践を行った看護師であり、一般的な看護業務の他に医師の指示や手順書(指示書)のもと、一定の範囲内の診療行為を行うことができます。医師のタスクシフトを担うポジションであり、当院でも少しずつその数を増やしているところです。当院ではこういった積極的な取り組みで医療スタッフの負担を分散し、限りある医療資源と医療の質の両立を図っています。

当院には、救急や災害医療にやりがいを感じる医療スタッフが増えてきています。DMAT(厚生労働省の災害派遣医療チーム:Disaster Medical Assistance Team)活動など、私が専門とする災害医療を通じて知り合った診療看護師さんもその一人です。救急や災害医療に関わる方々に、当院の特色をお話しする機会を多く持つことで、志を同じくする人たちが少しずつ集まってきた結果だと考えています。人づてに集まってくれる組織であることは、自分たちが信じてやってきたことの正しさが証明された気がして、大変誇りに感じています。

2024年施行の“医師の働き方改革”により、医療の質の維持と医療人の生活の両立が今まで通りのやり方では非常に厳しくなると予想しています。しかしながら、当院は夜間であっても救急のパワーを落とさないよう工夫しながら乗り切るよう努力していきます。

平成立石病院はペンギングループという法人傘下に属し、病院単体ではなくグループ全体で地域を包括的にケアしていく体制を整えています。

ペンギングループには訪問診療部門や看護ステーションやリハビリテーション病院など、当院を退院後も住み慣れたご自宅や地域の中で安心して完結できる医療・介護体制を持っており、同じ法人内であるメリットを生かして各医療機関間でのスムーズな入退院、情報連携、医療連携を行っています。

地域の皆様にとって当院が、皆様の身近にあり、皆様が困ったときに頼れる存在だと感じていただけることが、当院の願いです。

その一例として、当院は独自に救急車を保有し救急搬送をしています。これは東京消防庁に負担をかけすぎないようにするためでもあり、また救急の患者さんが増えている近年の状況を鑑みいち早く患者さんを当院に搬送するためでもあります。こういった活動は今後さらに拡大する必要があるでしょう。

また、当院のある葛飾区は低地であり古くから水害のリスクがあるため、区役所や地域の方々は普段から災害に備えています。当院も災害拠点病院として地域全体で連携できる仕組みを作り、平時でも災害時でもかわらない医療提供を行えるよう普段からシミュレーションを行い、いざというときに備えています。

今後も立石平成病院は、葛飾区を中心としたこの地域で、救急を始めとした医療活動に尽力していきます。

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