院長インタビュー

地域の高度急性期医療を担う大きな柱の1つ――東邦大学医療センター佐倉病院

地域の高度急性期医療を担う大きな柱の1つ――東邦大学医療センター佐倉病院
鈴木 啓悦 先生

東邦大学医療センター佐倉病院 病院長、東邦大学泌尿器科学講座 教授(佐倉病院)

鈴木 啓悦 先生

目次
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1991年9月に開院した東邦大学医療センター佐倉病院は、405床の病床全てが高度急性期病床という、高度急性期医療に特化した地域の中核を担う病院です。

同院の特徴や強み、また注力している取り組みなどについて院長の鈴木 啓悦(すずき ひろよし)先生にお話を伺いました。

当院は東邦大学の3つ目の付属病院として、佐倉市と市民の皆さんからの誘致を受けて1991年9月に開設されました。現在の病床数は405床で、ICU・HCUなどの集中治療室や高度治療室も含めた全ての病床が“高度急性期病床”という、高度急性期医療に特化した医療機関です。

当院は地域の中核病院として高度で安全な医療を実践することを使命とし、手術支援ロボット・ダヴィンチをはじめとしたさまざまな最新の医療機器・設備を活用して日々の診療にあたっています。

当院が地域医療を支えるために大切にしているのが、高度な技術・設備による手術、救急対応、そして重症患者さんへの治療です。

手術では、患者さんの全身状態を的確に把握したうえで、腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)・内視鏡手術、ロボット支援下手術など、患者さんの体への負担が少ない低侵襲(ていしんしゅう)手術を積極的に行っています。

また、救急においては当院が地域医療の“最後の砦”という意識をもち、受け入れ態勢を強化し“断らない救急”の実現を目指しています。救急搬送の受け入れはもちろんですが、地域の医療機関からのSOS、たとえば一刻を争う状態の患者さんや急変した患者さんなどの緊急受け入れ要請に、可能な限り応じられるよう尽力しています。このSOSの件数や内訳は医療連携・患者支援センターで随時チェックしており、どうしても断らざるを得なかった件についても、体制の見直しなどにより受け入れられる余地ができるかどうかなどを検討し、“SOSに対する、より高い応需率”の実現を目指し続けています。

当院は、大学の附属病院としてさまざまな診療科や部門、センターを備えていますが、その中でもいくつか特色ある診療科やセンターをご紹介します。

泌尿器科には、幅広い知識を有するスタッフが30名近く在籍(2024年10月時点)しています。私自身も泌尿器科を専門としており、病院長と泌尿器科教授を兼務して診療責任者を務めています。

当科では、前立腺がんの生検(病変の一部を採取し、顕微鏡などで詳しく調べる検査)のために、MRI超音波融合生検システムを導入しています。このシステムの導入により、事前撮影したMRI 画像とリアルタイムの超音波画像を重ね合わせてがんの存在が疑われる部位を特定するという、精度の高い生検採取を行えるようになりました。

また、当科には泌尿器腹腔鏡技術認定医および泌尿器ロボット支援手術プロクター認定医が5名在籍しており、ロボット支援下手術を含む腹腔鏡下手術は県内でも3位の実績を誇ります*。前立腺がんをはじめ泌尿器科系のがんの治療では、手術だけでなく化学療法(薬物療法)や放射線治療も行っており、放射線治療についてはQST病院(旧・放射線医学総合研究所病院)と連携して、重粒子線治療にも対応しています。

*DPCデータより(2020年度、2021年度、2022年度実績)

消化器内科では特に、潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)クローン病・などの炎症性腸疾患の治療を積極的に行っており、地域を超えて多くの患者さんがお見えになります。また、治験に注力している診療科でもあり、特に薬に関する治験を数多く実施しています。

当院は治験・臨床試験を“未来の医療を創るための重要な手段”と考え、その実施にも力を入れています。当院公式サイトの治験推進センター(治験事務局)ページにて現在実施中の治験情報などを公開しておりますので、治験に興味をお持ちの方はぜひご覧ください。

糖尿病網膜症や網膜剝離をはじめとした、難治性の網膜硝子体疾患の治療を得意としており、幅広い地域から多くの患者さんがいらっしゃいます。

網膜硝子体の手術は、眼科手術の中でもきわめて難易度が高い手術とされていますが、当院では年間600件以上*の網膜硝子体手術を行っており、高い技術を有する専門医(日本眼科学会認定)がそろっています。

*網膜硝子体手術(2023年度実績)……695件

糖尿病・内分泌・代謝センターを窓口として行っている高度肥満症の治療も、当院の大きな特徴の1つです。医師や看護師、栄養士、薬剤師、理学療法士をはじめ、精神面をサポートする臨床心理士などがチームとして一体となり、診療にあたっています。

高度肥満症の治療には内科的治療と外科治的療があり、当院ではいずれの治療にも対応しています。内科的治療としては食事療法や、日々の記録をもとに患者さんご自身に生活改善のコツをつかんでいただくための“ヘルスケアファイル・ウェートコントロールファイル”の活用などを行います。また、状況によっては内視鏡による“胃内バルーン留置術”を行うこともあります。

外科的治療としては、“腹腔鏡下スリーブ状胃切除術”や、“十二指腸空腸バイパス術(スリーブバイパス術)”などの手術を行っています。高度肥満症の患者さんに対するスリーブ手術は力を入れて取り組んでいる分野の1つであり、着実に症例を重ねています。

当院では、かかりつけの先生方をはじめとした、地域の医療機関との連携に積極的に取り組んでいます。現在当院では、受診の際の紹介状の持参・事前予約を原則としており、かかりつけの先生方からご紹介いただいた患者さんの急性期治療を担当しています。その後、当院での治療が終わり、症状が落ち着いたらかかりつけの先生方のもとにお返しする“逆紹介”をできるだけ徹底するよう心がけています。こうした連携の流れをつくることで、病院それぞれの特性を生かした診療を行うことができ、当院であれば高度急性期医療に特化することで、より多くの患者さんに適切な医療を提供することが可能となります。

連携を強化するため、医療従事者向けのセミナーや臨床病理症例検討会など、相互理解を深めるための機会づくりにも積極的に取り組み続けています。また、医療機関向けの季刊広報誌も発行しています。

当院では地域の皆さんに向けても、院内外での公開講座など情報発信を積極的に実施しています。院内で開催する市民公開講座は対面およびWEB配信によるハイブリッド形式で開催していますので、遠方の方もWEBでご参加いただけます。健康や医療に関する情報をできるだけ分かりやすく解説していますので、興味のあるテーマがあれば、ぜひお気軽にご参加ください。

また、“さくらだより”や“THE PROFESSIONAL”などの広報誌による情報発信もしており、これらのバックナンバーは当院公式サイトよりご覧いただけます。

●患者さん向け 広報誌(さくらだより)

https://www.sakura.med.toho-u.ac.jp/koho/kohoshi_kanjya.html

●医療機関 / 患者さん向け 広報誌

(THE PROFESSIONAL)

https://www.sakura.med.toho-u.ac.jp/koho/kohoshi_pro.html

私は、医療従事者たる者は医療の知識や技術を磨くだけでなく、接遇などを含めた患者さん視点での医療サービスにも目を向ける必要があると考えており、スタッフに対する接遇研修などを実施しています。

本当の意味での“ペイシェントファースト(患者さん第一)”な診療を行える病院づくりや、“来てよかった”と心から思っていただけるような医療サービス提供の実現を目指していっそう努力していく所存です。

今後もぜひ、当院への温かいご理解とご指導、ご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

*病床数や診療科、提供している医療の内容等についての情報は全て2024年9月時点のものです。

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