院長インタビュー

救急・急性期医療の拠点として地域連携を推進する広島共立病院

救急・急性期医療の拠点として地域連携を推進する広島共立病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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広島県広島市にある広島医療生活協同組合 広島共立病院(以下、広島共立病院)は、地域の二次救急を支えつつ、地域医療ネットワークの拠点として急性期から回復期まで対応している総合病院です。

そんな同院の特長について、院長の村田 裕彦(むらた ひろひこ)先生にお話を伺いました。

提供写真
病院外観(広島共立病院ご提供)

当院は、広島市の安佐地域で不足している救急医療や入院治療に対応するため、地域の皆さんの支援のもと1977年に開設されました。母体である広島医療生活協同組合は、当院のほかに3つの医科診療所と1つの歯科診療所や保育、介護事業を展開しており、健診、在宅医療、通所介護(デイサービス)などを通じて、予防医療の推進や高齢者医療への対応に努めています。

当院は現在、救急医療、リハビリテーション、緩和ケア、ヘルスプロモーションを4つの重点課題として、二次救急(手術や入院治療が必要な重症患者の救急)や急性期医療を中心に幅広い診療を行っています。

当院のある安佐南区の人口は約24万人(2024年4月時点)で、広島市内でもっとも人口が多い行政区です。また同区は広島市のほぼ中央に位置し、交通の便がよいベッドタウンとして年々人口が増加しています。そのため、救急医療のニーズも増え続けています。当院は病病連携や病診連携といった地域の医療機関との連携を推進し、一次救急から三次救急まで全ての救急医療に速やかに対応できるよう努めています。

広島県では2016年に地域医療構想が発表されました。これは医療、在宅医療、介護の連携により、住み慣れた地域で安心して誰もが暮らせる“地域包括ケアシステム”を推進する指針が示されています。

当院の取り組みとしては、“広島市在宅医療相談支援窓口”を設置して在宅医療と入院の橋渡し役を担ったり、病院近隣の日常生活圏内で訪問診療を行ったりしています。 

また、2021年には37床の地域包括ケア病棟を設置し、地域の医療施設と連携して高齢者医療の受け皿を拡充しています。

当院は、全人的な診療を行う総合診療科をはじめ、さまざまな医療ニーズに応える内科や外科その他の科の総合力が強みです。内科では循環器内科のカテーテル治療や、消化器内科の内視鏡治療などの専門領域にも力を入れています。

また整形外科では、安佐地区で唯一の“日本手外科学会認定研修病院”として手外科の専門医による高度な治療を行っており、遠方からも患者さんにご来院いただいています。同科の得意分野は、手や(ひじ)などの上肢疾患やリウマチに関する治療、顕微鏡を用いた高度な微小外科手術、大腿骨(だいたいこつ)近位部骨折の手術などが挙げられます。

さらに当院は、安佐南区で小児が入院できる唯一の病棟を備え、感染症治療を中心とした小児医療を行っています。

当院は災害医療に注力しており、病床200床に満たない規模の病院にもかかわらず、2018年にDMAT指定医療機関、続く2019年には災害拠点病院に指定されました。積極的に災害医療に取り組んでいる理由は、当院が数々の事故や自然災害を体験してきたからです。

たとえば、1991年に広島市安佐南区で起きたアストラムライン(新交通システム)建設現場の橋げた落下事故では、地域の病院として負傷者を受け入れました。また、2014年に同区で発生した豪雨による土砂災害では、当院の半地下部分が浸水し、多くの医療機器が水没する事態となりました。

こうした経験から当院は改めて災害対策への認識を強め、2016年の熊本地震、2018年の西日本豪雨、2024年の能登半島地震などにJMAT(日本医師会災害医療チーム)も派遣し、被災地での医療活動を支援しています。

また、コロナ禍で中断していた院内大規模災害訓練を2023年に再開し、非常事態に備えて負傷者の受け入れ体制を強化しています。当院は比較的小規模な災害拠点病院ですので、今後は外部のDMAT(災害派遣医療チーム)の協力も得ながら、傷病者を適切な医療機関に転院搬送できるようにしていきたいと思います。

当院は、安佐地域の二次救急を支えており、2023年度には1,723台の救急車を受け入れました。また、地域の二次救急医療機関が当番制で救急患者を受け入れる“病院群輪番制”にも参画し、より広範な地域医療にも貢献しています。

さらに当院は救急医療の拠点として、一次救急から三次救急までの橋渡し役も担っています。一次救急については一般社団法人安佐医師会 可部夜間急病センターと連携して夜間帯の急患に対応し、重症患者などの三次救急については市内の基幹病院と連携し、速やかに搬送しています。

今後も地域医療ネットワークを生かし、地域全体としての救急医療をさらに盤石な体制にしていきたいと考えています。

当院は健診センターを設置し、生活習慣病がんなどの検診によって予防医療を推進しています。健診を受診される方は年々増えているため、同センターの拡充を視野に入れて健診事業に注力していく方針です。また、当院では医療福祉相談室を設置し、社会福祉士の資格をもつ医療ソーシャルワーカーが中心となって、患者さんやそのご家族のさまざまなお悩みに応じています。

近年は高齢化に伴い、複数の疾患をもつ患者さんが増えました。そこで当院では、受診する診療科を迷っている患者さんに対して、総合診療科の医師が親身にサポートしています。医療に求められる役割は時代とともに変化し、現代では患者さんの生活面や精神面を踏まえた全人的な医療が必要とされています。今こそ、当院が培ってきた〝総合力”の真価が問われています。

これからも当院は、職員一人ひとりが真摯に患者さんと向き合い、質の高い医療を提供できるように精一杯取り組んで参ります。

*病床数や診療科、医師、提供している医療の内容等についての情報は全て2024年10月時点のものです。

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