院長インタビュー

那覇市の中心で地域に根ざし、災害救護で世界を飛び回る沖縄赤十字病院

那覇市の中心で地域に根ざし、災害救護で世界を飛び回る沖縄赤十字病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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沖縄県那覇市与儀地区にある沖縄赤十字病院は、がん診療や周産期医療に注力しながら70年以上にわたって地域の医療を支えています。

移転リニューアルなどを経ながら、赤十字病院としての使命を貫き通す同院の特長について、院長の赤嶺 盛和(あかみね もりかず)先生にお話を伺いました。

先方提供
病院外観(沖縄赤十字病院提供)

当院のルーツである厚生協会診療所は、戦後間もない沖縄県で貧困者や被災者の支援に努めた琉球臨時厚生協会により1952年に開設されました。同協会は、太平洋戦争によってやむなく活動を停止した日本赤十字社沖縄支部に代わり、米国統治下の沖縄県で発足した民間団体です。

当院はその後、1959年の財団法人 沖縄赤十字社の設立とともに沖縄赤十字病院に改称し、二度にわたる移転リニューアルを経て、2010年に現在地の那覇市与儀地区で再スタートを切りました。

新病院は、地域災害拠点病院またDMAT指定病院としての役割を果たすため耐震性を強化しており、1階の外来部門では災害時に救護対応を行えるスペースを確保しています。また、病棟の向かいにある与儀公園をドクターヘリが離発着できるように整備して、幅広く救急医療に対応できるよう努めています。

今後は、県内唯一のてんかん支援拠点病院のような当院独自の役割を担いつつ、強みである周産期医療やがん診療でさらに地域医療に貢献していきたいと考えています。急性期医療においては、2018年に日本心血管インターベンション治療学会研修関連施設に認定されており、引き続き心筋梗塞(しんきんこうそく)をはじめとする緊急性の高い循環器疾患などに幅広く対応していきます。

また、当院は地域医療支援病院としての役割も担っているため、那覇市の中心部という立地を生かして近隣の医療機関との連携を図りながら、地域完結型の医療体制を目指しています。

当院は、地域周産期母子医療センターとして、NICU(新生児集中治療室)、GCU(新生児回復室)などの充実した医療設備を整え、小児科と連携した新生児の集中治療やハイリスクな分娩などに対応しています。

たとえば産婦人科では、通常の分娩管理に加えて、切迫流産や高齢妊娠のほか、妊娠糖尿病などの合併症をもつ妊婦さんの妊娠、双胎妊娠など、リスクの高い妊娠も受け入れ可能です。また胎児発育不全前置胎盤などにも対応しています。

日々の看護では、出産直後にお母さんが赤ちゃんを抱いてスキンシップをとる“カンガルーケア”、母乳育児の推進、退院支援などを行っており、赤ちゃんとご家族に寄り添った診療を心がけています。

先方提供
病室の一例(沖縄赤十字病院提供)

現在の病院へ移転する際に放射線治療装置を更新したほか、無菌治療室や外来化学治療室などを整備し、さまざまながん診療を行える体制を整えました。治療においてはできる限り低侵襲(ていしんしゅう)(からだへの負担が少ない)な方法を採用しており、薬物治療、放射線治療、腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)などを積極的に行っています。

また当院は2018年に緩和病棟を開設し、高齢化社会に伴ってますます必要とされる緩和ケアに注力しています。高齢者医療については、整形外科での骨粗しょう症への対応も強化しており、ご高齢の方々が自分らしく元気に生活できるように支援しています。

当院の脳神経外科は、2009年に“てんかん成人外来”を開設し、外科手術やビデオ脳波検査を通じて沖縄県内のてんかん診療を引き受けてきました。その結果、2019年には県内唯一のてんかん支援拠点病院に指定され、現在も検査や診断から治療までワンストップのてんかん診療を行っています。

てんかんの治療は服薬による内科療法が中心ですが、効果が現れにくい場合や薬剤抵抗性難治てんかんなどの場合は手術を行うこともあります。当院は、年間10件ほどのペースで手術を行っており、着実に実績を積み重ねています。また、てんかんに関する相談対応や、病気を正しく理解してもらうための啓発活動なども積極的に行っています。

少子高齢化が進展するなかで、ますます医療人の人材確保や人材育成が重要になりつつあります。

当院は臨床研修指定病院として、プライマリ・ケアや救急疾患への対応を学べ、地域の医療機関と連携した“RyuMIC沖縄赤十字病院初期臨床研修プログラム”を採用しています。

同プログラムは、三次医療機関である琉球大学病院、地域の中核を担う二次医療機関の臨床研修病院、精神科を専門とする県立精和病院、安謝福祉複合施設の協力により、全ての研修医が一次医療から三次医療までの臨床能力を習得できることが特徴です。そのうえで、当院は前橋赤十字病院、熊本赤十字病院、鹿児島赤十字病院など県外の赤十字病院とも連携し、独自の研修プログラムを通じて赤十字社の活動をより深く理解していただけるよう努めています。

2025年度からは北海道の大自然を見渡せる清水赤十字病院との連携により、地方での臨床経験を研修プログラムに盛り込む計画を進めており、さらなる研修体制の拡充に取り組んでいます。

当院は、日本赤十字社の使命に基づき、数々の国際救援や災害救護に携わっています。

2024年1月の能登半島地震では、3個班の救護班と2個班の災害医療コーディネーターチームを派遣して現地での医療活動を支援しました。また国際救援については、これまで南スーダン共和国、アフガニスタンやイエメンなどに看護師を派遣した実績があります。

さらに当院では平時から定期的な災害訓練を怠らず、非常事態に備えて常に体制を整えています。

コロナ禍で休止していた毎年恒例の“赤十字フェスティバル”を2023年に再開しました。このイベントは、看護師体験などの職業紹介や血圧測定などの健康診断を通じて、赤十字社の活動を市民の方々に知っていただくことを目的としています。

たとえば赤十字ならではの内容として、日本赤十字社から認定を受けた看護師でなければ指導できない水上安全法や雪上安全法などの講習を行い、非常事態における救命処置の啓発に努めています。

MN

医療に求められる役割は多様化しており、これからの時代は病院が主体的に地域と関わっていくことが重要だと考えています。たとえば当院では、コロナ禍において地域に向けた勉強会を開催し、感染症に関する正しい専門知識を発信してきました。

その一方で、当院は質の高い医療を提供するため、働きやすく風通しのよい職場作りに努めています。私も週1回はさまざまな部門に足を運び、職員の声を拾い集めて現場にフィードバックしています。

現代は急速なスピードで変化していますが、当院は“赤十字の博愛の精神に基づき、いのち、健康、尊厳を守る”という理念に沿って、一貫した姿勢で質の高い医療の提供を目指します。これからも当院は、一人でも多くの患者さんを守れるように医療体制を拡充し、地域の皆さんが安心して暮らせるよう全力で医療活動に取り組んで参ります。

*診療科や医師、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年11月時点のものです。

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