静岡県富士市に所在する医療法人社団英志会 富士整形外科病院(以下、富士整形外科病院)は、身体活動に欠かせない骨や関節、靱帯、筋肉などといった運動器の治療や回復を専門としている病院で、急性期から回復期、慢性期、さらに在宅復帰まで、幅広いステージに対応しています。
そんな同院の特徴や強み、地域での取り組みなどについて、英志会理事長であり同院の院長を務める、渡邉 英一郎先生にお話を伺いました。
当院は1971年に、病床数36床の渡辺整形外科病院として開院しました。その後、1993年には渡辺病院へ改称し、2014年には新病院が完成。新病院の稼働開始に合わせて現在の名称である“富士整形外科病院”となりました。その間には地域の医療ニーズに応えるため、診療科の増科や設備の拡充を行い、さらに病床数を36床から43床・60床・90床と段階的に増床し、現在は開院当初の3倍近い106床を有しています(2024年11月現在)。
2022年には、かねてからの念願であった立体駐車場が完成しました。整形外科だけでなくリウマチ科や内科、リハビリテーション部なども擁する当院には、外来(リハビリテーション外来を含む)だけでも1日あたり300人前後の患者さんがいらっしゃいます。立体駐車場完成により、以前よりも駐車場の混雑緩和につながり、患者さんの負担も軽減できたのではないかと思います。
当院の特徴の1つとして挙げられるのが、チーム医療の推進です。一人の患者さんを主治医だけが担当するのではなく、診療科や部門の垣根を超えた“横の連携”を生かし、病院全体で患者さんを診るという多職種連携による診療を行っております。
また、外傷などの救急の患者さんも受け入れているというのも、当院の大きな特徴といえるでしょう。当院は急性期から回復期、慢性期、さらに在宅復帰支援まで担っているケアミックス病院であり、何より“迅速な処置を必要とする救急外傷患者さんも受け入れてこその地域医療貢献”と考えています。そんな当院の救急対応へのニーズは少しずつ高まっており、数年前からは救急搬送数が年200件を超え、2023年度は当院としては過去最多となる258件の救急搬送を受け入れました。
整形外科という診療科の守備範囲は、どの診療科よりも広いといわれています。だからこそ同じ整形外科医といっても、やはり分野によって得手不得手があります。そうした状況を踏まえ当院は“患者さんによりよい医療を提供するには、整形外科分野をより細分化して、それぞれ専門的な対応をする必要がある”と考えました。
かねてよりリハビリテーション部やリウマチ科、麻酔科*などとの強固な連携を生かした診療を行ってきましたが、それに加えて整形外科内に脊椎センター・足の外科センター・スポーツ整形外科<野球・スポーツ外来>を開設し、よりきめ細かく専門的・先進的な診療を行える体制を整えています。
*麻酔科標榜医……井出壮一郎先生(2024年11月現在)
当院は2024年より、再生医療の1つである“PRP療法*”を導入しました。PRP療法は、患者さん自身の血液を使い、血小板に含まれる成長因子などによる炎症抑止作用や組織の再⽣促進作用を利用して、痛みの緩和や関節機能の改善を図るという治療法です。患者さん自身の血液成分を使うので拒否反応が起こりにくく、スポーツをする学生さんたちにも適用可能です。
他にも当院では、患者さん自身から採取した少量の軟骨細胞を培養し、それを軟骨の欠損部位に移植する自家培養軟骨細胞移植術や、より正確かつ安全性の高い人工関節置換術をするための手術用ナビゲーションシステム支援下手術、骨粗しょう症患者さんの転倒や二次骨折予防のための骨粗鬆症リエゾンサービスなど、患者さんのためになる治療の導入やサービスの拡大を続けています。
*PRP療法……保険適用外の治療であり、自費診療となります。費用/2種(関節)55,000円(税込)、3種(腱筋靭帯) 35,000円(税込)(※大学生までは30,000円(税込))治療効果には個人差があります。
当院は、日本整形外科学会認定医制度による研修施設認定や日本リウマチ学会教育施設認定だけでなく、千葉大学整形外科専門研修プログラムの専門研修連携施設や、北里大学整形外科専門研修プログラムの連携施設認定も受けています。
当院が所在する富士保健医療圏(富士医療圏)は、静岡県にある8つの医療圏の中でも特に医師不足が深刻な医療圏の1つですが、当院はこうしたつながりを生かして複数の大学などから医師の派遣を受けられることも大きな強みとなっています。
当院のリハビリテーション部は、同じ富士市にある中島産婦人科医院と連携しており、出産前後における運動や腰痛に対する知識習得および健康維持・腰痛予防などを目的とした骨盤ケア教室を実施しています。
骨盤ケア教室には理学療法士や作業療法士、看護師など専門的な知識を持ったスタッフが赴き、骨盤ケアの指導をじっくり丁寧に行っています。
当院の野球・スポーツ外来を担当している木島 丈博医師は、2010年から富士市・富士宮市の小学生野球チームを対象とした野球肘検診を行っております。
さらに2022年からは、静岡県出身のプロ野球選手などを講師として招く富士野球教室も開催しています。2023年に開催した第2回富士野球教室の様子は、当院のYouTubeチャンネルにてダイジェストをご覧いただけます。
*YouTubeチャンネルはこちらから
富士山を仰ぐこの富士市で生まれた私は、病院共々、この地で育てられました。富士圏域内外の医師会をはじめとする多くの先生方や、先代より引き続きご支援いただいております。地域の皆々さまとのきずな、それらが私にとってのこの上ない財産です。
医療の世界は進化を続けており、中でもとりわけ、この四半世紀における整形外科分野の手術治療法などの進化はめざましいものがあります。当院も基本はしっかり守りながら、新しい知見、新しい治療法も前向きに取り入れ、常に進化する医療を追い続けていく所存です。
また、当院は以前よりチームワークを生かした多職種連携で“それぞれが自分の力を存分に発揮し、ひとりの患者さんを皆でサポートする”ということを得意としておりますが、今後は地域医療機関との、さらなる連携強化も目指してまいります。“お互い協力して助け合いながら、当院が強みとする分野をしっかり担う”という形でより良い地域医療の実現に貢献することは、これまで長らく当院を支えてくださった地域の皆さんに対しての恩返しにもつながると考えております。
これからも皆さまとの対話を大切にして、時代に即した医療体制を構築し、地域医療のフロントランナーであるよう走り続ける所存ですので、どうぞ今後とも変わらぬご高配を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
*診療科や医師、提供している医療の内容および病床数などの数字に関する情報は全て、2024年11月時点のものです。