患者さんの高齢化に合わせて低侵襲な手術を積極的に提案する－東戸塚記念病院の取り組み

神奈川県横浜市戸塚区にある東戸塚記念病院は、1988年の開院以来、地域の中核病院として地域医療を支えています。急性期病院の同院は、かかりつけ医の役割を備えるのと同時に、大規模病院に行かなくても完結できる医療を目指しています。各専門医と医療スタッフのチーム医療で、常に高いレベルの医療を提供するため、努力を惜しまない同院の役割や今後について、院長の山崎 謙(やまざき けん)先生に伺いました。

当院はJR東戸塚駅東口に近接しており、東戸塚地域の発展と共に成長してきました。東戸塚の特徴は、環境が良く利便性に恵まれているため、若者からご高齢の方までたくさんの方が集まり、暮らしていることです。そのような中で当院は地域の中核的な病院として、24時間体制で救急医療を担い、地域医療を支えています。

当院が開設したのは1988年です。当時標榜していたのは内科・外科・整形外科・脳神経外科で、病床数は292床でした。1年後には救急指定病院の認定を受け、その後2003年に透析センター、2018年にHCU病棟と、リハビリテーション室・透析センターが入るC棟を新設、2022年には地域包括ケア病棟を開設するなど、診療体制の充実を図ってきました。現在の病床数は304床です。

脳神経外科の体制強化で救急搬送がさらに増加

救急では地域の二次救急（入院や手術を要する重症患者への救急医療）を担っており、24時間体制で年間約9,000件の搬送を受け入れています。当院だけでは対応が難しい三次救急（生命に関わる重症患者に対応する救急医療）が必要な患者さんについては、初期診断・初期治療を行い、救命救急センターなどへ速やかに搬送する体制を整えています。

また、近年は脳神経外科の診療体制を充実させ、一歩踏み込んだ緊急対応ができるようにしました。特に当院では外傷で搬送される患者さんが多いため、整形外科と脳神経外科が連携して治療に当たれる当院は地域の救急医療に貢献していると自負しています。

内科系の診療体制が充実しているのが強み

患者さんを数多く診ている診療科の１つが内科です。なかでも消化器内科は、夜間も医師が待機して消化器の出血などに24時間体制で対応しています。経験と知識が豊富な消化器内視鏡専門医が在籍しており、内視鏡を用いてポリープや早期がんを切除する治療を積極的に行っているため、外科手術に比べて入院日数が短く、体への負担も少なくてすみます。また、呼吸器、腎臓、肝臓、糖尿病、神経内科の専門医も在籍しており、様々な内科疾患にきめ細やかに対応できます。循環器内科では心臓カテーテル手術に力を入れ、より専門性の高い治療も可能になっています。

整形外科では低侵襲の手術を心がける

最近は高齢化が進んでいることもあり、骨粗しょう症を原因とする脊椎圧迫骨折の患者さんが増えました。そのような患者さんには、骨折した部位に針を刺して風船を膨らませ、骨セメントを注入して固定する“経皮的椎体形成術（BKP）”を行っています。入院期間が短くて傷も小さいことから、患者さんの負担が軽減されるかと思います。

そのほかでは骨盤骨折も増加傾向にあります。昔は交通事故による骨盤骨折が多かったのですが、最近は高齢者の方が転倒して受診されることが増えました。骨盤骨折はかなりの痛みを伴い、手術となると多くの出血が見られることがあります。高齢者の方には負担が大きいことから、当院ではナビゲーションシステムを使い、小さな手術創でスクリューを用い固定する手術を行っています。このように、患者さんの高齢化に合わせて、体への負担が少ない低侵襲の手術を積極的に行っているのが当院の特徴です。

骨折する前に治療をはじめることが大切

当院では骨粗しょう症予防の取り組みを強化しております。X線を用いて骨密度を計測するデキサ（DEXA）法という検査があるのですが、多くの方に検査を受けていただけるよう、初回ワンコイン（500円）で計測できる“骨ドック”をご用意しており、当院でいつでも受けていただけます。また、不定期ではありますが近隣の商業施設において健康フェスタを開催しており、超音波を用いた骨粗しょう症の計測を無料で実施することもあります。毎回好評で、開催のたびに多くの方にご利用いただきました。骨折が起きてしまう前に治療することが理想的です。神奈川は骨密度の検査の受診率が低いように感じていますので、こうした取り組みを通して、地域の皆さんの健康に貢献できるとうれしいですね。

山崎謙先生からのメッセージ

整形外科医の1人として多くの患者さんを診療していると、最近は元気な高齢者の方が増えたと実感しています。90代の方を手術するケースも増え、術後も元気に過ごしていただいている方は少なくありません。その一方で、患者さんの年齢が高いと、ご本人やご家族の方が手術や治療をあきらめてしまうケースが見受けられます。そのような方には、ぜひ積極的に治療を受けていただきたいと思います。特に最近は患者さんの体への負担が少ない手術が増えましたので、術後の生活がかなり改善されるはずです。

また、当院は患者さんに関わる全ての人（ご家族、医師や看護師など病院のスタッフも）が満足できる医療を目指しています。そのためには、当院の職員からも信頼される病院でありたいと考えており、その思いは当院の理念である“全職員に信頼される医療の実践と、地域住民に必要とされる病院”にも反映しました。

ご病気のことでお悩みのことがあれば、まずは気軽に当院に相談していただければ幸いです。