院長インタビュー

患者さんの権利や尊厳を守り、患者さんとともにチーム医療を実践する――昭和医科大学横浜市北部病院

患者さんの権利や尊厳を守り、患者さんとともにチーム医療を実践する――昭和医科大学横浜市北部病院
メディカルノート編集部  [取材]

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横浜市都筑区にある昭和医科大学横浜市北部病院は、横浜市北部エリアの急性期医療において中心的な役割を担っています。2001年の開院以来、時代の変化に合わせるようにして現在も診療体制の充実に努めているといいます。

そんな同院が担う役割や今後の展望について、病院長である坂下 暁子(さかした あきこ)先生にお話を伺いました。

当院は2001年の開設以来、横浜北部医療圏における急性期医療を担っております。二次救急拠点病院として24時間体制の診療を行いながら、時代の変化や地域の医療ニーズに合わせて常に進化を続けてまいりました。

病院がある都筑区にはファミリー世帯がたくさんお住まいになっていて、横浜市18区の中でも“若い街”といえます。そうした地域の特性に合わせて“こどもセンター”や“マタニティハウス”を設置するとともに、がん治療や精神科医療などにおいても地域の中心的な役割を担っています。

当院では開院当初からセンター方式を採用しており、1人の患者さんに対して内科と外科双方のアプローチによる適切な治療をご提供しています。たとえば、呼吸器センターでは、肺がん患者さんに手術が適応となるか、抗がん剤による治療を選択するのかなど、医師を中心にした多職種で検討して適切な治療につなげています。

このほか診療科と病棟が一体となった緩和ケアセンター、認知症患者さん用の病棟を有するメンタルケアセンターなど10あまりのセンター機能のうち、地域の中で大きな役割を担っているのが“こどもセンター”です。

小児内科、小児外科、NICU(新生児集中治療室)などを専門にする30名以上の医師で構成されるこどもセンターは、地域の拠点病院として24時間体制で救急患者さんを受け入れています。NICUには地域周産期母子医療センターとしての役割もあり、ハイリスク分娩に対応することに加えて、新生児科にて継続的なサポートを行っています。

当院は横浜市における“地域がん診療連携拠点病院”に指定されており、急性期医療、メンタルケア、緩和ケアなど一貫した医療を提供しています。消化器や泌尿器、呼吸器、婦人科の悪性腫瘍などに対しては、ロボット支援下手術など最新の治療を導入しているのはもちろん、終末期にある患者さんの“その人らしい生き方”をサポートできる点に強みがあります。当院には各分野の専門家がそろっておりますので、個々の患者さんに適した治療やケアをご提案することが可能です。

たとえば、患者さんが退院後の生活に困ることがないように、入院中に栄養指導や、嚥下(えんげ)機能の改善をサポートしたりしています。また、医療の窓口となる総合サポートセンターでは、がん患者さんを含めた全ての患者さんやご家族に向けて、退院後の住まいの調整のお手伝いなど、さまざまな支援を行っています。

当院は横浜市の二次救急拠点病院として24時間365日体制で診療を行っており、心肺停止やショック状態にある患者さんなどを積極的に受け入れています。小児・成人にかかわらず“断らない救急”をモットーにしており、救急搬送される方の中には市内の施設で暮らす高齢患者さんも少なくありません。

救急車で運ばれて来る患者さんに対応するほか、地域のクリニックからの紹介患者さんを積極的に受け入れていることも特徴です。かかりつけの先生方が「何かおかしい」「今すぐ検査すべき」とお考えになるときは、救急搬送にも増して緊急度が高いケースが少なくありません。このため当院では、かかりつけの先生からの電話を担当科の医師につなぎ、医師同士が話し合って治療の道筋をつけるDr to Dr(ドクター・トゥ・ドクター)システムを構築しました。

救急搬送と同様にDr to Drにおいても“絶対に断らない”を目標に掲げており、月に190件前後のご相談のうち9割を超える患者さんを受け入れています。今後は、地域のかかりつけの先生方だけでなく、訪問診療に従事されている先生方とも連携を図り、日常的な体調不良はかかりつけ医のもとで行い、専門的な医療が必要になった場合は当院にご相談いただく“2人主治医制”を推進していきたいと考えています。

子育て世代が多く暮らす都筑区にある当院では、開院当初より“お産”を大切に考えてきました。西棟にあるマタニティハウス(産科病棟)では、助産師を中心にしたチームで妊婦健診、出産、産後の育児相談などに対応し、お母さんと赤ちゃんの健康を支えています。

また当院では、今のように出生前診断が一般的ではなかった頃から、この分野に積極的に取り組んでまいりました。当院では単に診断をつけるだけでなく、赤ちゃんを迎えるご家族に向けたカウンセリングやアフターフォローを大切にしており、2020年4月に開設した臨床遺伝・ゲノム医療センターは、“先天性疾患を持って生まれた赤ちゃんを切れ目なくサポートしたい”との考えのもとに誕生いたしました。臨床遺伝・ゲノム医療センターでは、小児科医、産婦人科医、腫瘍内科医、カウンセラー、コーディネーター、薬剤師などがチームとなり診療を行っています。

当院ではかねてより多職種によるチーム医療を実践しており、がん診療における実績が認められて2024年5月には横浜市乳がん連携病院の指定を受けました。当院の乳腺外科では、乳腺外科、形成外科、がん薬物療法、放射線治療、など各分野を専門にする医師、看護師、薬剤師などがチームとなって乳がん患者さんの治療にあたっています。

一般に、乳がんの5~10%は遺伝によるものとされています。当院には臨床遺伝・ゲノム医療センターがあり、適切な検査や診断を行うのはもちろん、カウンセラーが患者さんに寄り添いながら診療を進めています。

また、遺伝性乳がんの1つであるHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)の場合には、ご希望があれば予防的に卵管卵巣摘出を行うこともできます。当院では、乳がん手術、乳房再建術、卵管卵巣摘出術を1日のうちに実施することも可能となっています。これは、設備や体制の整った当院ならではの強みと言えるでしょう。

人生100年時代、特に女性は年齢を重ねてもお元気な方がたくさんいらっしゃいます。一方で加齢による筋力の衰えは避けられず、骨盤底筋の筋力低下によって子宮脱や膀胱脱などに悩まされる方も少なくありません。

当院の女性骨盤底センターは、女性の皆さんの“おしもの不具合”に対応する部門です。子宮脱や膀胱脱などの骨盤臓器脱、尿漏れなどに対して、手術をはじめ、骨盤底筋体操やペッサリー(腟内装具)療法など患者さんに合わせた治療をご提案させていただきます。おしもの不具合は直接命に関わることはありませんが、患者さんのQOL(生活の質)に大きな影響を及ぼします。「何科を受診したらよいかしら」とお困りのときは、ぜひお気軽にご相談ください。

当院は内科と外科が一体となって診療を行うセンター方式を採用しており、医師をはじめとした多職種によるチーム医療を実践し、1日に1,000人超*の患者さんが外来にお越しになります。

現在日本では、行政主導のもと“医師の働き方改革”が推進されています。患者さんからは「待ち時間が長い」などお叱りを受けることもございますが、病気に関わることは診療時間内にご相談いただくこと、時により担当医師が変更になることをご了承いただければ幸いです。

私たちが実践するチーム医療には、患者さんの存在が欠かせません。当院としても、より質の高い医療を効率的に提供するべく取り組んでまいりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

*1日平均患者数(2023年度実績)……外来:1,140.1人

*診療科、医師、提供している医療の内容および医師数など本文中の数字は全て2024年11月時点のものです。

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