医療法人札幌ハートセンター札幌心臓血管クリニックは、北海道全域から心臓や血管の病気がある患者さんを受け入れている病院です。
同院は循環器領域に特化した施設として、救急搬送や地域医療機関からの紹介患者さんをなるべく断らず受け入れ、専門的な治療を提供しています。また同院は、既存の循環器治療だけでなく、新たな治療選択肢の導入にも目を向けています。
「患者さんを断らない」という開院以来の理念を受け継ぎながら、多職種連携による自律的な組織づくりにも力を注いでいる同院の医療の特徴、そして今後の展望について、2025年に院長へ就任した八戸 大輔先生に伺いました。
私たちの病院は、2008年に藤田 勉(ふじた つとむ)理事長が札幌市東区で開業されたところから始まりました。開院当初から私たちが最も大切にしてきたのは、心臓血管治療における専門性を提供しつつ、地域にしっかりと根を張ることでした。
何よりも重んじているのは、患者さんを断らないことです。救急車であっても、他の医療機関からのご紹介であっても、私たちは基本的に全てを受け入れます。心臓の病は一刻を争うものが多いため、誰かが「最後の砦」として専門性の高い医療を提供しなければなりません。今では北海道内各地から患者さんが来られるようになりましたが、その期待に応え続けることが私たちの使命だと感じています。
当院の大きな特徴は、循環器の内科と外科がハートチームを結成し、密接に連携している点です。この連携によって、心臓弁膜症や大動脈疾患、不整脈、虚血性心疾患といった幅広い病態に対し、カテーテルを用いた体への負担が少ない治療から、緻密な技術を要する外科手術まで、患者さんごとに適した治療を提供できる環境を整えています。
当院がもう1つ大切にしている姿勢は、これまでの枠組みにとらわれず、新しい治療法を積極的に取り入れていくことです。たとえば再生医療の分野では、心筋シートを用いた治療の導入なども視野に入れています。患者さんにとってプラスになると判断した治療は柔軟に取り入れ、提供できる医療の選択肢をさらに広げていきたいと考えています。
心臓弁膜症は加齢に伴って増加する病気として知られており、北海道のような広い地域では、専門的な治療を受けられる施設への集約も重要になります。当院はそのような施設の1つとして新しい施設や設備、症例数のある医師をそろえ、患者さんに対応しています。
北海道全域からご紹介をいただくなかで感じるのは、1人として同じ状況の患者さんはいないということです。だからこそ、画一的な治療を押し付けるのではなく、多様な選択肢を提示できることが重要です。
その例として、ご高齢の方や体力の低下が心配される方の場合は、大動脈弁狭窄症であればカテーテルを使って弁を留置する“TAVI”、僧帽弁閉鎖不全症であれば“MitraClip”といった低侵襲(ていしんしゅう)(体への負担が少ない)な治療を提供しています。また、低侵襲心臓手術(MICS)においては、支援ロボット“ダヴィンチ”を使ったより安全性、正確性に配慮した手術も可能です。
当院では、こうした幅広い選択肢の中から「どの治療がその方の健やかな未来に繋がるのか」を、内科医と外科医が膝を突き合わせて真剣に議論し、患者さんにとって適切な治療をご提案しています。
私たちは治療の質を追求すると同時に、いかに患者さんに早く住み慣れた自宅へ戻っていただけるかという点も重視してきました。
現在はカテーテル治療の進歩などにより、入院日数の目安は4日未満ほどとなっています。これは単に退院を早めているわけではなく、体へのダメージを抑える治療を行うことで術後のリハビリテーションやサポートが早期から開始できている証といえるでしょう。
また、早期の回復を実現するためには、患者さんがどのような生活を望まれているのか、退院後の不安はないかといった細かな部分にまで気を配り、対応する必要があります。
当院では医師、看護師、診療看護師(NP)、薬剤師、理学療法士、栄養士、ソーシャルワーカーなどの多職種でチームを作って診させていただくことで、患者さんの希望に寄り添った、回復を早める医療を提供できていると自負しています。
当院は開院当初、19床というクリニックの規模でスタートしました。しかしその後、徐々に病床数が増えるにつれ、医師の仕事もどんどん増えていき、医師主導で判断することに限界が見えてきました。そこで私が院長に就任して進めたのが、先ほども述べた、多職種が連携して患者さんを管理する仕組みを導入することです。
この仕組みではスタッフ一人ひとりが指示を待つのではなく、自ら考えて動くことが求められます。また、ほかのスタッフとの連携も欠かせません。私自身は毎朝6時半から全患者さんのカルテのチェック・回診を行い、多職種によって構成されるチームで1日3回の回診やカンファレンスを行っています。こうした医師のみによる診療ではなく、多職種による連携によって医療の密度を上げることで、患者さんの小さな変化も見逃さず、迅速な対応が可能になると考えています。
さらには、現場の声を拾い上げるために、30ほどのワーキンググループも新たに立ち上げました。院内には医療安全委員会などの組織もありますが、それとは別に設けたグループです。ここには若いスタッフも積極的に参加し、役職や年齢にとらわれない自由な意見が飛び交っています。実際、スタッフの食堂で提供している「100円サラダ」もここで上がった意見をもとにスタートした取り組みです。
こうした活気ある職場環境づくりが、結果として患者さんへのよりよいケアにつながっていけばよいと思っています。
私たちは、循環器の医療を行うためには、何よりも地域の先生方との連携が重要だと考えています。なぜなら、心臓の病気は素早い対応を求められるため、地域の医療機関や救急隊との連携が必須であり、術後の回復まで見据えた場合も、やはり地域の医療機関とのスムーズな連携が非常に大きな意味を持つからです。
そこで当院では専門的な治療を行えるリソースを集約し、患者さんが搬送された場合にすぐ対応できる仕組みを整える一方で、全道の各地域の先生方と密に連絡を取り合い、術後のフォローなどはそれぞれの地域で完結できるような顔の見える関係、ネットワークづくりに力を入れています。
また私たちは、地域の医師不足という課題に対しても、ドクターの派遣などを通じて貢献しています。このような連携は、今後の心臓の病気の治療においてますます重要になっていくはずです。
今後はより「集約化」と「役割分担」のバランスを研ぎ澄ませていき、地域の先生方が「困ったときはここに電話すればよい」と思ってくださるような、信頼されるパートナーになれるよう努力していく所存です。
当院は、心臓疾患における「最後の砦」としての役割を担っていると自負しております。治療選択に迷われている方、病状について不安を感じている方は、ためらわずに当院へご相談ください。450名の職員がそれぞれの専門性を結集し、組織の総力を挙げて対応にあたります。
また、地域の医療機関の先生方におかれましても、対応にお困りの症例などがございましたら、まずは当院へご連絡ください。どのような状況であっても、私たちから受け入れをお断りすることはまずありません。この北海道の地で皆さんと強固に連携し、よりよい循環器医療を提供していく所存です。
※本記事の情報は全て、2026年5月時点のものです。
医療法人 札幌ハートセンター 札幌心臓血管クリニック 院長
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