福岡市東区にある福岡和白病院は、24時間365日体制で救急患者を受け入れ、地域の急性期医療を担う医療機関です。同院はカマチグループ 社会医療法人財団池友会の一員として369床の病床を備え(2026年9月時点)、循環器や脳血管疾患、がんなど幅広い領域で診療を行っています。
2025年7月に同院の院長に就任された蒲池 浩文先生に、ご自身の歩みや病院の役割、力を入れている診療体制についてお話を伺いました。
私は北海道の函館出身ですが、父が九州出身で9代続く医師の家系です。父が開業医をしており、幼い頃から自然と医療の道を身近に感じて育ちました。学生時代に人工肝臓の講義を聞いて深い感銘を受けたことがきっかけとなって北海道大学の第一外科に入局し、そこから研究やアメリカへの留学、そして臨床現場での経験を重ね、肝胆膵外科の分野で専門性を深めてまいりました。
当グループは、私のいとこにあたる蒲池 眞澄先生が1974年に下関市で開院した下関カマチ医院の開院から始まります。少しずつ規模を広げていき、1987年に福岡市東区の和白に和白病院が開院、1998年には福岡和白病院へ改称し、2005年にはすぐ隣の現在の場所に新築移転しました。
私自身は北海道で医師としてのキャリアを重ねていましたが、以前から当院とのご縁があり、家庭の事情が落ち着いた4年ほど前に九州へ移り住んで着任したという経緯があります。
当院は福岡市の北東である東区にあります。東区は34万人ほどの人口を抱えており、隣接する新宮町などを含めると非常に大きな人口圏となります。福岡市の東部から北九州方面にお住まいの皆さんにいつでも診てもらえるという安心感を提供できるよう、日々の診療に向き合っているところです。
当院は地域の救急医療に力を入れているほか、循環器や脳血管疾患、がんなど幅広い領域で専門的な診療を行っています。その中でも特徴的な診療体制について、いくつかご紹介します。
当院が力を入れている分野の1つに心臓や脳血管に関する治療があり、循環器内科・心臓血管外科に脳神経外科、放射線科が加わった「心臓・脳・血管センター(HNVC)」を設置しています。ここは「頭から足の先まで」をモットーに、複数の診療科が1つのチームとなって全身の血管の病気を総合的に診断・治療することを目指すセンターで、循環器内科統括部長の有田 武史副院長にセンター長を務めていただいています。血管病変に対する外科手術治療は当然ですが、カテーテルを用いた心筋梗塞、下肢救済を目的とした末梢動脈閉塞への治療、心臓の弁置換や大動脈瘤へのステント治療をおこなっています。脳神経外科でも脳動脈瘤や頸動脈狭窄に対する血管内治療の多くに対応できる体制を整えています。また、このセンターには血管撮影装置を備えたハイブリッド手術室があり、血管内治療と手術を組み合わせた治療にも対応可能です。
当院は2021年に、質の高いがん治療を提供する「地域がん診療連携拠点病院」に指定されました。現在、手術、放射線治療、化学療法の3大療法による集学的な治療により、消化器や乳腺、呼吸器、婦人科など、幅広い領域でがんの診療を行っています。
また、高齢化とともに増えているがん診療へのニーズにお応えするため、2026年に手術室を6室に増設し、手術支援ロボット「ダヴィンチ」をXiとSPの2台体制に拡充いたしました。ロボット支援手術については今年(2026年)は年間200件に達する見込みであり、患者さんの体の負担を少しでも減らす手術治療の提供に努めています。現在、ロボット手術は泌尿器科、呼吸器外科、消化器外科、婦人科の領域で進めていますが、今後は肝胆膵の手術にも導入していきたいと考えています。
放射線治療に関しては、当院ではコンピュータ制御により腫瘍に放射線を集中して照射する強度変調放射線治療(IMRT)でのがん治療を行っているほか、脳腫瘍に対してガンマ線(放射線)を照射してナイフで切り取るような治療ができるガンマナイフを早期より導入し、聴神経腫瘍や脳血管の病気などの治療に活用しています。
地域社会の高齢化に伴い、当院ではさまざまな診療科で医療ニーズに合わせた取り組みを進めています。整形外科領域では人工関節手術などに力を入れており、2025年には人工関節置換術用の手術支援ロボット「Mako(メイコー)」を導入しています。
腎臓疾患、糖尿病治療の領域では2023年に人工透析センターを49床から57床に増床しました。また、単に透析の受け入れを広げるだけでなく、透析を受けるには至らない、まだ腎臓のはたらきを保っている保存期の段階からしっかり患者さんに介入することで、透析導入をできるだけ予防する取り組みにも力を入れているところです。
院長になってこの1年、あらためて実感しているのは、看護師や放射線技師、リハビリのセラピスト、検査技師、事務のスタッフなど、あらゆる職種のコメディカルスタッフが患者さんに向き合い、患者さんのために非常に良く働いていることです。また、こうした環境が医師本来の診療である医業に専念しやすい状況を作ってくれています。
こうしたコメディカルスタッフの支えがあるからこそ、地域から求められる「断らない救急」を目指すことができています。当院では年間6,000台規模の救急搬送を受け入れてまいりました(2023年1月から12月実績)。症例数も増加傾向にあり、どのような患者さんが来られても、スタッフ全員で協力して対応する姿勢が病院全体に根付いています。
診療のスピードにもこだわっており、可能な限り即日検査・即日結果説明を行うことを基本方針としています。検査のために数週間待ったり、結果を聞くために何度も足を運んでいただいたりすることは、患者さんにとって大きな不安や負担になります。迅速に診断をつけて早期に治療を開始し、手術までの待機期間もなるべく短縮することで、安心をお届けしたいと考えているのです。
医療機器への投資については、患者さんのためになると判断したものであれば、惜しまず取り入れるという方針をとっています。グループ全体の経営基盤が安定していることが、その背景にあります。もちろん、購入時の審査は決して緩くはなく、価格交渉なども含めてかなり厳格に行っています。それでも、患者さんの利益になるという位置づけが明確であれば、しっかりと投資される仕組みになっているのは、ありがたいことだと感じています。
当グループには創業以来、「手には技術、頭には知識、患者さまには愛を」という理念が受け継がれてきました。抽象的な言葉ではありますが、常に患者さんのために行動するという私たちの決意の表れだと捉えています。技術の研鑽は当然として、それ以前に礼節を重んじる文化を大切にしており、看護師をはじめとするコメディカルのスタッフにも、病院で働く一員としての心構えを教育を通じて伝えてきました。日々の診療の中で患者さんはもとより、スタッフへ間での態度も大切にし、ハラスメントにつながるような言動が起きないようにする姿勢を、これからも貫いていきたいと思っています。
我々は人口およそ34万人のこの地域で、救急のニーズにも、専門的な治療を必要とする患者さんのニーズにも応えられる存在でありたいと思っています。地域の医療を担う病院として、これからも住民の皆さんに頼っていただきたいという思いはもちろんありますが、私が最も伝えたいのは、高度で専門的な医療をここで受けられるということが、まだ十分に知られていないということです。
がんに対するロボット支援手術をはじめ、がんや循環器、脳血管の治療、整形外科の取り組みなど、当院にはお伝えしたような強みがあります。地域の皆さんが体調に不安を感じたとき、まず思い浮かべていただける病院になれるよう、これからも診療の質を高めながら、その姿を丁寧に伝えていきたいと思います。
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