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小児の先天性胆道拡張症――どのような症状が出る? 受診はいつすべき?

小児の先天性胆道拡張症――どのような症状が出る? 受診はいつすべき?
川嶋 寛 先生

埼玉県立小児医療センター 小児外科 科長

川嶋 寛 先生

目次
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先天性胆道拡張症(せんてんせいたんどうかくちょうしょう)は生まれつき胆管が大きく広がっている病気です。その症状の出方は非常に多彩で、腹痛や便の色の変化、食欲不振などの症状が現れることがありますが、こうした症状は一過性でほとんど心配のいらない場合も多いため、先天性胆道拡張症の可能性を疑うのは簡単ではありません。では、具体的にどのような症状が現れたら専門医への受診を検討すればよいのでしょうか。今回は、埼玉県立小児医療センター 小児外科 科長の川嶋 寛(かわしま ひろし)先生に、小児の先天性胆道拡張症の特徴と症状についてお話しいただきました。

先天性胆道拡張症は、肝臓(すいぞう)から十二指腸までをつなぐ胆管(たんかん)という管が拡張する病気です。ただし、単に胆管が拡張するだけの病気というわけではなく、根本的な原因には(すい)胆管合流異常症(たんかんごうりゅういじょうしょう)という形態異常が関係しています。

膵・胆管合流異常症とは、膵臓から十二指腸までをつなぐ膵管と、胆管の合流がうまくいっていない状態を指します。膵管と胆管は本来、十二指腸の壁で合流し、膵液と胆汁は十二指腸の中で混ざり合います。しかし、膵・胆管合流異常症の患者さんは膵管に胆管がくっついていたり、逆に胆管に膵管がくっついていたりするのです。このことが原因で膵液の胆管への逆流が起こり、膵液と胆汁が十二指腸よりも前で混ざり合ってしまうことによって胆管壁が障害され、結果として胆管が拡張します。

男女比については、女性(女の子)のほうが多いことが分かっています。また、先天性胆道拡張症を含めた胆管系の病気は、日本や中国、韓国、ベトナムなどのアジア圏に多くみられることも知られています。なぜアジア圏に多いのかまでは現在のところ明らかにされていませんが、さまざまな観点から調査研究が進んでいます。

現在、先天性胆道拡張症の正確な患者数は分かっていません。そのうえで、当院における年間診療数から埼玉県内全域の患者数を概算すると、埼玉県では年間約20人程度が発症しているのではないかと推察されます。

先天性胆道拡張症は、基本的に先述した膵・胆管合流異常症を伴います。しかし、一部の症例には“膵胆管高位合流”といって、膵・胆管合流異常症はあるが胆道の拡張がみられないというタイプがあることが確認されています。

膵胆管高位合流のタイプでは、MRIによるMRCPや内視鏡による胆管・膵管の造影検査(ERCP)にて調べると、ほとんど正常に近い形態(十二指腸壁)で胆管と膵管が合流していますが、わずかに十二指腸の壁からずれている、あるいは合流の形態が悪い状態になっています。なかには、オッディの括約筋(十二指腸下行部側にある開口部で、胆汁や膵液の排泄を調整する筋肉)の開閉によって膵液が胆管へ逆流するケースもあります。

ただし、小児の先天性胆道拡張症に関しては合流異常を伴うことがほとんどです。

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画像提供:PIXTA

一般的には下記の症状が現れます。

  • 繰り返す腹痛(微弱な腹痛から激痛まで幅広く症状が現れる)
  • 黄疸(おうだん)(皮膚や白目が黄色く変色すること)
  • 灰白色便(大便の色が真っ白になること)
  • 腹部腫瘤(ふくぶしゅりゅう)(拡張した胆管をお腹の外から触れる)

このうち、特に腹痛は多くの患者さんが自覚する症状の1つに挙げられます。さらに、膵液が逆流して膵管内のタンパク成分が濃くなることによってできる“タンパク栓”という物質が胆管や膵管を塞いでしまうと、胆管炎膵炎を引き起こし、非常に激しい腹痛が起こります。

また、乳児や幼児の場合、腹痛の症状を自分の言葉で訴えられないものの、なかなかミルクを飲まない、食欲が落ちているといった症状がみられる場合があります。このほか、先述した灰白色便や発熱などもみられます。こうした、いつもとは違う変化をお子さんに感じた場合は注意が必要です。

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なお、以前は腹痛、黄疸、腹部腫瘤が先天性胆道拡張症の3徴とされていましたが、実際にはこの3つの症状が全てそろうケースはあまり多くありません。

症状の出現時期はさまざまで一概に述べることはできません。近年では胎児診断が進歩し、出生前に先天性胆道拡張症が発見されることも増えてきましたが、生後にまったく症状が現れずミルクもきちんと飲み、便の色も正常で、膵炎・胆管炎などもみられないような患者さんもいらっしゃいます。成人期以降もほとんど無症状で過ごし、未診断のまま何年も経過しているという方もいると考えられています。そのような場合、腹部打撲などの何らかのきっかけで突然お腹が痛くなり、腹痛を繰り返しているうちに黄疸などの症状も出てきて、病院で詳しく検査を受けたところ先天性胆道拡張症が発覚することもあります。

このように、先天性胆道拡張症は症状の現れるタイミングや程度が非常に多彩なことが特徴で、何らかのきっかけで偶然先天性胆道拡張症が見つかるようなケースも珍しくありません。また、それゆえに病気の診断がなかなか難しいといえます。

腹痛は非常に一般的な症状であり、心配のいらない一過性のものから病気によるものまで原因は多岐にわたります。また、腹痛を“繰り返す”というのも先天性胆道拡張症の特徴の1つですが、同様に腹痛を繰り返す子どもの病気はほかにもあり、たとえば腸重積症虫垂炎などでも繰り返し腹痛が起こります。ですから、腹痛の症状のみで先天性胆道拡張症と診断されることはほとんどありません。基本的には、腹痛または上述した症状に加えて何らかの検査所見が認められる場合に、専門医を受診していただくことを推奨します。

近年は地域のクリニックでも超音波検査やCT検査を実施している施設がありますから、腹痛や黄疸などの症状がみられた際は、まずそうした施設で検査を受けてください。そして、肝臓や腹部に嚢胞(のうほう)が見つかった、先天性胆道拡張症の可能性があると言われたなどの場合に、先天性胆道拡張症の専門医を受診していただくとよいでしょう。

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    川嶋 寛 先生

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