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ロボット支援前立腺全摘除術とは? 国立国際医療研究センター病院における前立腺がんの治療

ロボット支援前立腺全摘除術とは? 国立国際医療研究センター病院における前立腺がんの治療
宮嵜 英世 先生

国立国際医療研究センター病院 病院長/泌尿器科 診療科長/第一泌尿器科 医長

宮嵜 英世 先生

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前立腺がんの手術では、手術支援ロボットが用いられることがあります。前立腺がんに対するロボット手術は2012年に保険適用となり、以降国内でも広く普及しています。

今回は、国立国際医療研究センター病院 病院長であり、泌尿器科診療科長の宮嵜 英世(みやざき ひでよ)先生に、ロボット支援前立腺全摘除術の特徴や術後の生活などについて聞くとともに、同院での前立腺がん治療の特徴についてもお話を伺いました。

ロボット支援手術とは、手術支援ロボットを用いた手術方法です。医師がロボットを遠隔操作し、手術を行います。当院では2016年から手術支援ロボット“ダヴィンチ”を使った前立腺がん手術を行っています。

手術は下腹部に6か所ほど8~12mmの小さな穴を開けて、そこから3Dカメラや鉗子(かんし)(手術器具)などがついたロボットのアームを挿入して行います。

ロボット手術には複数のメリットがありますが、まず出血が少ないという点が挙げられます。開腹手術と比べて小さな傷口で済むほか、二酸化炭素を用いてお腹を膨らませることで出血が抑えられます。二酸化炭素は処置のスペースを確保する目的で送りますが、そうするとお腹の中の気圧が高くなり、出血がしにくくなります。

また、細やかな操作ができるという点も特徴です。手術箇所をモニターで10倍ほど拡大して操作するため、肉眼では見えないような細かい血管や神経などを細部まで確認することができます。さらに、鉗子を装着するアームには関節があり、人間の手では不可能な角度で縫合が可能なほか、手ぶれ補正機能もあるため、より正確で精密な手術ができます。

ロボット手術に限って特に注意すべきデメリットはありませんが、手術時間などが術者の技量に左右される側面があります。合併症については通常の手術と同様、尿失禁や性機能障害が起こり得ます。特に勃起障害については、ほぼ確実に起こります。がんの状態に応じて勃起神経を温存することも可能ですが、精嚢を摘出しますので射精はできません。

術後の尿失禁についてもほとんどの方に起こるものの、徐々に回復していきます。手術から3か月が経つころには日常生活に支障がない程度に回復することが多いですが、年齢や術後に残った尿道の長さ、体形(高度肥満)などにより個人差があります。中には術後半年を過ぎても回復しないケースもあり、その場合には尿失禁に対する手術(人工尿道括約筋埋め込み術)を検討することもあります。

当院で前立腺がん手術を受ける場合、手術の前日に入院していただいています。手術では膀胱と尿道を縫いますので、それがつながるまで一時的に尿を通す管を入れます。管を抜くまでの期間については施設によって異なりますが、当院では術後4~7日後に抜去することが多いです。その後、1~2日ほど経過観察を行って、問題がなければ退院となります。

手術後、数週間で摘出した前立腺の病理検査*の結果が出ますので、まずはそのタイミングで一度来院いただきます。その後の通院頻度については、PSA値や尿失禁の程度などを考慮しながら決定していきます。1か月後に来院いただくこともあれば、2か月後とすることもあります。検査結果をみて経過が良好であれば、3か月後・6か月後と徐々に通院間隔は空けられます。そうして5年ほど経過観察をして、その間に再発がなければ“根治”と判断し、通院も不要です。

日常生活において基本的に食事や運動などの制限はありませんが、術後2週間程度はあまり重いものを持たないようにお話ししています。そのほか、当院では骨盤底筋体操というリハビリテーションを自宅で行っていただくようおすすめしています。お尻の穴を締めるような運動を繰り返して尿道周囲にある骨盤底筋を鍛えることで、尿失禁の改善を図ります。なお、この体操は術後からではなく手術が決定した時点から行うことを推奨しています。

*病理検査:採取した組織などを顕微鏡で観察し、がんなどの病態評価を行う検査。

がん以外の病気に関しても一貫して包括的な診療ができることが、当院の特徴です。当院は6つあるナショナルセンターの中で唯一の総合病院であり、43の診療科を備えています*。先に述べたとおり、前立腺がんは高齢の方に多い病気ですから、心臓や肺の病気、糖尿病など何らかの合併症がある方も多くいらっしゃいます。基礎疾患がある方の場合、治療の優先度を考慮しなければなりませんし、また病状によって前立腺がんの治療においても適した選択肢が異なります。

その点、多様な診療科を備える当院では、その病気の診療を専門とする医師の見解も踏まえて適切に診断・治療を行うことが可能です。がん以外の診療に関しても院内で基本的に完結できるのは、総合病院である当院ならではの強みです。

*2024年10月時点

医療は日々進歩しており、それは前立腺がん診療でも同様です。近年では、“MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法”という新たな生検方法が開発されています。この検査は、事前に撮影したMRI検査の画像と、超音波検査の画像を融合させて生検を行う方法です。これによって、がんが疑われる部分をより正確に狙って針を刺すことができるため、従来の生検よりも精度の高い検査が期待できます。もともと2016年に先進医療として承認された検査法で、2022年には保険適応となりました。当院でもMRI検査でがんが疑われる部位がある場合にはこの方法で検査を行っています。

ほかにも、前立腺がんの再発・転移を高精度で検出するPSMA-PETという検査方法も登場しています。この検査についてはまだ日本では研究段階ですが、いずれ普及が進めば再発の早期発見がかなえられ、前立腺がんの予後はさらに改善するのではないかと思います。

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