インタビュー

大動脈瘤の2つの手術。人工血管置換術とステント内挿術

大動脈瘤の2つの手術。人工血管置換術とステント内挿術
内田 孝之 先生

飯塚病院 循環器病センター長兼心臓血管外科 部長

内田 孝之 先生

この記事の最終更新は2016年01月07日です。

大動脈瘤の治療には、人工血管置換術とステント内挿術の二種類があります。どちらの治療法を行うかについては、動脈瘤ができた場所やタイプによって異なります。タイプ別に異なる大動脈瘤の治療法について、飯塚病院心臓血管外科部長の内田孝之先生にお話を伺いました。

動脈瘤は破れなければ放置していてもいいのですが、いったん破れて大出血を起こすと、おなかで3~4割、胸だと8割以上の患者さんが命を失います。今のところ、こぶの破裂を予防する薬やこぶの伸展を完全に予防する方法はありません。そのため、破裂のリスクが高い場合は破裂する前に治療を行う必要があるわけです。

大動脈瘤の治療には、人工血管置換術とステント内挿術の2種類があります。

人工血管置換術は、胸あるいはおなかを開けて、こぶのできた箇所の血管を人工の血管に置き換える手術です。一方、ステント内挿術は足の付け根あたりを3~4センチ切開して、カテーテル(細くてやわらかい管)内に収めたステントグラフト(金属のバネを取り付けた人工血管)を血管内に挿入し、病変部周辺に押し出して、ふくれた血管を内側から補強する治療法となります。

手術の目的は、第一に「こぶの破裂を防ぐこと」で、対象となるのは破裂の危険性がある方です。具体的にはこぶの大きさが55ミリ以上ある場合、あるいは極端にいびつな形状である場合、急速に拡大・変形している場合は手術の適応となります。近年は、体表面積(BSA)とこぶの大きさを二元的に計測して、破裂するリスクを評価することもあります。

《手術が必要な場合》

破裂の危険があり、なおかつ手術が可能な患者さん

《手術の適応》

胸部大動脈瘤では55ミリ以上

腹部大動脈瘤では50ミリ以上

※ただし、この数字は紡錘状の瘤の場合で、患者さんの状態、瘤の細かな性状、拡大速度によって判断が異なってきます。

このあたりまで説明をしてようやく患者さんはご自分の動脈瘤の状態を理解されますが、だからといって、すぐに手術をするわけではありません。治療を受けるにあたっては、手術によるリスクについても十分に理解してもらう必要があります。破裂するリスクはこぶの形で予測できますが、手術自体のリスクは患者さんひとりひとりによって異なるからです。

術前の検査としては、全身麻酔のリスク評価と動脈硬化で合併する病気の評価を行います。具体的には以下の内容について検査がなされます。

脳梗塞のリスク

心筋梗塞のリスク《虚血性心臓病》

③肺機能検査

最初の外来で患者さんに手術の希望を尋ねますが、多くの方はすぐに決断はされませんので、初日の受診日には術前の検査だけ行って帰られることが多いようです。

飯塚病院では、患者さんが2回目の外来を受診されたときに、開胸・腹手術とステント治療との違いについて詳しく説明します。どちらの治療を行うかは、以下の2点を中心に判断します。

①こぶの形がステントの治療に向いた形態であるかどうか

②患者さんの身体がどこまで手術の侵襲(体への負担)に耐えられるか

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