晩婚化で子どもを作ろうとする年齢が上昇したことや、不妊症に対する認知度が上がったことにより、不妊治療のために受診される患者さんは年々増えています。それに伴い、実際に不妊治療を受ける方も増加しています。
今回は、不妊症患者さんの増加原因や不妊治療の概要について、田園都市レディースクリニック理事長の河村寿宏先生にお話しいただきました。
近年、不妊症の患者さんが増加しています。その理由として、
といった意識の変化と知識の広がりが関係していると考えられています。
不妊治療を受ける方の増加の理由としては、晩婚化により子どもを作ろうとする年齢が上昇していることや、子宮内膜症等不妊になりやすい病気になる方が増えたことも大きいですが、それとともに、ここ数年で比較的早期に来院される患者さんが増えたと私は感じています。
以前は、不妊であり子どもができないということを、なかなか表に出すことができず、一人で悩みを抱え込む方が数多くいらしたのではないかと思います。しかし、マスメディア等でも不妊症を取り上げることが増えてきており、また著名人の方々が、不妊であることをオープンにすることも増えてきました。
これらの影響から、一般の方々にも「不妊という状況は決して珍しいことではない」という認識が芽生えたことも事実でしょう。さらに、保険適用にはなっていないものの、体外受精等の高度生殖医療(生殖補助医療)に対して公的な助成金制度が創設され、助成金交付の条件も患者さんがより治療を受けやすいように緩和されてきたことも理由と思われます。
最近では独自に不妊治療費用の援助をする企業も出てきています。このように、社会全体の中で不妊に対する意識が変化してきたことが、赤ちゃんができにくい方々が検査、治療のために受診する機会を増やしていると思います。
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不妊で病院を受診する患者さんが増加した背景として挙げられるもう1つの理由は、「加齢に伴い卵子の数は減少し、質が低下していく」という知識が広まったことです。以前まで日本では、避妊や性病についての知識は教えられてきましたが、加齢に伴い卵子が老化し、妊娠が困難になっていくという大切なことは一切教えられていませんでした。
しかし、数年前に放映されたTV番組で「卵子老化の現実」というテーマを取り扱われたところ、いろんなマスメディアでもこのことが取り上げられ、その知識が世間一般に広まる契機になったのだと思います。それ以降、30歳代後半から40歳代の方はもちろん、それ以前の年齢の方でも不妊を心配した場合は、早期に不妊の検査・治療を開始するようになったのではないでしょうか。
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不妊治療の種類は、
などの治療法があります。タイミング法は排卵日を推測し、タイミングを指導する治療法で、不妊治療のファーストステップです。そして、タイミング法ではうまくいかなかった患者さんや、高齢で妊娠を急がれる方の場合は人工授精や高度生殖医療(生殖補助医療)である体外受精、顕微授精、凍結胚移植を実施しています。
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以前まで、不妊の原因は女性側にあると考える方が多数でした。しかし、WHOの調査によると、女性のみに原因がある場合は41%、男性のみは24%、男女双方に原因があるのは24%ということが分かりました。
女性の主な不妊の原因は、
などが挙げられます。
男性不妊の主な原因は、
の3つです。また、喫煙や加齢も不妊に関係しています。
不妊症の治療――体外受精胚移植(IVF-ET)について詳しくはこちら
不妊治療を実施している方がどのくらいいらっしゃるのかというはっきりとしたデータはありません。しかし、治療周期数の増加などからみると、人数が増加していることは確かです。また、不妊を心配するカップルの割合や実際に不妊検査を受ける方の割合も増えているというデータもあります。
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不妊治療により妊娠する確率は、治療方法により異なり、1年以上自然妊娠に至らなかったカップルがタイミング法により妊娠する確率は毎月5%以下です。そして、人工授精では数%から10%ほどであり、高度生殖医療(生殖補助医療)により妊娠する確率は、34歳以下では約40%、40歳以上では20%から10%台となります。
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不妊治療で保険の適用となる治療はタイミング法です。その他の人工授精や高度生殖医療(生殖補助医療)は保険適用外となっています。
治療費の目安は以下のとおりです(税別)。
タイミング法…数千円~1万円台
人工授精…2〜3万円
体外受精胚移植…最低30~40万円(顕微授精や胚盤胞培養、胚凍結が加わると50~60万円以上)
同じ治療法であったとしても、施設により金額は異なるため、事前に確認することが重要です。
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日本産科婦人科学会の不妊(症)の定義を簡単にいうと、1年間妊娠することがなかった場合とされています。しかし、年齢とともに妊娠率は低下していくため、高年齢の方(女性の年齢が35歳以上)が妊娠・出産を望まれるのであれば、1年を待たずになるべく早い段階で始めることが重要です。
また、不妊治療の副作用・合併症の1つとして、多胎の頻度の増加が挙げられます。一般不妊治療では排卵誘発剤の使用により複数の卵子が排卵することで、多胎になる頻度が増加します。体外受精や顕微授精では、複数の胚を同時に子宮内に移植することが原因です。しかし、近年は、移植する胚を原則的に1個に制限する対策が取られているため、多胎の頻度は以前より大幅に低下しています。
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受付時間:月〜金:9:00〜18:00 、土:9:00〜17:00 、日:休診
田園都市レディースクリニックHP
田園都市レディースクリニック 理事長、田園都市レディースクリニック あざみ野本院 院長
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