ホルモンの影響で発症する子宮体がん。そのため、早い段階で卵巣、卵管、リンパ節などへ転移する恐れがあります。このような特性がある子宮体がんの治療選択肢にはどのようなものがあるのでしょうか。
今回は、国立国際医療研究センター病院 産婦人科において第二婦人科医長を務める冨尾 賢介先生に患者さんの負担が少ない手術をはじめとする子宮体がんの治療や早期発見についてお話を伺いました。
子宮体がんは、手術、化学療法、放射線治療の3つが治療選択肢となります。子宮体がんの場合、ステージIであってもステージIVの進行しているがんであっても切除できるものは手術で治療することが多いです。また、手術後に化学療法を行う場合もあります。
病気の進行度で治療方針はある程度決まっていますが、それに加えて、年齢や持病の有無、肥満などによっても、より適切な治療選択肢を考えることもあります。
近年若い方でも子宮体がんになる方が増加しています。若い方では、妊娠の可能性を残せるかどうかも問題になります。I期の初期の状態であれば化学療法によって妊孕性(妊娠するための力)の温存も治療選択肢の1つとして考えられますが、進行度のみで治療方針を決めることは難しいため、担当の医師に相談しながら治療方針を決めることが大切です。
子宮体がんの手術では、進行度に応じて子宮や卵巣、卵管、リンパ節の切除を行います。子宮体がんの手術では、卵巣を残すという選択肢がほとんどありません。なぜなら、子宮体がんはホルモンの影響で発症し、早い段階で卵巣へ転移している可能性もあるからです。
開腹手術では14~15cmほど切開する必要があります。しかし、腹腔鏡というカメラを用いる腹腔鏡下手術であれば、おへそ1か所とお腹3か所をそれぞれ1cm程度切開するのみで手術することが可能です。そのため、腹腔鏡下手術は術後の痛みを軽減することができ、早期回復が望める患者さんの負担が少ない治療といえます。
子宮体がんに対する腹腔鏡下手術の適応は、IA期の中でも悪性度の低いがんのみとなります。これらの腹腔鏡下手術の適応がある症例に関しては、腹腔鏡下手術の施行が普及しています。ただし、悪性度が高いがんの場合や、癒着が強いなどの事情があって安全に腹腔鏡下手術を行うことが難しい場合は、開腹手術がすすめられます。
手術で卵巣を切除したことによって更年期障害が起こる方がいらっしゃいます。手術後に更年期障害が起こらないよう、ホルモン補充療法というエストロゲンを補う治療を行う場合もあります。ただし、ホルモン補充療法が再発リスクにつながる可能性もあるため、ホルモン補充療法を行うかは全体的な病状などから慎重に判断することが大切です。
化学療法(抗がん剤治療)は、手術後の再発リスクを下げるため、あるいは再発した際の治療として行われます。術後の化学療法を実施するかは、病理検査の結果によって決定します。また、がんが進行した状態で見つかり、手術での摘出が困難な場合の治療としても行われます。
放射線治療も手術後の再発リスクを下げるため、あるいは再発した際の治療として行われます。術後の放射線治療を実施するかは、病理検査の結果によって決定します。また、持病などでほかの治療法が困難という理由から、放射線治療がすすめられる方もいます。
子宮体がんの検診は、子宮の出入口から細い棒状の器具を入れて、子宮体部をこすって採取した細胞を調べる検査です。子宮体がんの検診は医師が必要と認めた場合に、子宮頸がんの検診に加えて実施されます。子宮頸がんの検診よりも検査後にお腹の痛みを感じる方がいらっしゃるので、声をかけながら無理のない形で検査を行います。痛みを強く感じる方には、痛みの少ない経腟超音波検査を行うことも可能です。
不正性器出血がある場合には子宮体がんの可能性が考えられるため、早めに婦人科を受診ください。また、月経不順は子宮体がんになりやすい因子の1つであるため、月経不順をはじめとする月経異常などがある方も、早めに婦人科で診察を受けたり、必要な治療を行ったりすることをおすすめします。
子宮体がんのリスク因子には肥満や糖尿病が挙げられるため、生活習慣の改善も病気の予防につながります。日常診療においても、よりよい生活習慣に向けて具体的にアドバイスできればと考えています。そして、2年に1度の子宮頸がんの検診を受けていただく際に、子宮体がんについても遠慮なくご相談ください。必要に応じて、子宮体がんの検査や超音波検査について、ご案内したいと思います。
国立国際医療研究センター病院 第二婦人科 医長
冨尾 賢介 先生の所属医療機関
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