概要
小切開心臓手術とは、心臓の手術を行う際に傷口をできるだけ小さくし、身体への負担を最小限に抑えて行う手術方法です。
通常の心臓手術は、胸骨を縦に切開して胸部を大きく開いて行われます。このため、皮膚の切開は首元から上腹部まで20~30㎝に及びます。一方、小切開心臓手術は、肋骨と肋骨の間を5~10㎝ほど切開して行われるため、従来の心臓手術よりも体への負担がはるかに少なくなります。
現在では、病気の種類によっては小切開心臓手術を標準手術としている医療機関もあり、従来の開胸手術が難しい高齢者や、傷口を最小限に留めたいという方や女性などに積極的に取り入れられている治療です。
原因
従来の心臓手術は胸部の中心部にある胸骨を縦に切開して、胸腔を大きく切り開いて行われます。このような手術方法を「胸骨正中切開手術」と呼びますが、傷口は30㎝ほどにも及び、身体への負担が大きいばかりでなく、さまざまな合併症を引き起こす危険がありました。
しかし、小切開心臓手術は、傷口が小さく胸骨切開の必要がないため、術後の回復が早く、一か月ほどで社会復帰することも可能です。また、手術の傷跡が目立ちにくいため、若年者や女性にも好まれる治療方法なのです。
小切開心臓手術が行われる病気には以下のようなものが挙げられます。
僧帽弁閉鎖不全症
左心房と左心室の間にある僧帽弁がしっかりと閉鎖しなくなり、血液の逆流が生じる病気です。通常、肺静脈から心臓に戻った血液は左心房に流入し、左心室を通って全身に拍出されます。しかし、僧帽弁閉鎖不全症では左心室から左心房へ血液の逆流が生じるため、重症化すると心拍出量の低下による失神発作や狭心痛、心臓への過剰な負荷による心不全などの症状が見られるようになります。また、心房細動を起こしやすくなり、動悸などの症状を引き起こすだけでなく、心原性脳梗塞の原因になることも少なくありません。
これらの症状がある場合、根治的な治療は開閉機能のある新たな僧帽弁を形成したり、人工弁に置換したりすることであり、小切開心臓手術によって行われることがあります。
心房中隔欠損症
先天性心疾患の一つで、右心房と左心房を隔てる壁に穴が開いている病気です。多くは無症状で、成長と共に穴が自然にふさがる人もいます。
しかし、穴が大きい場合には左心房内の血液が右心房に流入するため、肺動脈に過剰な負荷がかかって肺高血圧を引き起こしたり、心拡大や心不全の原因になったりすることがあります。
心房中隔欠損症は、一般的にカテーテルを用いて欠損部を塞ぐ治療が行われますが、カテーテルの挿入が困難な場合何は、心臓小切開手術が行われることがあります。
心臓腫瘍
心臓にできる腫瘍ですが、良性腫瘍が7割を占めます。もっとも発生頻度が高い心臓腫瘍は粘液腫ですが、多くは左心房内に形成されます。
ほかにも多くの心臓腫瘍がありますが、発生した場所や大きさによっては小切開心臓手術で摘出されることがあります。
治療
小切開心臓手術では、右側胸部や乳房下縁のシワに合わせて肋骨と肋骨の間を5~10cm切開し、心臓に到達して手術操作が行われます。主に、僧帽弁形成術・置換術や心房中隔欠損閉鎖術、心臓腫瘍摘出術などの際に行われており、より良好な視野を得るために内視鏡を挿入して術野の観察を行うこともあります。
場合によっては、胸骨正中切開手術よりも良好な視野を確保することもでき、より複雑な弁形成術などを行うことができる可能性もあります。
症状
小切開心臓手術は、従来の胸骨正中切開手術よりも体への負担が少なくなったとはいえ、心臓に手術操作を加えるため、さまざまな合併症が生じるリスクもあります。
小切開心臓手術によって生じる合併症に以下のようなものがあります。
心臓破裂や出血
限られた視野の中で手術操作を行うため、血管や心臓を傷つけて心臓破裂や出血を引き起こすことがあります。出血量が多く、止血が困難な場合には緊急で胸骨正中切開手術に切り替えて処置を行う場合もあります。
心膜炎
心臓を包んでいる心膜に炎症を引き起こす病気です。手術中や術後の細菌感染によるものが多く、抗菌薬投与による治療が行われます。
長時間の人工心肺使用
弁形成術や人工弁置換術、心房中隔欠損閉鎖術などでは人工心肺を用いて心臓を一時的に止める必要があります。小切開心臓手術は視野が狭く、難易度の高い手技を必要とします。このため、手術時間が長くなりがちですが、人工心肺の使用時間が長くなると、腎機能障害や血球減少、電解質異常、低酸素脳症などを引き起こすことがあります。
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