心房中隔欠損症とは、生まれた時から心房中隔に欠損が見られる病気で、先天性心疾患の中では頻度の高い病気です。多くの場合、幼児・小児期は無症状のため検診などで発見されますが、適切に治療を行えば予後のよい病気といわれています。
今回は心房中隔欠損症の症状から検査・治療まで解説します。
心臓とは全身に血液を送るポンプのような役割を果たしています。この送り出された血液が全身を巡ることにより、生きるために必要な酸素や栄養が細胞に届けられます。心臓の中は4つの部屋に分かれていて、それらが協調して動くことにより肺・全身に血液を送ります。
心房中隔欠損症とは、その部屋の壁の一部が欠損してしまっている病気です。
この壁は肺から血液が戻る部屋と全身から血液が戻る部屋とを分ける壁です。そのため、ここに穴が開いていると本来全身に送るはずの血液が肺へ血液を送る部屋に流れ込み、負担がかかってしまいます。これにより走ると息切れがしたり、さらに重症化すると動悸や易疲労感(疲れやすい)などの症状が出現します。
心房中隔欠損症の多くは、幼児・小児期にはほとんど無症状ですが、場合によってはほかの子どもより小柄であったり、走ると息切れがしたりします。しかしながら欠損孔が大きい場合では、小児期から心不全症状が出現することもあります。乳児・幼児期に自然閉鎖することがあるため、重症例でない場合しばらく経過観察をすることがあります。
大きな欠損孔が自然閉鎖せず未治療のまま成人になると、ほとんどの場合症状が出現します。具体的には息切れや動悸、易疲労感などを自覚します。さらに病状が進行すると、不整脈や肺高血圧症、心臓弁膜症などを合併することがあります。女性の場合は妊娠や出産などのイベントがきっかけとなり発症する場合もあります。
心房中隔欠損症の多くは無症状のため、学校などでの健康診断の聴診や心臓検診の心電図などで異常を指摘されることにより見つかります。最終的には心臓超音波検査を行うことにより確定診断されます。
超音波検査とは体表から超音波を照射して体内部構造を画像化する検査方法です。体に大きな影響がないほか治療の必要性の有無が判断できるため、非常に有用な検査となっています。このほかにも、治療方針決定のためにCT・MRIや心臓カテーテル検査を行うこともあります。
心房中隔欠損症では自然閉鎖することもあるため、乳幼児期は経過観察します。欠損孔が閉鎖しない場合やそのほかの症状が見られる場合、欠損孔を閉鎖するために心房中隔欠損症閉鎖術が行われます。閉鎖術には外科的に開胸手術する方法と、カテーテルを用いて開胸せずに行う方法があります。これらは欠損孔の大きさや合併症を考慮して行われますが、基本的に閉鎖術の予後はよいとされています。カテーテル閉鎖術後は感染性心内膜炎に対する予防的抗菌薬や血栓形成予防のための抗血小板薬を一時的に服用する必要があります。
心房細動を発症した場合や肺高血圧症のある場合は内科治療が行われます。また動悸や息切れなどの心不全症状がある場合は利尿薬や強心薬を服用します。不整脈を合併する場合は抗不整脈薬のほか血栓形成予防のために抗凝固療法を行うこともあります。
心房中隔欠損症とは、生まれた時から心房中隔に欠損が見られる病気で、先天性心疾患の中では頻度の高い病気として知られています。幼児・小児期は無症状であるため検診で発見されることが多く、心臓超音波検査で確定診断されます。適切な治療を行えば予後は比較的よい病気であるため、検診で異常が指摘された場合は小児なら小児科、成人なら循環器内科を受診するとよいでしょう。
東京都立小児総合医療センター 循環器科 副院長
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