しんせいじけいれん

新生児けいれん

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概要

けいれんとは、脳神経において生じる突発的で過剰な電気活動から引き起こされる状態のことを指します。新生児けいれんとは、新生児期に発症するけいれんのことを指します。新生児期のなかでも生後1〜2日の間にみることが多く、正期産児に比べて早産児や低出生体重児において高頻度に認めると報告されています。
新生児けいれんは、中枢神経系の機能的もしくは器質的な異常に関連して発症することが多いです。原因によっては長期的な神経学的予後を悪くすることもありますので、迅速な鑑別と治療介入が必要とされます。
「けいれん」という言葉は付いていますが、一般に想像されるような全身性のけいれんを新生児けいれんの発作中に認めることはむしろまれです。発作のタイプとして、口をモゴモゴさせるような動作や自転車をこぐような動作が知られていますが、これらは健康な新生児でもみる動作です。見た目の動作のみから判断することは必ずしも容易ではなく、確実に診断するためにの最終的な診断は脳波を用いて行うことになります。新生児けいれんでは見た目上明らかなけいれんを起こしていなくとも脳細胞は過剰活動を行っており、「けいれん」という言葉から受ける誤解を避けるために「新生児発作」と呼ばれることもあります。
 

原因

けいれんは、中枢神経系の脳神経が突発的な異常活動を起こすことから引き起こされる状態です。新生児けいれんにおいて神経細胞が異常な活動をする原因として、頭蓋内病変に関連したもの(代表的には低酸素性虚血性脳症)、全身状態に関連したもの(代表的には低血糖)に分類することができます。
頭蓋内病変に関連したものの例として低酸素性虚血性脳症がありますが、これは新生児けいれんとして最も多い原因です。周産期に分娩異常があり、脳への酸素供給が充分なされない状況において発症します。新生児敗血症新生児髄膜炎といった感染症も新生児けいれんの原因となりえます。脳出血は特に低出生体重児において発症することが多いですが、新生児けいれんの原因となりえます。その他、低出生体重児や早産児は新生児期に低血圧を呈するリスクも高く、脳虚血から新生児けいれんを発症することもあります。その他、脳奇形といった先天的な構造異常、高ビリルビン血症と関連した核黄疸も新生児けいれんを引き起こすことがあります。
また、低血糖や電解質異常(低カルシウム血症、低マグネシウム血症、低ナトリウム血症高ナトリウム血症など)、代謝性疾患(アミノ酸代謝異常や尿素サイクル異常症など)などの全身状態に関連したものも新生児けいれんの原因となりえます。低血糖は、母体が糖尿病のときにお子さんが発症するリスクが高くなりますし、低出生体重児や早産児においても生じることが多いです。低出生体重児や早産児ではやはり低カルシウム血症のリスクが高いですし、基礎疾患としてDigeorge症候群といった病気の一症状であることもあります。
またなかには、良性家族性新生児けいれん(名前の通り家族歴があります)や、良性特発性新生児けいれん(生後5日目に発症することが多い「fifth day fits」)と呼ばれるけいれんもあります。

より詳しい情報は、記事①記事②記事③をご覧ください

症状

「けいれん」という言葉からは、たとえば熱性けいれんのときに見られるような全身性のぴくぴくした症状を想起しますが、新生児けいれんにおいては実際こうした明らかなけいれん症状をみることは必ずしも多くはありません。むしろ、一般的にはけいれんとは思えないような極小さな動作が実は発作の症状となっていることもあるため、注意が必要です。
具体的に新生児けいれんの発作時に見られる症状としては、ミルクを飲むときのようなモゴモゴとした口の運動、自転車のペダルをこぐような足の運動、一点を凝視するような様相などがあります。ただし、こうした症状は健康な新生児でもみることがあります。
また見た目には全くけいれんが起きていることが明らかなではなく、心拍数が早くなる遅くなる、呼吸が止まるなど自律神経に関連した症状を呈するだけのこともあります。
 

検査・診断

症状の項目で記載したように、見た目上だけでは新生児けいれんを診断することはできません。見た目には変化がなくとも、脳の神経細胞が異常活動をしていることがあります。そのため、脳波を用いて発作波を同定することが重要です。
新生児けいれんは、実際は産院やNICUに入院しているときに疑われることが多いです。現在では、持続的に脳波を記録して発作波の有無を確認する「amplitude-integrated EEG: aEEG」という検査が行われることもあります。この検査では脳波のみならず、心拍数や血液中の酸素濃度などを同時に記録することができ、より高い精度で新生児けいれんを同定することができます。
その他、新生児けいれんを引き起こしている原因を同定することも重要です。たとえば感染症が原因として疑われるときには、血液や髄液の培養検査などが行われます。また、頭蓋内出血が疑われるときには、超音波エコーやCTなどを用いて脳内の出血を確認します。低酸素性虚血性脳症では、MRIといった画像検査も有効です。低血糖や電解質異常、代謝異常は、血液検査や尿検査(一般的な糖、電解質の項目に加えて、アンモニアや血液ガス検査、乳酸、尿中アミノ酸分析など)にて確認・原疾患の検索を行います。
 

治療

新生児けいれんでは、けいれん発作を止めるための治療と、原因疾患に対しての治療の二つに大きく分けることができます。
けいれん発作に対してはフェノバルビタールという薬剤が第一選択になります。その他の選択については、けいれんの発作回数や持続時間などにもよります。使用される可能性があるものとしては、ジアゼパム、リドカイン、ミダゾラムなどがあります。けいれんに対しての薬剤や呼吸や血圧に悪影響を及ぼす可能性があるため、厳重なモニタリング下での使用が求められます。
新生児けいれんでは発作に対しての治療以外に、原因疾患に対しての治療も重要です。低酸素性虚血性脳症に伴うものであれば、人工呼吸管理や低体温療法が検討されることになります。細菌性の感染症が原因となっているときには、抗生物質を投与することになります。低血糖や低カルシム血症などがあれば、糖分の投与やグルコン酸カルシウムの投与などがそれぞれ行われます。新生児けいれんにおいては、ピリドキシンに関連してけいれんを起こしていることもあるため、ピリドキシンが投与されることもあります。
新生児けいれんの原因はさまざまであり、その予後も疾患に応じてさまざまです。けいれんが持続することの神経学的な悪影響は看過できるものではなく、迅速な対応が求められる状態であるといえます。
 

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