概要
汎血球減少症とは、血液中に存在する3種類の血液細胞(赤血球・白血球・血小板)が全て減少している状態を指します。最初は1~2種類の血球のみが減少していた場合でも、時間の経過とともに3種類が減少するようになり、最終的に汎血球減少症となることもあります。
汎血球減少症は複数の要因によって起こる可能性があり、また多様な症状が現れるため、原因を特定し適切な治療を行うことが重要です。
原因
汎血球減少症は、骨髄でうまく血球が作れなくなる、あるいは血球の消費・破壊が進むことによって起こります。これらは、病気や治療薬の影響、栄養素の不足など、さまざまな原因で生じ、中には複数が関連していることもあるため、原因の鑑別が重要です。
原因となる病気
- 血球の産生低下につながる病気:再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、急性白血病、悪性リンパ腫の骨髄浸潤、がんの骨転移、ビタミン欠乏症など
- 血球の消費・破壊亢進につながる病気:全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、肝硬変、特発性門脈圧亢進症、血球貪食症候群など
原因となる薬剤
特定の薬剤の使用によって、汎血球減少症が引き起こされる場合もあります。代表的な薬剤として、抗菌薬やNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)、向精神薬などが挙げられます。
栄養素の不足など
ビタミンB12、葉酸などが減少すると血球の産生低下につながるため、汎血球減少症を引き起こす要因になります。また、アルコールの飲み過ぎも血球の産生を低下させるため注意が必要です。
症状
赤血球・白血球・血小板が減少すると、さまざまな症状が現れます。
赤血球の減少によって起こる症状(貧血)
酸素を運ぶ役割を担う赤血球が減少すると、心臓や脳など全身が酸欠状態になります。そのため、めまいや頭痛、倦怠感、動悸などの症状が現れるようになります。
白血球の減少によって起こる症状
白血球は、体内に入り込んだウイルスなどから体を守る役割を担っています。そのため、白血球が減少すると感染症にかかりやすくなります。
血小板の減少によって起こる症状
出血を止めるはたらきを担う血小板が減少すると出血しやすくなります。そのため、内出血(あざ)、鼻血、月経過多などを起こしやすくなります。
検査・診断
基礎疾患や服用している薬を確認のうえ、以下の検査などを行って汎血球減少症を引き起こしている原因を明らかにします。
血液検査
血液検査で赤血球、白血球、血小板の数値に異常がないかを確認します。併せて、肝臓や脾臓などの臓器に問題がないかを調べます。
骨髄検査
必要に応じて骨髄検査を行います。骨髄検査では、腸骨から採取した骨髄組織を顕微鏡で観察し、がん細胞の有無や造血の状態などを確認します。
治療
汎血球減少症では原因に応じた治療を行います。
病気が原因の場合には、それぞれの病気に対する治療を行います。血液がんと再生不良性貧血では造血幹細胞移植が必要なケースもあります。
薬剤が原因の場合には、疑わしい薬剤を中止して血液細胞が回復するか慎重に観察します。
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