とくはつせいはいせんいしょう

特発性肺線維症

同義語
IPF
最終更新日:
2021年04月09日
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2021/04/09
更新しました
2017/04/25
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概要

特発性肺線維症(IPF)とは、間質性肺疾患(間質性肺炎)の一種で、進行性の肺線維症を引き起こす病気です。

間質性肺疾患は、肺の間質と呼ばれる部分に炎症が起こる病気の総称であり、その種類には大きく原因が特定できるものと原因不明のものに分けられます。原因不明のものを特発性間質性肺炎(IIPs)といい、この特発性間質性肺炎も病態に応じてさらに9種類に分類されますが、そのうちの約80~90%を特発性肺線維症が占めます。特に50歳以上の男性に多いといわれています。

肺は肺胞という小さな袋の集まりで、人は肺胞の壁を通して血液中に酸素を取り入れたり、二酸化炭素を取り出したりしています(ガス交換)。肺胞腔と肺胞上皮を実質、肺胞隔壁の部分を間質といい、何らかの原因によって間質に炎症や損傷が起こると間質が厚く硬くなります。

この厚く硬くなる状態を線維化と呼び、特発性肺線維症では通常ゆっくりと線維化が起こります。進行すると痰を伴わない乾いた咳や息切れなどの症状が出るようになり、ついには呼吸不全や右心不全などを起こします。特発性肺線維症は間質性肺疾患の中でも特に予後が悪く、診断後の生存期間は3~5年とされています。

原因

特発性肺線維症の原因はまだ完全に明らかになってはいませんが、肺胞上皮細胞(肺胞壁を構成する細胞)が何らかの原因によって損傷を繰り返すこと、肺胞上皮細胞が修復・治癒する過程で異常が生じることによるものと考えられており、肺胞上皮細胞のはたらきに関わる遺伝子の異常が疑われています。

また、発症者のほとんどが喫煙者であることから、危険因子として喫煙の関与が指摘されているほか、ウイルスなどによる感染や逆流性食道炎なども危険因子に挙げられています。

症状

初期には症状がない場合が多く、ある程度進行すると乾性咳嗽(かんせいがいそう)(痰を伴わない乾いた咳)や息切れが出るようになります。息切れについては主に階段の上り降りなどある程度の負荷がかかる運動を行ったときにみられますが、進行すると安静にしている状態でも息苦しくなります。また、一般的には肺活量が減少します。

進行するにつれて、ばち指(指の先が太鼓のバチのように太くなる)や、チアノーゼ(皮膚や爪の色が青紫色になる)が見られることもあります。

一般的に症状の進行は緩やかで、数か月から数年かけて悪化していきますが、風邪などをきっかけに急激に悪化する場合もあります。この状態を急性増悪といい、年間5~10%の患者に起こるといわれています。特発性肺線維症の平均余命は3~5年ですが、急性増悪が起こると平均余命は2か月以内と予後不良です。

検査・診断

問診と身体診察の後、胸部X線検査や胸部CT検査、呼吸機能検査、血液検査などを行います。特発性肺線維症では、聴診時にベルクロラ音(マジックテープをはがす時に出るような音)が80~90%以上の割合で聴取されます。また、胸部X線検査では網状影などの異常な影が見られ、胸部CT検査では線維化が進行すると蜂巣肺(ほうそうはい)(蜂の巣のような所見)を認めます。

このような所見を認め、明らかな原因がなく、かつ年齢が50歳以上である、発症が緩やかである、症状が発現してから3か月以上経過しているといった場合に、臨床的に特発性肺線維症と診断します。

診断が難しい場合には、肺に生理食塩水を注入して回収した液の成分を調べる気管支肺胞洗浄検査や、肺の一部の組織を取り出して顕微鏡で調べる肺生検を検討します。

治療

現在のところ特発性肺線維症に対する有効な治療法が乏しいため、進行を抑えることが治療目標となります。治療は主に薬物療法で進行を抑え、呼吸機能が大きく低下し、低酸素状態になる場合に在宅酸素療法を行います。

薬物療法

ある程度病状が経時的に進行する場合には、抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)を用いて治療を行うのが一般的です。抗線維化薬は、肺の線維化の進行を抑える効果や、肺活量の減少を抑える効果に加えて、急性増悪を抑制する効果も報告されています。ただし、効果には個人差があります。

ごく軽症で症状がない場合には、治療を行わずに数か月経過を観察することもあります。また、喫煙は病気を悪化させたり、発がん率が高くなったりする可能性があるため、病状にかかわらず禁煙が必要となります。

酸素療法・呼吸リハビリテーション

呼吸機能が低下して体内に十分な酸素を取り込めない場合に、酸素療法を行います。在宅中は酸素濃縮器や液体酸素タンクを使用し、外出時には小型の酸素ボンベから酸素を吸入します。必要に応じて、呼吸リハビリテーションを行うこともあります。

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