結核の検査には、全国的に有名なツベルクリン反応をはじめとして、さまざまな検査方法があります。しかし、今ではツベルクリン反応はあまり行われなくなりつつあり、他の有効な検査も出つつあります。結核を専門とする国立国際医療研究センターの高崎仁先生に結核の検査についてお聞きしました。
まず、結核の検査は「感染」と「発病」により異なります。感染と発病についてもう一度ここで抑えておきましょう。
結核菌はまず口から気管を通り、肺に侵入して定着します。この時点で「感染」が成立します。その後数ヶ月から数年の間に症状が出始めます。これを「発病」といいます。そして、この感染から発病までの期間が「潜伏期間」です。感染した後、実際に発病する患者さんは10%程度とそう多くはありません。一生症状が出ないケース(潜在性結核感染)が90%程度です。
以下に「感染」と「発病」を説明します。
身体の中に生きた状態の結核菌が定着しているものの、まだ発病していない状態です。正確には「潜在性結核感染」(せんざいせいけっかくかんせん)といいます。
結核菌が分裂・増殖して身体に変化が起き始めている状態のことをいいます。自覚症状がある場合もない場合もあります。
自覚症状がない場合とは、「少しずつ肺の組織が壊されてくるけれども、それに気付かない」という場合です。この場合、胸部レントゲン写真を撮ると結核が明らかになることがあるため、健診を受けることが大切です。そして、肺の破壊が進行してくると症状が出はじめます。咳が2週間以上続いて、なおかつ強くなる、熱が出るといった症状は、発病のサインでもあります
まずは「感染」の検査についてご説明します。先ほど述べたように、咳や痰・微熱などの症状がなくとも結核菌に感染している可能性はあるため、この場合は感染の検査を行うこととなります。症状が無く、感染している可能性が高い例には以下のような場合があります。
感染の検査として、以前はツベルクリン反応検査を行っていました。しかし、現在では主に、インターフェロンガンマ遊離試験(IGRA)という検査を行います。乳幼児に対しては実施できませんが、小学生以上はIGRAを行います。ツベルクリンをはるかに上回る感度であり、一回の血液検査ですむ簡便な検査です。
以下にそれぞれの検査を詳しく説明します。
IGRAは新しい検査ですが、今ではすっかり結核の検査の代表になりました(これは、「感染」用の血液検査です)。以下の2種類があります。
これらはどちらも結核菌に対する特異性が高い検査で、BCG(子どものときに接種する結核のワクチン)には反応しないことが特徴です(ツベルクリン反応ではBCGを接種していると反応してしまうことがあります)。また、特異性が高いということの意味は、「偽陽性が少ないため、この検査が陽性であれば結核に感染している可能性が高い」と理解してください。
ツベルクリン反応検査は古くからある検査です。これも「感染」をみるための検査です。
皮下に液体を注射し、その後に皮膚の反応を見ます。皮膚に発赤(ほっせき・赤くなること)や硬結(こうけつ・硬くなること)が現れるかどうかを目安にします。現在、日本では発赤や硬結の大きさを計測して、一番長い部分が10mm未満ならば陰性とし、10mm以上ならば陽性と判定しています。
陽性とは、結核菌に感染しているときやBCGを接種しているときです(このようにBCGに反応してしまうため、用いられなくなってきました)。陰性の場合は結核への免疫を持っていないか、そもそも免疫自体が弱っているときです。
※ツベルクリン反応検査が最近あまりされなくなったのは、1回皮下注射をしたあとに打った部分を48~72時間後に見なければならず、煩雑だからという理由もあります(IGRAは1回の血液検査で済みます)。また、皮膚の合併症が起きるときもあります。なお、感染の検査を自宅でできるキットはありません。
2週間以上続く咳など結核の可能性が高い方には、発病の有無の検査を行います。その場合には主に胸部レントゲン検査や胸部CT検査などの画像検査と、痰の中に結核菌がいないか痰を調べる喀痰検査(かくたんけんさ)を用いていきます。
画像検査では、結核菌により肺が壊されているかを診断します。一方で、喀痰検査では結核菌の存在を遺伝子レベルで分析したり、顕微鏡で観察することにより結核菌を排菌(他人に感染するような形で呼気から吐き出しているか)しているのかを判明させます。
「結核である」と最終的に確定診断するには、喀痰検査で結核菌の証明をしなければなりませんが、画像検査であまりに強く結核が疑われる場合には喀痰検査の結果を待たずに治療を開始することもあります。画像検査と喀痰検査を組み合わせながら診断し、治療をしていきます。
レントゲン検査と胸部CT検査があります。まず肺結核の「発病」が疑わしい場合にはレントゲン検査を行います。まずはレントゲン検査を行った後、そこで疑わしい影がある場合には胸部CTなどの精密検査を受けていただきます。
結核菌が存在していること、排菌していることを調べていくことが目的の検査です。具体的には、喀痰塗抹検査、抗酸菌培養検査、遺伝子検査などがあります。
結核または結核の仲間の菌(抗酸菌)を染色し、直接顕微鏡で観察する検査です。迅速性に優れています。染色には、特殊な抗酸菌染色である「チールニールセン染色」と「蛍光法」の2つが用いられます。
注意すべきなのは、これは抗酸菌を調べる検査であるということです。つまり、抗酸菌イコール結核菌ではないということになります。非結核性の抗酸菌症の場合も、この検査で引っかかります。それぞれ100種類以上あり、それを区別する方法が、③で紹介する遺伝子検査です。
抗酸菌培養検査は、培地で抗酸菌を培養し、菌がいるかどうかを確認する検査です。顕微鏡で見えないわずかな菌でも拾い上げることができます。ただし、結核菌以外の抗酸菌が出てしまうことがある点と、結核菌は増えるスピードが遅い点から、抗酸菌培養検査では数週間かかり迅速性がない点がデメリットです。
この検査では固形培地(小川培地といいます)と液体培地という2種類の培地で、陰性を確認するまで結核菌を培養します。陰性を確認(結核菌がいないことを確認)するためには、小川培地では8週間、液体培地を用いた場合でも6週間はかかります。
陽性は小川培地では4週間ほど、液体培地だと10日間ほどで検出することができます。また、1番感度がよいのが培養検査です。全てが陰性でも培養検査でのみ陽性になることがあります。
この検査の特徴は、結核菌であると確定診断ができることにあります(それ以外は抗酸菌を調べるだけの検査です)。また、検査の迅速性も特徴です。核酸増幅検査(PCR法)を用いて直接検体から菌の遺伝子を増幅させて、検出していきます。確定診断はできる一方で感度はあまり良くなく、結核菌を拾い上げられないことがあり点はデメリットです。
※健康診断におけるレントゲン検査と結核
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国立国際医療研究センター 呼吸器内科
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