
がんのために膀胱をすべて取り除く膀胱全摘除術を行うと、尿の排泄経路を変更するためボディ・イメージが大きく変わってしまいます。代用膀胱造設術は膀胱を取り除いた後、患者さん自身の腸の一部で新たに作った膀胱に置き換える手術です。これによって患者さんは術前と同じように自分で排尿することができます。済生会宇都宮病院泌尿器科主任診療科長の戸邉豊総先生は、スイス留学時にこの術式の考案者であるStuder教授の下で直接指導を受けて研鑽を積み、Studer式回腸代用膀胱造設術を導入しています。戸邉豊総先生に代用膀胱造設術のさまざまな利点についてお話をうかがいました。
代用膀胱は回腸(かいちょう・小腸の中で大腸につながる部分)の一部を使って作りますが、そのことによって腸の機能に問題は生じません。ただし、回腸を100cm以上使うと腸内におけるシュウ酸と結合すべきカルシウムが減るためシュウ酸の吸収量が増加して結石ができやすいというデータがあり、通常は50〜60cm弱程度を使います。新しく膀胱を作るという意味でネオブラダー(新膀胱)と呼ぶこともあります。
もちろんこの術式は簡単なものではありません。膀胱は作れてもうまく機能しない場合もあります。うまく尿をためることができずもれてしまったり、排尿ができないというということもありえます。
特に女性の場合は男性よりも尿道が短いため、問題なく排尿できるようにするには技術が必要です。もともと膀胱がんの患者さんが男性に多いということもあり、女性にはこの術式を行っている医療機関は少ないかもしれません。しかし、患者さんとしては審美的にも女性のほうがよりストマ(体外に設ける排出口)がないほうが望ましいので、我々は手術の適応があれば女性に対しても積極的に手術を行っています。
術後の検査では造影剤を入れて実際に排尿しているところを確認していますが、残尿なくきれいに排尿できています。腸で作った膀胱でも、術前とまったく同じように排尿ができるのです。
元からある膀胱を取った代わりに新しい膀胱に置き換えるわけですから、この術式は膀胱置換であるともいえます。これまでの回腸導管(かいちょうどうかん)ではストマを造設して尿をためる袋を常に体の外につけていなければならなかったため、患者さんも膀胱を取ることに抵抗がありました。
つまり、回腸導管による尿路の変更、ボディ・イメージの変化が受け入れられないため、本来であれば早いうちに膀胱を取るべきケースであるにもかかわらず手術をためらってしまい、その間にがんが進行してしまうことも少なからずあったのです。
しかし我々のデータでは、回腸導管の場合と比較しても、膀胱全摘除を行いネオブラダー(新膀胱)に置換したほうが術後の経過、つまり予後が良くなっています。これは膀胱を取るべき時期を逃してがんを取り遅れることがないためです。
今までの膀胱全摘除では、術後にボディ・イメージが変わってしまうだけでなく、男性の場合は膀胱の近くに勃起神経があるため、インポテンツ(勃起不全)になることがありました。しかし現在は状況に応じてその神経を温存しながら膀胱を取る術式も行っています。
膀胱を取ってしまっても自分で排尿ができ、セックスもできるとなれば、ほとんど手術前と変わらないということになります。ですから我々としては、膀胱全摘除を受け入れることができ、なおかつ手術の適応となる場合には代用膀胱造設術による膀胱置換をおすすめしています。
現在は術前に抗がん剤による化学療法を併用して、なるべくがんを小さくしてから取るということをしていますが、やはりデータから見ても根が深くならない早期のうちに膀胱を取るほうが予後はよく、がんの根が深くなればなるほど予後が悪くなるため、そうならないうちに手術をすることが大切です。
手術の適応となるのは、筋層浸潤(きんそうしんじゅん・粘膜に発生したがんが臓器の壁の奥深くにまで広がること)している膀胱がんですが、さらに進行すると今度は筋層を破って漿膜(しょうまく)に達しているかどうかというところによっても変わってくる部分があります。
他の施設では膀胱の温存を目的に抗がん剤の動注療法と放射線治療の組み合わせで治療を行っているところもありますが、その場合も手術の適応をかなり絞って行っているというのが実情です。膀胱を取りたくないという患者さんにはなんとか温存しようという流れもあるでしょうし、我々のように膀胱は取っても新しい膀胱に置換するというアプローチもあります。
まだiPS細胞をもってしても膀胱の再建ができるところまで進んではいませんから、実際には自分の臓器からそれを作って再建するというのが今、現実的にできる最新の治療なのではないかと考えています。
済生会宇都宮病院 泌尿器科 主任診療科長
周辺で膀胱がんの実績がある医師
独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター 泌尿器科 副医長
国立病院機構 東京医療センターー低侵襲な医療を患者さんに提供することで地域医療に貢献する
区西南部医療圏の医療を支える東京医療センターによる、前立腺がん・子宮体がん・胃がん.大腸がん・慢性中耳炎.真珠腫性中耳炎の治療をテーマにした特集です。
内科、アレルギー科、血液内科、リウマチ科、外科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、緩和ケア内科、腫瘍内科、感染症内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、膠原病内科、脳神経内科、放射線診断科、放射線治療科
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九段坂病院 泌尿器科 部長
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医療法人インテグレス 新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長
胃・大腸カメラを“眠ったまま”で、消化器と泌尿器の症状を幅広く診療
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再発リスクの評価
表在性膀胱癌の手術を6月に行い、単発抗がん剤注入を受けました。 その後、先9月の膀胱鏡検査では、再発をしていませんでした。 比較的簡易な処置で済む癌ですが、1年以内の再発率60%程度と高く、一度再発すると2度目は70%、3度目80%、とさらに上がるそうです。 よって近場の泌尿器科のクリニックでがん細胞診の尿検査を毎月受け、3ヶ月毎に膀胱鏡検査をすることにしています。 しかし、その確率の高さを考えると憂鬱です。先手を打ち再発リスクを下げる方法はないのでしょうか? また、よしんば再発が免れたとしても、いったいあと何年再発への注意をしなければいけないのか?見通しが欲しいです。
治療方法など
2018.6に非浸潤型膀胱がん発症、2ヶ所Ta、ローグレード 2019.5再発2ヶ所、2020.5再発2.5ヶ所手術は実施予定 (2018.11、2019.12は再発せず) いずれもTURBT手術を実施 手術後、抗がん剤注入せず 抗がん剤注入しないのは効果が変わらない 又同病院ではやっていない とのこと (病院は、がんを診察したクリニックからの紹介) 質問 1.抗がん剤の効果は無いのか 2.再発時の手術後、抗がん剤は注入しないのか 3.将来、BCG注入必要になった際、BCGは副作用があり、その代替で抗がん剤注入しないのか 4.転院しても抗がん剤注入した方が良いのか 5.転院は簡単に出来るのか 6.転院の手続きはどうするのか 7.BCG注入で萎縮の副作用があれば、膀胱を切除するしかないのか 以上
86歳、膀胱癌で手術後のBCG注入治療は必要か教えてください。
86歳で膀胱癌と診断され手術後BCG注入治療を勧められたのですが、介護施設の主治医に副作用が大変だから勧められないと言われ治療をお断りしたら再発・再発で1年間に3度の手術を受ける結果となりました。3月3日に手術をしましたのでまた1ヶ月後に治療を勧められると思います。癌は再発、転移するので治療が絶対必要だとおっしゃる先生と、高齢で進行がゆっくりなのに副作用が大変な治療をする必要はないとおっしゃる介護施設の主治医、知識や経験が全くない私はどちらを選択すれば良いのか悩んでおります。良きアドバイスをどうぞよろしくお願い致します。
膀胱がんでのBCGについて
来月からBCGを開始するのですが 1.BCGはやるべきか 2.一般に生じる副作用はどのようなものか 3.BCGは恐ろしい気がするのですが
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