だいどうみゃくべんへいさふぜんしょう

大動脈弁閉鎖不全症

最終更新日:
2024年10月30日
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2024/10/30
更新しました
2017/04/25
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概要

大動脈弁閉鎖不全症とは、心臓の出口にある大動脈弁がうまく閉じなくなることで、血流の逆流が起こり、呼吸困難などの心不全症状が現れる病気です。

心臓は常に血液を全身に送り出すポンプのはたらきをしています。心臓は右心室、右心房、左心室、左心房の4つの部屋に分けられており、心臓の下部にある心室は血液を肺や全身に送り出し、心臓の上部にある心房は肺や全身から戻ってきた血液を受け取る役割があります。この心房と心室の間には、大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁(さんせんべん)と呼ばれる4つの弁があり、それぞれが心拍に合わせて開いたり閉じたりすることで血液の逆流を防いでいます。

大動脈弁閉鎖不全症では、血液が左心室から全身に送り出されるときに通る大動脈弁がうまく閉じなくなることで、血液が逆流して心臓に戻るため、左心室の負担が増加します。進行すると心臓の機能が低下する心不全という状態になり、息切れや呼吸困難、動悸などの症状が現れるようになります。

治療では、原因や血液の逆流の程度、心機能に応じて飲み薬による薬物療法や大動脈弁を人工弁に置き換える手術などが行われます。

原因

原因は、大きく以下の2つに分けられます。

大動脈の異常

高血圧脂質異常症、加齢などにより、本来柔らかい血管が硬くなる(動脈硬化)ことで大動脈が広がります。大動脈弁は大動脈の入り口に位置しているため、大動脈が広がると、それに連動して大動脈弁を支える輪(弁輪)も広がってしまいます。その結果、弁の閉じ具合が悪くなり、血液が逆流しやすくなります。また、大動脈に炎症を起こす“高安動脈炎”や、大動脈に亀裂が入る“解離性大動脈瘤(かいりせいだいどうみゃくりゅう)”“急性大動脈解離”、生まれつき動脈の血管がもろいことが原因で大動脈が拡大する“マルファン症候群”、何らかの理由で大動脈弁の周りが拡大する“大動脈弁輪拡張症”によっても大動脈弁閉鎖不全症を引き起こすことがあります。

弁そのものの異常

動脈硬化や“感染性心内膜炎”、“リウマチ熱”などの病気によって大動脈弁が壊れることで発症します。また、本来は3つの弁からなる大動脈弁が2つしかない状態である“二尖弁”など、生まれつき大動脈弁に異常がある場合にも、大動脈弁閉鎖不全症になることがあります。

症状

発症初期は自覚症状がないことが多く、重症になるまであまり症状が現れないのが特徴です。

血液が逆流し続けると、心臓は正常な血液量を維持しようと余分に働くため、徐々に心臓が大きくなり心拡大を引き起こします。この心臓の拡大は、体が血液の逆流に適応しようとした結果生じたものですが、長期的には心機能の低下につながります。

心機能が低下すると、全身に十分な血液を送り出すことができなくなる心不全という状態になります。心不全になると、体を動かした際に呼吸が苦しくなったり息切れしやすくなったりするほか、咳が出るといった症状が生じます。さらに、重症になると不整脈を起こし、安静にしているときにも呼吸困難や息切れなどの症状が現れます。

重症化するまで自覚症状が現れにくいため、検診をきっかけにX線検査から心臓の拡大が発見されたり、心雑音から弁の逆流が発見されたりするケースもあります。

検査・診断

心臓のはたらきに異常がないかを含め全身の状態を確認するため、身体診察や心電図検査、X線検査、血液検査、CT検査、心エコー検査、経食道心臓エコー検査などが行われます。さらに、専用のカテーテル(医療用の細い管)を足の付け根などから挿入して、血液の逆流の程度やほかの病気の有無を調べる心臓カテーテル検査や、心臓に栄養を送る冠動脈に異常がないかなどを調べる冠動脈造影検査などを行うこともあります。

治療

大動脈弁閉鎖不全症では、症状の進行を抑える薬物療法や壊れた弁そのものを治す手術が行われます。

薬物療法

症状が軽く進行がゆっくりの場合には、心臓への負担を和らげるための薬物療法が考慮されます。

血圧が高いと血液の逆流量が増加して心不全への進行が速くなる可能性があります。そのため定期的に検査を行い、状態を確認しながら血圧を下げる薬(アンジオテンシン受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、カルシウム拮抗薬など)が使用されます。治療を行っても心不全への進行がみられる場合には、手術が検討されます。

手術

病状が進行して心不全の症状が生じている場合には手術を行います。また、感染性心内膜炎急性大動脈解離によって急激に状態が悪化した場合にも、早急に手術が行われます。

大動脈弁置換術

大動脈弁置換術は、正常にはたらかなくなった大動脈弁を人工弁に置き換える手術です。人工弁には金属を材料に作られた機械弁とウシやブタを材料に作られた生体弁の2種類があり、患者の年齢や状況によっていずれかが選択されます。

機械弁は生体弁よりも丈夫で長く使い続けることができますが、血栓(血の塊)ができやすいため、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を飲み続ける必要があります。一方で生体弁は機械弁よりも劣化しやすく再手術になることがありますが、長期にわたって薬を飲まなくてよいというメリットがあります。

また、大動脈にも異常がみられる場合には、大動脈の手術を同時に行うケースもあります。

大動脈弁形成術

大動脈弁に大きなダメージが生じていない場合には、大動脈弁を置き換えずに自分の弁を修復する大動脈弁形成術が行われる場合もあります。自分の弁を使用するため、抗凝固薬を飲む必要がなく大動脈弁の機能を正常に近い状態にまで回復させることができます。一方で、デメリットもあります。大動脈弁形成術は技術的に難しい手術であり、経験豊富な専門医のもとでの実施が必要です。また、すべての患者に適用できるわけではなく、弁のダメージが大きくない場合に限られます。修復がうまくいかない場合、大動脈弁置換術に切り替えることがあります。

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