東京都町田市にある多摩丘陵病院は、二次救急医療機関でありながら、かかりつけ医としても地域に親しまれている病院です。病気の治療だけでなく、いかにして元の生活に戻ってもらうかを考え、患者のADL(日常生活動作)向上に取り組む同院の地域での役割や今後について、医療法人社団幸隆会の理事長であり同院の院長でもある小澤 壯治先生にお話を伺いました。
多摩丘陵病院は、1982年(昭和57年)に内科、整形外科、眼科の個人病院として開院しました。その後、地域のニーズに合わせて診療科や病床数を増やし、2026年5月時点では診療科数14、病床数199床となっています。
2023年(令和5年)には、旧病院から歩いて5分の現在地に新病院を建築して移転。新病院では、急性期医療と地域包括ケアを集中して手がける体制としました。また、旧病院建物には回復期リハビリテーション病棟117床をそのまま残し、新たに多摩丘陵リハビリテーション病院として開院。2病院が密に連携して、地域の皆さまの健康をサポートしています。
さらには、移転と同時に、救急科を独立させて緊急時の受け入れ体制を強化しました。救急車の受け入れ件数も年間約3,000件超(2025年度実績)と、“断らない医療”の実現に向けて実績を挙げています。近隣には、三次救急医療機関の日本医科大学多摩永山病院や当院と同じ二次救急の多摩南部地域病院があるので、互いに連携をとって救急患者の迅速な受け入れを心がけています。
当院は里山の緑あふれる静かな環境にありますが、交通アクセスは決して悪くありません。京王線・小田急線の多摩センター駅から無料送迎バスで約10分程度、JR・小田急線の町田駅からは公共バスで約30分程度です。
当院を運営する医療法人社団 幸隆会は、「生きる力を支えあい、ぬくもりのある医療と看護を提供します」という理念を掲げて、地域医療に取り組んできました。私たちは、病気を治療するだけではなく、その方が退院後にどう生活していくかまで支えていくことが大切だと考えています。そのため当グループでは急性期医療からリハビリテーション、在宅支援までをグループ全体で連携しながら、地域の皆さんを支える体制づくりを進めており、当院のほかに多摩丘陵リハビリテーション病院、クリニックや訪問看護ステーションなどを運営しています。
2023年(令和5年)の新病院建設・移転に伴い、診療体制の見直しを行いました。眼科を除く外来は全て1階にまとめ、2~3階に病室と手術室、廊下でつながった別館にリハビリテーション室を配置するなど、機能を集約することで患者さんや病院スタッフの動線がスムーズになるようにしています。
また、旧病院建物をリハビリテーション専門の多摩丘陵リハビリテーション病院として新たに開院。これにより、新築移転した多摩丘陵病院は急性期の治療と地域包括ケアを集中的に行う体制にしました。
整形外科や脳血管疾患の患者さんについては、急性期の治療後、近くの多摩丘陵リハビリテーション病院を紹介しています。当院とリハビリテーション病院は経営母体が同じで、病院同士も徒歩約5分の距離にあるため、非常に連携がとりやすくなっています。
新病院での新しい取り組みとして、消化器内科と消化器外科が協力して治療にあたる消化器センターを設置しました。食道から大腸までの消化管疾患や、肝・胆・膵臓(すいぞう)疾患を専門とする医師が互いに協力し合って医療を提供しています。
特に力を入れているのはがんの早期診断と治療で、より患者さんへの負担が少ない内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)なども積極的に行っています。同時に、若手医師の勉強会やアカデミックなカンファレンスも開催しています。集学的治療への理解を深め経験を積んでもらうことで、次世代を担う医師の育成にも努めています。
さらに当院では、専門性の高い診療を必要とする患者さんに対応するため、各種専門外来も設けています。たとえば、食道・胃や胸やけなどの症状を専門的に診る「食道・胸やけ専門外来」、肝臓・胆道・膵臓の疾患に対応する「肝臓・胆道・すい臓専門外来」、大腸疾患を専門的に診療する「大腸・肛門専門外来」、乳がん検診や治療後フォローにも対応する「乳腺外来」などがあります。
さらに、高齢化に伴って相談が増えている認知症についても、「認知症・もの忘れ外来」を設置しました。患者さんご本人だけでなく、ご家族の不安にも寄り添いながら診療を行っており、地域の皆さまが早い段階で相談しやすい体制づくりを心がけています。
また当院では、病気を早い段階で見つけ、健康づくりにつなげていただくために、人間ドックや各種健診にも力を入れています。
当院の健康管理部では、一般的な人間ドックに加えて、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ検査)や動脈硬化検査、腫瘍マーカー検査、軽度認知障害(MCI)スクリーニング検査などを組み合わせたコースも用意しています*。
2025年には健康管理部のホームページもリニューアルし、検査内容やオプション検査をより分かりやすく確認できるようにしました。スマートフォンからも見やすい構成にしており、人間ドックや健診をより身近に感じていただけるよう工夫しています。
私は、検査を受けることは単に病気を探すためだけではなく、「自分の体に関心を持つきっかけ」になることが大切だと思っています。地域の皆さまが安心して生活を続けていくため、これからも予防医療に注力していきたいと考えています。
*上部消化管内視鏡検査(胃カメラ検査)(税込5,500円)、動脈硬化検査(税込4,400円)、腫瘍マーカー検査(1項目 税込3,300円)、軽度認知障害(MCI)スクリーニング検査(税込22,000円)は自費となります。
軽度認知障害(MCI)スクリーニング検査は1回のみで、アルツハイマー病のリスクである血管の老化や炎症に関与するたんぱく質を測定し、軽度認知症(MCI)のリスクを調べる検査。1回のみ。採血を行うため、まれにこれに関わる皮下血腫やアレルギー反応、神経損傷、血管迷走神経反射等が起こる場合があります。
一般的には、急性期の治療を終えて病状が安定した患者さんは、退院して自宅療養となります。しかし、引き続き経過観察が必要な患者さんや、復帰のための支援が必要な方は、2023年11月に開設した“地域包括ケア病棟”に入っていただいています。51床あるこの病棟では医師や看護師、社会福祉士・介護士・薬剤師・栄養士・リハビリスタッフが一丸となって診療、看護、リハビリテーションを行い、その後の退院支援や退院後のケアについても包括的にサポートを行っています。
さらに、2024年度から国が主導して始まった“地域包括医療病棟”も、当院は2024年6月に開設しました。この病棟は高齢者の急性期患者を主な対象とし、治療とともに早期の在宅復帰を目指し、退院に向けたリハビリテーションや栄養管理などの提供、退院に向けた支援、適切な意思決定支援、退院後の在宅医療を行う医療機関や介護事業所等との連携などを行うもので、当院では52床を用意しています。
また、当院は、患者さんが安心して入院できるよう、入退院支援部門も設けました。この部門では入退院に関するコントロールを行うとともに、患者さんが安心して入院し、また日常生活に戻るためサポートを行っています。場合によっては地域のクリニックや介護施設との連携も必要になるため、地域連携室も協力して患者さんに寄り添った支援を心がけています。
私たち医療法人社団 幸隆会は、「生きる力を支えあい、ぬくもりのある医療と看護を提供します」という理念を大切にしながら、地域医療に取り組んでいます。病気を治療するだけではなく、その方がその後どのような生活を送っていくのか、ご家族を含めてどう支えていくのかまで考えることが、地域医療には欠かせないと思っています。
その思いから、繰り返しとなりますが私たちは多摩丘陵病院、多摩丘陵リハビリテーション病院に加え、クリニックや訪問看護ステーションなど4つの施設が連携しています。外来診療、救急医療、リハビリテーション、在宅支援まで切れ目なくつながり、“1つのチーム”として患者さんを支えているのが私たちの特徴であり、地域の皆さまが安心して暮らし続けられる体制づくりに努めています。
こうした連携体制のなかで、当院は新病院への移転を機に二次救急医療機関として急性期医療を担い、一方でかかりつけ医として日常的な健康管理にも関わり、地域の皆さんを支えています。
また、当院に親しみを感じてもらいたい、病気への知識を深めてもらいたいという思いから、広報を専属で担当するスタッフを採用しました。ホームページや広報誌“たまきゅう便り”で当院の新たな取り組みを発信する、診療科ごとの三つ折りパンフレットを作成するといった活動を行っています。いざ困ったときにすぐ当院を思い出し、早期に訪れてもらうためには、病院の活動を発信していくことが大事だと考えています。
たまきゅう便りはこちらから。
https://www.tamakyuryo.or.jp/hospital/region-cooperation/tamakyu-dayori/
今後も”ぬくもりのある医療と看護”という理念を胸に、スタッフが一丸となってより質の高い医療サービスを提供していきたいと考えています。患者さんも、多摩丘陵病院ファミリーの一員といった気持ちで、いつでも気軽に訪れてください。
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。