院長インタビュー

先進医療・教育・研究を実践し、地域医療への貢献を目指す――弘前大学医学部附属病院

先進医療・教育・研究を実践し、地域医療への貢献を目指す――弘前大学医学部附属病院
袴田 健一 先生

弘前大学医学部附属病院 病院長

袴田 健一 先生

目次
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青森県西部に位置する弘前大学医学部附属病院は、開院から75年を迎える歴史ある病院です。医学部附属病院として時代に先駆けた取り組みを続けており、高度な医療技術を求めて多くの患者さんや医療者が病院を訪れています。

そんな同院が担う役割や今後の展望について、病院長である袴田 健一(はかまだ けんいち)先生にお話を伺いました。

先方提供
病院外観写真(弘前大学医学部附属病院ご提供)

当院は終戦間近の1945(昭和20)年に青森医学専門学校附属病院として設立されました。その後、青森空襲によって病院の建物が焼失したため青森市から弘前市へと移転し、1949(昭和24)年に現在の弘前大学医学部附属病院が誕生いたしました。

今日までの75年にわたる歴史の中で病院の規模は拡大の一途をたどり、内科、外科、歯科など幅広い診療を行うようになりました。現在は35の診療科と26の中央診療施設等が整備され、合計636の病床(一般病床・597床/精神病床・35床/感染症病床・4床)を備えて専門性の高い診療を行っています。

当院は命に関わる病気やけがの治療を担当する三次救急医療機関であり、県内では唯一、高度救命救急センターを有しています。青森県には複数の原子力施設があるため、原子力災害が生じた際に被ばく医療に従事することも当院の大事な役割となっています。

東日本大震災発生前の2010年に開設された高度救命救急センターは融雪・照明装置付きのヘリポートを備え、県内のみならず秋田県などからも重症患者さんを受け入れています。救急患者さんの受け入れ人数は年間6,500人前後*で推移し、青森県の救急医療の“最後の砦”として迅速・適切・高度な医療の提供に努めています。

*救急患者数……2021年度:6,502、2022年度:6,812、2023年度:6,584

弘前大学には新しいことに積極的にチャレンジする風土があります。現在の大腸がん検診で当たり前に行われている便潜血検査大腸内視鏡検査は、弘前大学の医師が検査方法の確立に尽力したと聞きます。

また当院の循環器内科は不整脈の治療に強みがあり、新しい治療技術を広めていく役割も担っています。これらのことは院長としても非常に誇らしいことです。

現在は患者さんの体への負担が少ない低侵襲(ていしんしゅう)手術が当たり前の時代になっていますが、当院ではロボット手術が保険適用になる以前からこの分野に積極的に取り組んでまいりました。消化器外科では大腸がんや膵がんのロボット手術を積極的に実施しており、高い専門性が求められるロボット手術を学ぼうと、他の医療機関から多くの医師が見学に訪れています。

医療ロボットは術後のリハビリテーションにも活用しており、術後の患者さんの社会復帰や競技復帰をサポートしています。また、当院の整形外科はスポーツ整形に強みがあり、女性アスリート外来なども開設しています。

一方で、県内のどこにお住まいであっても同じ治療を受けていただけるよう、医療格差をなくす取り組みも行っています。2021年には当院とむつ総合病院を高速通信回線で結び、遠隔ロボット手術の社会実証実験が行われました。今後も当院の高度な医療技術を提供することにより、広く社会に貢献してまいりたいと思います。

当院の小児科は血液腫瘍(しゅよう)に強みがあります。診療のみならず研究も盛んに行われており、各地にある大学病院と連携して専門性の高い診療を行っています。当院には腫瘍センターもございますので、高い診断能力を生かしてダウン症候群のお子さんの白血病治療などにも対応しています。

また神経科精神科ではお子さんの発達障害を中心に、精神科全般の診療を行っています。外来診療のみならず、病気の早期発見・早期介入につなげる取り組みにも力を入れており、地域社会と連携して新しい検診プログラムの作成を目指しています。

当院では2005年より岩木地区にお住まいの約1,000人を対象にした“岩木健康増進プロジェクト健診”を実施してまいりました。平均寿命が全国最下位の青森県の“短命県返上”を目指すこの健診では、一般的な内科健診に加えて体力・筋力、骨密度や神経系など3,000項目にも及ぶ詳細な検査を実施しています。

弘前大学・弘前市・青森県総合健診センターの連携のもと、これまで20年近くにわたって蓄積されたビッグデータは世界的にも類を見ない貴重なものであり、超高齢化社会における人々のQOL(生活の質)向上に大いに役立つことでしょう。2022年10月には文部科学省・国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の“共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)”の拠点に採択していただきました。現在では大学を中心に、大手企業や地元企業など約40社を巻き込んだ一大プロジェクトとなり、よりよく生きる“well-being地域社会モデル”の実現を目指して取り組みを続けています。

私は弘前大学医学部を卒業して医師になり、消化器外科を専門に経験を積みました。医学生だった頃から現在に至るまで弘前大学に携わってきた者として、新しいことに果敢にチャレンジし続ける姿勢を貫きつつ、当院をさらに発展させていくことが自身の使命だと考えています。

当院の役割は安全で質の高い高度医療を提供するとともに、優れた人材を育成し、医療技術の開発を推進することです。地域の皆さまに「弘前大学医学部附属病院にかかってよかった」と言っていただけるよう、職員一丸となって取り組んでまいりますので引き続きよろしくお願いいたします。

*病床数や診療科、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年9月時点のものです。

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