院長インタビュー

チャレンジ精神あふれ、地域の皆さんと共に発展を目指す常磐病院

チャレンジ精神あふれ、地域の皆さんと共に発展を目指す常磐病院
新村 浩明 先生

公益財団法人ときわ会 常磐病院 院長

新村 浩明 先生

目次
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公益財団法人ときわ会 常磐病院(以下、常磐病院)は、福島県いわき市において地域医療を担い、地域の皆さんの健康を支えています。2011年3月11日に東日本大震災が発生したときも、地域の皆さんに滞りなく医療を提供するために、スタッフが一丸となったことで苦境を乗り越えることができたと院長の新村(しんむら) 浩明(ひろあき)先生はおっしゃいます。

同院の強みや地域に密着した医療のあり方などについて、新村 浩明先生にお話を伺いました。

公益財団法人ときわ会 常磐病院(以下、常磐病院)は、福島県いわき市において地域医療を担い、地域の皆さんの健康を支えています。2011年3月11日に東日本大震災が発生したときも、地域の皆さんに滞りなく医療を提供するために、スタッフが一丸となったことで苦境を乗り越えることができたと院長の新村(しんむら) 浩明(ひろあき)先生はおっしゃいます。

同院の強みや地域に密着した医療のあり方などについて、新村 浩明先生にお話を伺いました。

先方提供
常磐病院 外観(常磐病院ご提供)

当院は、医療・介護・教育を通し、地域の皆さんに貢献することを目指す“ときわ会グループ”に属しています。ときわ会グループは、現在グループ会長を務める常盤 峻士(みちお)先生が、1982年3月にいわき泌尿器科を開院したことからスタートしました。2020年4月現在は、病院やクリニックをはじめ、介護老人保健施設、デイサービスセンター、幼稚園など、お子さんからご高齢の方までを対象に、さまざまな方面から支援する施設を運営しています。

当院は2010年4月、いわき市立常磐病院をときわ会の病院として民営化し、新たなスタートを切りました。

ときわ会の病院として、当院は2011年4月を目標に人工透析・PETセンターを増設し、新病院の開設を目指していました。しかし、3月11日に東日本大震災が起こりました。地震や津波、福島第一原発の爆発の被害によって、水やガソリンの供給、そして物流が止まってしまっただけでなく、病院に来ることが難しい職員もいるなかで、診療を継続することが厳しい状況となってしまいました。特に、週3回大量の水と電気を必要とする血液透析治療を維持することは困難を極めました。このとき、東京や千葉、新潟などの病院へ協力を仰ぐことによって、透析治療を受けていた患者さんの治療を続けてもらうことができました。

同年7月にグランドオープンを果たし、人工透析・PETセンターも新たに開設することができました。その結果、透析治療を提供できるようになりました。

常磐病院のスタッフたち
サーフィン部を設立し、職員とともにいわきの波を満喫(常磐病院ご提供)

東日本大震災の際に、何とか医療を提供し続けなければならない状況下で、当院の職員は“最善の策は何かを想像し、アクションする”という現場力を身につけることができました。当院で診療を再開できると分かったときの、職員たちの喜びは忘れられません。震災を乗り越え、地域で医療を提供できるという実感が湧き、病院全体が「やるしかない!」と一丸になったように思います。

泌尿器科では、尿路結石や前立腺肥大、腎不全など幅広い病気に対応しています。なかでも2012年8月に、前立腺がんに対するダヴィンチ手術を開始しました。この時点での手術支援ロボット“ダヴィンチ”導入は福島県内で初めてでしたが、常盤先生の「常磐病院の泌尿器科で、ダヴィンチ手術をどんどんやっていくぞ」という気持ちの表れが早期導入につながったと思っています。

ダヴィンチ手術は、開腹手術に比べて、切開創が小さく出血量が少ないため、痛みの少ない手術といえます。そのため、手術後の早期回復も可能になります。また、鮮明な立体画像で術野を見ることができ、安全面に配慮した手術にもつながります。

現在、泌尿器科では、ダヴィンチはほぼすべてのがんの手術で保険適用となっています。当院では積み重ねた症例数、経験をもとにこれからもより安全でより低侵襲(体に負担が少ない)な手術を行っていきます。

先ほどお話したように、当院は2011年7月に人工透析・PETセンターを開設いたしました。これを機に、東日本大震災後に他都県の病院に透析治療をお願いしていた慢性腎不全の患者さんに対して透析治療を行うことが可能となりました。透析治療とは、慢性腎不全で腎臓の機能が低下してしまったことによって体内に蓄積された老廃物を除去する治療です。透析治療には、血液透析と腹膜透析があり、患者さんの症状やライフスタイルに応じて治療方法を決定しています。加えて、当院では低下していた腎機能を回復させる治療である腎移植も実施しています。

いわき市内には乳腺外科を開設している病院が少なく、当院の役割が大きくなっています。当科を立ち上げ率いている尾崎章彦先生は年間100件前後の乳がん手術を行う等、精力的に診療を行うほか、乳がんについてのさまざまな情報発信もしています。また、当院の初期研修医の指導をおこなう臨床研修センター長もしており、若手医師の指導にも携わっています。

当院がときわ会の病院として開院した当初は、職員が十分にそろっている状況ではありませんでした。そのような環境のなかで、組織やチームワークのあるべき姿を作ることが大切だと感じ、組織作りに着手しました。

そのひとつとして、新人から指導者、責任者まで段階に応じた教育制度を整えました。また、研究を奨励することで、多職種の職員が積極的に学会発表や論文執筆などを行うことにつながっています。

当院はこれからも多様性を重視し、職員一人ひとりの知識や技術の向上、組織作りによって、よりよい医療の提供につなげてまいります。

当院では災害医療にも力を入れています。2023年7月には災害時派遣医療チーム“常磐病院DMAT”を院内に発足させ、2024年元旦に発生した能登地震では発災5日目に珠洲市に入り、現地の病院の支援や搬送支援を担当しました。また、私は別途“JMAT”(医師会による災害派遣医療チーム)で3月に金沢市へ行き、能登地方から避難された方の健康管理に当たりました。

DMATでは発足直後ということもあり、救急車が足りずワゴン車で珠洲市に駆けつけましたが、患者さんの搬送ではやはり救急車が必要です。そこでDMATで使える救急車の購入のためにクラウドファンディングで資金を募ったところ、目標金額を大きく超えるほどのご支援をいただき、ました。本当にありがとうございます。この場をお借りして感謝申し上げます。

毎週、地元のラジオ番組にも出演
毎週、地元のラジオ番組にも出演(常磐病院ご提供)

職員教育と同様に重視しているのが、広報活動です。院長の私自ら積極的に地域に入っていくことで、当院を地域の皆さんに知っていただこうと考え、地域の集いや講演会などに足を運びました。そのときに、どうしたら地域の皆さんに覚えていただけるかと考え、思い付いたのが“アロハシャツ”です。当院が位置する福島県いわき市にはスパリゾートハワイアンズがあるところから連想し、アロハシャツを毎日着ることを思い付きました。最初は、アロハシャツを着ている医師なんてよく分からないという扱いでしたが、フォーマルな会でスーツを着ている日には、「何で今日はアロハじゃないの」と聞かれるまでにイメージが浸透しました。こうした取り組みで着実に当院の認知度を高めることができたと実感しています。

このほかにも、Youtubeでの動画配信を行い、病院の魅力やチーム医療について発信しています。

常磐病院の認知度を上げるもう一つの戦略が仮装です。私がちょんまげを付けて訪問すると、患者さんに喜んでもらえるんです。これは、病院のメディア戦略としては有効だと実感し、コロナ禍以前はちょんまげ姿で往診をしていました。
私のちょんまげ姿は、当院の“多様性を大事にする”という信条を体現しています。2024年7月にはいわき市長といっしょにちょんまげ姿を披露します。これからも機会があればちょんまげで皆さんの前に現れたいと思っています。
また、地元のラジオ局、FMいわきでは毎週水曜に“ちょんまげ院長のFUNK LOVE”という番組をやらせていただいています。健康情報のほか、病院の職員の紹介などもしているのでぜひお聴きください。

我々は、2024年に異例のスピードでJ2リーグに昇格したいわきFCをチーム立ち上げから支援しています。さらには当院でスポーツ整形専門外来を診ている順天堂大学の膝関節診の准教授でありいわき市出身の齋田良知先生や整形外科の山本奈内子先生がいわきFCのチームドクターもしており、チームのJ1昇格に向けてこれからもさまざなサポートを行っていく予定です。

当院ではベトナム人看護師の養成に力を入れています。言葉の壁が理由で教育に時間がかかる場合もあるため、外国人スタッフの採用には難色を示す医療機関や企業もあると思います。しかし、ときわ会グループは多様性を大切にすることを信条に、出身地や国籍にとらわれず、力を合わせて発展していくということを重要視しています。当院もこの信条を踏襲し、病院作りに生かしてまいります。

また、当院は2022年から初期研修医の受け入れを行う基幹型臨床研修病院となり、フルマッチが続いています。文章では伝わりにくい当院の魅力を動画で紹介しているので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

若手医師の皆さんには、常にチャレンジ精神を持っていてほしいと願っています。そのチャレンジもなかなか答えがない、前例のないところを攻めることが必勝法になるでしょう。

たとえば、ちょんまげ姿の泌尿器科医は私しかいない、まさしくブルーオーシャンといえます。プレイヤーが多いところで一番になることも重要なことではありますが、パイオニア精神で未開拓の分野を攻めることも大切です。

また、若手医師のなかには、やはり地方へは行きたくないという方も多いように感じます。ただし、地方だからこそできることもありますし、やってできないことはありません。実績を積み重ねて経営者に認めてもらうことができれば現状や環境は変えることができます。たとえば最近、私は病院内でサーフィン部を立ち上げました。ほかにも釣り部、フラダンス部などのさまざなま部活が活動しており、「サーフィン部があるから常磐病院にきました」という人もいます。ぜひ当院でさまざまなチャレンジをしてください。

また、福利厚生を充実させ、医師も含めて医療の現場を支える職員全員が働きやすい環境作りに努めています。当院は、休暇や出産・子育て支援の制度を整え、若手医師の皆さんのチャレンジを応援しています。

ときわ会グループは、“一山一家”を理念として掲げ、医療・介護・教育を通じて、地域と共に発展していきたいと願っている組織です。この理念を実現するために、地域の皆さん、取引企業、職員が家族のように、一緒に発展していきたいと考えています。

当院は、医療の面から地域の皆さんといわき市の発展に寄与してまいります。

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  • 公益財団法人ときわ会 常磐病院 院長

    新村 浩明 先生

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