院長インタビュー

地域に根ざし、住民から信頼される病院を目指す聖隷三方原病院

地域に根ざし、住民から信頼される病院を目指す聖隷三方原病院
山本 貴道 先生

社会福祉法人聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院 病院長、社会福祉法人 聖隷福祉事業団 理...

山本 貴道 先生

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キリスト教精神“隣人愛”を掲げて設立された聖隷三方原病院は、1942年の開設以来、地域の基幹病院としての役割を担ってきました。ドクターヘリを有する三次救急施設であり、全国的にも数少ない認知症疾患医療センター(基幹型)にも指定されている同院の役割や今後について、病院長である山本 貴道(やまもと たかみち)先生に伺いました。

当院は1942年、聖隷創設者の長谷川 保(はせがわ たもつ)らによってこの地に開設されました(前・聖隷保養農園附属病院)。その後1973年に現在の聖隷三方原病院へと名称を改め、1981年には日本初となるホスピスを開設し、今日まで80年あまりにわたってこの地域の医療に携わってまいりました。この辺りは“聖隷発祥の地”といわれ、近隣には小・中・高・大学などの教育施設、検診センターや介護付有料老人ホームなどが建ち並びます。

当院は静岡県西部二次医療圏の基幹病院であり、ドクターヘリを有する三次救急施設として、静岡県西部地域を中心にした広いエリアをカバーしています。浜松市も全国の他の地域と同様、高齢者人口の割合は徐々に高くなりつつあります。救急で運ばれて来る患者さんの中にもご高齢の方が少なくありません。当院はこの地域における高度急性期医療を担いつつ、慢性期の医療や介護ニーズにも対応できる点が強みです。“医療”と“介護”が融合したモデルケースを確立することによって、地域に暮らす方々をしっかりと支えていきたいと考えています。

私が脳神経外科専門医(日本脳神経外科学会認定)であり、てんかんを専門にしていることから、当院においても“てんかん・機能神経外科”を新設して専門的な診療を行っています。けいれんが生じたり意識を失ったりするてんかんは、約7割の患者さんがお薬によって発作をコントロールできるといわれます。当院では残りの約3割、薬剤抵抗性と呼ばれる患者さんに対しても、開頭てんかん焦点切除術や迷走神経刺激療法などの治療をご提案することが可能です。

国内でも多くの症例数を誇るてんかんの手術に加えて、リハビリテーション科と連携して行う“ITB(髄腔内バクロフェン)療法”に対応していることも特徴です。ITB療法は脳卒中後の麻痺や脊髄疾患により痙性が強くなって、即ち硬くなって動かせない痙縮の症状を緩和し、患者さんのQOL(生活の質)向上に貢献する治療法です。

てんかん・機能神経外科としては今後、小児科・精神科・リハビリテーション科などと連携して診療を行う“てんかんセンター”の新設を見据えて、更なる診療体制の充実を図りたいと考えています。

当院は2014年7月に浜松市より認知症疾患医療センター(基幹型)の認定を受けました。認知症疾患医療センターは、認知症患者さんとそのご家族の支援体制構築を目的に、医療と介護の連携を推進します。この仕組みの中で当院は中核的(基幹型)な役割を担い、104床を有する精神科にて認知症患者さんの治療にあたっています。

認知症疾患総合センターでは、新薬“レカネマブ”によるアルツハイマー病治療が可能です。2023年12月に発売されたレカネマブは、アルツハイマー病の原因物質にはたらきかけ、病気の進行を抑制する治療薬です。アルツハイマー病の治療薬として国内で初めて承認されたレカネマブを使用できるのは、専門的な知識を備えた医師が在籍し、MRIをはじめとした検査機器や副作用に備えて入院可能な施設がより望ましいと考えられます。

ひと昔前の手術は、患者さんの胸やお腹を大きく切り開いて行われることが一般的でした。これに対して最近では患者さんの体にごく小さな穴を開け、そこからロボットアームなどを挿入して行う低侵襲手術(ていしんしゅうしゅじゅつ)(体への負担が少ない手術)が主流になりつつあります。

当院においても積極的に低侵襲手術に取り組んでおり、肺がん前立腺がん消化器がんなどに対しては手術支援ロボット(ダ・ヴィンチ)を使用した低侵襲手術が可能です。また整形外科では県内初となるMako(メイコー)を導入し、ミリ単位の精密な治療を行っています。ご高齢の方は骨折から寝たきりになるリスクが高いといわれますが、Makoによる手術とリハビリテーションによって早期回復をサポートしたいと考えています。

当院はキリスト教精神に基づいて創設され、私たちは今もなお“隣人愛”という理念を守り続けています。私が病院長になった後も高い志を持った医師たちの意見を取り入れつつ、さまざまなプロジェクトを発足させています。

プロジェクトの一環として新たに立ち上げたのが四肢外傷治療科です。三次救急施設である当院には、手足を切断してしまったり、専門的な治療を必要とする骨折を負ったりした患者さんが搬送されて来ます。四肢外傷そのものが命に関わることは少ないですが、受傷後すぐに適切な治療を行わないと機能障害が残りかねません。そうした事態を避け“1人でも多くの患者さんを救いたい”と、四肢外傷を専門にする整形外科医が集結し、救急外来、手術、リハビリに至るまでシームレスな医療をご提供しています。

もう1つ、こちらは自由診療での対応となりますが、2024年に入って新たに“形成外科・ぷらす”というプロジェクトをスタートさせました。近年は美容医療が身近なものになり、容姿を整えることを目的に美容外科を受けられる方が増えているようです。しかし手術を受けた患者さんの中には、想定外の仕上がりに戸惑い、悩み、苦しんでいる方も少なくありません。形成外科・ぷらすは、美容外科の結果に納得できずに「どうしたらよいか」とお悩みの方々の受け皿となり、容姿とお気持ちを整えるサポートをさせていただきます。

MN

当院は静岡県下最大規模の病床(934床)を運営するほか、重症心身障害児(者)に向けた聖隷おおぞら療育センター、三方原ベテルホーム(介護老人保健施設)などと連携することにより、医療・福祉・介護を幅広くカバーしています。医療過疎が進む山間部にドクターヘリを飛ばして救急患者さんを搬送するなど高度急性期医療を担う一方、国内で初めて開設したホスピスや認知症疾患医療センター(基幹型)などを有し、慢性期医療にも対応できる点が特徴です。

日本では少子高齢化が進行し、時代とともに地域の医療ニーズが変わっていくことが予想されます。ご高齢の方は1人でいくつもの病気をお持ちのことが多々ありますので、患者さんの全身を診て、適切な治療につなげなければなりません。また、ご高齢の方に多くみられる心不全などは、介護施設などと連携して治療にあたる必要があるでしょう。

当院ではすでにTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)を100症例以上手がけておりますが(2018年9月~の実績)、今後は新たに循環器センターを創設するなどして、医療提供体制をさらに充実させたいと考えています。医療の質と安全を管理する“TQM(トータル・クオリティ・マネジメント)センター”の活動を通して、よりよい医療の提供を目指してまいります。

*病床数、診療科、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年5月時点のものです。

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  • 社会福祉法人聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院 病院長、社会福祉法人 聖隷福祉事業団 理事・専務執行役員、学校法人 聖隷学園 理事、聖隷クリストファー大学 臨床教授

    山本 貴道 先生

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