中津市立中津市民病院は、国立中津病院から経営移譲を受けて2000年に開院しました。
中津市では企業誘致が進んでおり、県内の他地域よりも人口減少が緩やかかつ出生率も高い傾向があります。2018年現在、中津市立中津市民病院は大分県北~福岡東部24万人医療圏で唯一の公立病院であり、「この地域に住む方が医療で困ることのないようにしたい」という思いで医療に取り組み、市内のみでなく周辺地域からも患者さんを受け入れ続けています。
2012年に新病院竣工が行われ、限られた医療資源をより効率的に使用するため、2017年4月に小児救急センターを中津市立小児救急センターとして分離し、2018年6月には医師会や行政と連携して中津市全体で救急医療体制を刷新しました。また緩和ケアと急性期リハビリテーションを目的とした2019年の新病棟開設に向けた準備も進んでいます。
大分県がん診療連携拠点病院、地域周産期母子医療センター、災害拠点病院、地域医療支援病院として活躍する中津市立中津市民病院の診療科とその特長、中津市の救急医療体制などについて、病院長の是永大輔先生にお話を伺いました。
新臨床研修制度開始後に中断していた産婦人科を2010年に再開し、小児科や小児外科と連携して、妊娠中から出産後まで、親子それぞれに必要な医療とサポートをシームレスに提供できる、お産と子供の病気で困らない体制を整えました。
産婦人科(産科部門)では、通常の妊婦さんのみでなくハイリスク妊婦の方も受け入れ、新生児集中治療室(NICU)も併用した周産期医療を実施しています。
小児科では、子どものかかりやすい病気など全般を診療しています。特にアレルギー、心臓などの循環器、運動や言葉などの問題を扱う小児神経領域を専門的に診る医師が在籍しているのが特徴です。
小児外科では、15歳以下の患者さんの鼠径ヘルニアや陰嚢水腫などに対する手術をしています。鼠径ヘルニアでは、腹腔鏡と呼ばれる器具を使用して、なるべく体にメスを入れない手術をすることもあります。
年齢を重ねると、がん発症率と罹患率は上昇します。この地域は県内でも出生率が高く人口減少が比較ゆるやかですが、がん診療および患者さんやご家族に対するケアは重要な課題であることに変わりません。
胃や大腸や肝臓などでは外科や消化器内科、乳腺や子宮や卵巣など女性特有の臓器に生じたがんは乳腺外科や産婦人科、肺は呼吸器外科、腎臓や膀胱は泌尿器科、脳は脳神経外科、悪性リンパ腫等は内科といったように、それぞれの診療科が治療にあたります。放射線治療設備も有しているため、放射線治療にも対応しています。また、大学病院と連携しながら、吐き気や倦怠感など身体症状や不安や抑うつ状態などの精神症状を和らげるケアが必要な方を心療内科の外来で受け入れています。
緩和ケアに対するニーズは今後ますます増加すると考えられ、医師以外のスタッフも参加するチーム医療体制で緩和ケアセンターの開設準備を進めています。
循環器内科では、全身に血液を行き渡らせる心臓や血管などに生じた異常を調べ、カテーテルを用いた治療をします。狭心症や心筋梗塞、心臓弁膜症のように重篤な病気が多いのが特徴で、心臓血管外科では、冠動脈バイパス術や人工弁置換術などの手術を行っています。
新病棟では、治療後の早期の社会復帰に向けて急性期リハビリテーションルームを開設予定です。
歯科口腔外科では、一般的な歯科では対応が難しい歯や顎、口腔内粘膜の異常を診ます。横向きに生えた親知らずの抜歯や良性腫瘍、口腔がん、舌がんなどが主な対象ですが、赤ちゃんにみられる口唇裂・口蓋裂なども麻酔科(麻酔科標榜医:浅井信彦医師)・小児外科と連携して治療することもあります。
中津市内には当院を入れて7つの救急告示病院がありますが、夜間や休日などでは一次から三次まで当院に搬送者が集中していました。また、比較的軽度な救急の方でも当院を受診していたため、本当に緊急度の高い搬送者の受け入れに支障をきたすことが懸念されていました。
一方で地元医師会の高齢化も深刻な問題であり、事態を打開するため中津市と中津市医師会と市内の医療機関で協議を重ねた結果、市内にある各医療機関の特性をいかした救急医療体制を新構築して、2018年6月より運用を開始することにしました。
新しい救急医療体制では、原則としてまず一般救急対応病院(当院以外の6つの救急告示病院)や日曜・休日当番医院を受診していただき、市民病院は搬送時に重症と判断された患者さんや一般救急対応病院では対応が難しく紹介状を用意された患者さんへの対応に専念することにしました。
子どもの救急では、日曜・休日と平日夜間は中津市立小児救急センターを受診していただき、緊急入院が必要であれば中津市民病院で対応します。ご家庭で判断に悩んだときには、当院の看護師による小児救急電話相談を利用してもらいます。
このように中津市と中津市医師会と当院が三位一体となり、地域の医療機関とも横のつながりを意識しながら連携することで、本当に医療を必要とする患者さんにスムーズに提供できるよう努めています。
周産期医療、がん診療、救命救急などを展開して、中津市および周辺地域の患者さんを受け入れているため、症例も豊富で非常にバリエーションに富んでいます。指導医が中心となって病院全体で研修医を育てようという雰囲気にあふれており、より実践的な臨床能力を身につけられる環境が整っているといえるでしょう。
大分大学や九州大学の医学生に対するクリニカルクラークシップも導入していることや勤務医の疲弊防止対策を進めていることから、先輩医師からの口コミやSNSなどをつうじて当院での卒後臨床研修を希望する学生さんが増えています。
認定看護師育成の支援、研究会・学会の参加費や学会費の一部負担などのほか、毎週一回院内で英会話教室を開催するなど、診療スキル向上や自己啓発の場を設けています。毎日の診療で忙しい分しっかりリフレッシュしてもらえるよう、夏季休暇は6日間設定しています。子育てしながら働く職員も増えたため、院内に保育所も開設しています。若手医師がスキルを身に着けやすいだけでなく、原則として当直明けは休日となるように勤務シフトを調整しており、無理なく働ける環境づくりを進めて、働き方改革にも取り組んでいます。
医療は患者さんの命を預かる仕事です。そのため、皆さんを指導する医師は、ときに愛情をもって手厳しく指導することもあります。そのことはきっと将来の財産になることをご理解ください。
医師になってしばらくすると、何のために医師になったのか忘れてしまうこともあります。自分はどうして医師になったのか、なぜ医師でなければ駄目だったのか、時々自分自身のことを振り返ってみてください。
いつまでも初心を忘れずに高い志をいだき続けてほしいと願っています。
医療資源が限られた地方都市において、医師をはじめ職員のポテンシャルを引き出し、病院機能を最大限に発揮して、住民に安心安全の医療を提供すること、これは当院にとって大きく深いテーマです。その実現のためには、皆さんのご理解とご協力が欠かせません。
中津市を中心とした24万人医療圏の皆さんが抱える医療ニーズにお応えできるよう職員一同取り組んでまいりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。