院長インタビュー

堺市民のための“頼れる最後の砦”として成長する堺市立総合医療センター

堺市民のための“頼れる最後の砦”として成長する堺市立総合医療センター
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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1923年に堺市立公民病院として開院し、2023年7月1日に創立100周年を迎えた堺市立総合医療センターは、堺市および周辺地域の医療のセーフティネットとして様々な機能を拡充してきました。

コロナ禍においても、同院は“市民のために”をスローガンに、率先してCOVID-19入院患者を受け入れ、堺市二次医療圏で医療崩壊が起こらないように医療機関が連携・協力するための中心的な役割を担ってきました。また、生活習慣病やロコモ・フレイルの予防事業にも取り組むなど、同院は健康や医療に関する課題や問題点を多角的に見据えながら、患者さんを守るための取り組みを今も続けています。

そんな同院の特徴や強みについて、院長の大里 浩樹(おおざと ひろき)先生にお話を伺いました。

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外観(提供:堺市立総合医療センター)

当院は2023年7月に、創立100周年を迎えました。100年の歴史を振り返ると、終戦直前の堺大空襲や火災による焼失、大型台風による被災などを経験しましたが、1997年3月に災害拠点病院指定、2014年8月に地域がん診療連携拠点病院指定、そして2015年7月には堺市唯一の三次救急医療機関指定も受けるなど、政令市における公立病院として徐々に機能を拡充してきています。

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受付(提供:堺市立総合医療センター)

当院がある堺市は、堺市一市のみで二次医療圏(救急医療を含む一般的な入院治療が、その圏内だけで全て完結するよう設定されたもの)が構成されています。一市のみでの構成だからこそ、圏内の医療機関がしっかりまとまって課題に取り組みやすいという強みがあります。特に近年の高齢化社会に適した医療提供体制の改革には、病院、開業医、それをまとめている医師会、歯科医師会そして行政が連携していかなければ効果的な改革はできません。当院は、堺市二次医療圏で唯一の公立病院として、地域で抱える様々な課題を検討するため、医療機関、医師会、行政とのパイプ役を果たしていると考えております。

当院は堺市唯一の三次救急医療を提供する急性期病院として、生命に関わる重篤な患者さんの救急対応に重点を置いておりますが、それだけではありません。

今後の社会情勢などを見据えたうえで、ジェネラル(総合的・全体的)な診療やがん医療にも力を入れております。

救命救急科(救命救急センター)は、重篤な患者さんの生命を救うための“救急医療最後の砦”となる科です。救命救急科医師によって24時間365日体制で、途切れることのない救急診療を実施しております。

救急外来対応だけでなく緊急手術や処置、集中治療にも対応しており、さらに転院や外来フォロー(経過観察)などについても、患者さんの意思を尊重したシームレスな医療提供を心がけております。

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ハイブリッド手術室(提供:堺市立総合医療センター)

当院の総合内科は、専門性がきわめて高い一部の内科疾患を除く、ほとんど全領域の内科疾患の診療を担当しています。

今後ますます高齢化の進行や生活習慣病などの増加が予想されるだけでなく、すでに現時点でも複数の病気を抱えている患者さんが数多くいらっしゃいます。適切な病歴聴取と身体診察を通じて診断を行っていく当科の存在意義はとても大きいと考えております。

また、内科疾患の中でも特に頻度が高い感染症に対しては、さらなる対応力の高さを実現できるよう、2019年度より感染症専門医(日本感染症学会認定)を常勤スタッフに加えています。

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外来(提供:堺市立総合医療センター)

当院は地域がん診療連携拠点病院として、がん医療にも力を入れております。

外科手術・薬物治療・放射線治療などでの治療を行い、がんの種類や進行度によっては複数の治療法を組み合わせる“集学的治療”を行うこともあります。また、治療法の選択に今後欠かせない遺伝子パネル検査の実施件数も着実に増えてきています。外科手術においては、2016年4月、2022年9月に導入した手術支援ロボット“da Vinci(ダビンチ)Xi” 2台を積極的に活用し、低侵襲手術を心がけています。

堺市の健康・医療をとりまく社会情勢の課題として、まず挙げられるのは高齢化の進行ですが、留意すべき課題はそれだけではありません。

堺市民の検診受診率は伸び悩んでいますし、生活習慣の乱れによって悪化する病気の発症率も全国平均より高い、という問題もあります。さらに日本全体においても、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)は、生物学的な平均寿命よりも約10年短いという問題があります。こうした数々の課題や問題点が積み重なり、日本の医療費・介護費は増大の一途をたどっています。

生活習慣病が増悪し、より侵襲的な治療を受けざるを得ない状態や、要介護の状態になってしまうと元の健康・元気な状態に戻ることはきわめて困難です。だからこそ病気にならないための意識づくりが重要ですし、できるだけ健康寿命を延ばして、介護が必要な期間を短くすることも大切なのです。そのために役立つ予防事業への取り組みにも、当院は力を入れています。

2020年4月に“疾病予防管理センター”を設置し、予防事業への本格的な取り組みをスタートしました。

疾病予防管理センターでは、堺市民の方々に日頃から健康の増進、病気の予防に気をつけていただけるような取り組みを実施するため、健診事業だけでなく生活習慣病予防事業やフレイル(加齢などによる心身の活力低下で、要介護状態の一歩手前の段階になってしまうこと)予防事業、がん予防事業などを、行政や大学、企業と協力して行っております。

当院では、市民の方が広く参加できる無料の健康啓発イベントも積極的に開催しています。

たとえば2024年3月には、市内商業施設にて疾病予防とフレイル予防のイベントを開催し、同年5月にも疾病予防と健康に関するイベント「看護フェア」を開催しました。ちなみにこれらのイベントは、どちらも堺市の協力のもと開催しました。普段、医療機関を受診する機会の少ない市民を対象にロコモ・フレイル予防や健診受診の重要性への関心を高めることができたと考えております。今後も当院は、堺市民の健康増進と健康寿命の延伸をめざした様々な取り組みを行政や大学、企業等と協力して実施してまいります。

当院は2023年7月に創立100周年というひとつの大きな区切りを迎えましたが、これからの新たな100年は、今後の社会情勢を見据えた対策が必要だと考えています。

今後ますます高齢化が進み、それにともない救急搬送も増えることでしょう。当院は三次救急医療機関ではありますが“三次救急だから、重症・重篤の患者さんしか受け入れられません”というようなことはしたくありません。一次や二次の患者さんもできるだけ受け入れられるような体制を敷いていきたい、そう考えております。

市民の皆さんの健康や生命を守るための“頼れる最後の砦”となれるよう、今後も成長をめざし様々なチャレンジを続けていきますので、ご理解とご支援をいただけますと幸いです。

*診療科、医師、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年4月時点のものです。

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