広島県広島市中区平和記念公園の南側に位置する土谷総合病院は、特定医療法人あかね会が運営する急性期病院です。あかね会は同院を中心に急性期医療から在宅医療まで切れ目のない医療を提供しています。土谷総合病院の役割、そしてあかね会全体での地域包括ケアシステムへの取り組みについて、特定医療法人あかね会 理事長 土谷晋一郎先生にお話を伺いました。
土谷総合病院は、あかね会全体が提供する医療・介護の中核となる急性期病院です。
急性期医療のなかでも、循環器疾患、腎疾患、上肢(腕や手)の疾患、甲状腺疾患等の診療で、多くの患者様の紹介をいただいております。また、新生児特定集中治療室(NICU)を備え、地域周産期母子医療センターに指定されています。全ての診療科についてご紹介したいのですが、紙面(サイトスペース)の都合上、いくつかの疾患の診療と周産期医療についてお話しいたします。
循環器治療では、心カテーテル治療、カテーテルアブレーション、心臓手術などを数多く行っています。
心カテーテル治療は、狭心症や心筋梗塞などで、狭くなったり詰まったりした冠動脈にカテーテルを挿入し、バルーン(風船)を膨らませて広げる治療です。林康彦心臓血管センター長・沖本智和部長を中心に診療を行っています。
カテーテルアブレーションは、動悸、息切れなどがあり、薬では制御しにくい不整脈に対して行う治療で、心筋を焼き、不整脈の原因となる電気信号を遮断します。村岡裕司部長を中心に数多くの患者様の治療を行ってきました。
心臓血管外科では、新生児から高齢者まで、毎年約300~400例の手術を行っていて、そのうち8割が心臓・胸部大動脈手術です。望月高明顧問・山田和紀部長が心臓血管外科を牽引してきました。
また、2014年9月、経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)実施施設として、認可を受けました。TAVIは重症の大動脈弁狭窄症の患者さんに対し、開胸することなく、また心臓を止めることもなく、非常に小さな切開を通して、カテーテルによって人工弁を心臓に留置する、体への負担が少ない治療方法です。大動脈弁狭窄症とは、心臓弁膜症のひとつで、大動脈弁の開きが悪くなり、血液の流れが妨げられてしまう病気です。高齢化に伴い、動脈硬化による大動脈弁狭窄症の患者さんが年々増加傾向にあります。
1967年に人工透析治療を開始しました。当時、日本全国の透析患者数は、合計で約200名程度でした。人工透析治療は、腎臓から血液中の老廃物等を排泄できなくなった腎不全の患者様に対する治療で、2種類の方法があります。血液透析と腹膜透析です。血液透析は機械を使い、体の外に血液を取り出して血液をきれいにする方法で、腹膜透析は腹腔内(おなかのなか)に透析液を注入し、腹膜を介して血液をきれいにする方法です。
腎不全患者様の治療を担当している川西秀樹副院長は、腹膜透析の重篤な合併症である被嚢性腹膜硬化症治療の第一人者です。この合併症を抱える透析患者様の手術を数多く行っていて、外国からも3名(米国・イスラエル・台湾)の被嚢性腹膜硬化症の患者様が来られました。
あかね会は1997年に広島手の外科・微小外科研究所を開設しました。診療は土谷総合病院で行い、手の外科領域の高度な医療技術を提供しています。
この研究所は、上肢の障害に悩む患者様のことを第一に考える施設で、上肢の外科手術の情報収集や、上肢の治療に関する研修を希望する医師・作業療法士に、その機会を提供しています。今まで、日本全国から29名の整形外科の医師(うち28名広島県外)、7名の作業療法士(うち5名広島県外)が、研修に来られました。
所長は、木森研治整形外科部長(土谷総合病院)です。
広島大学第二外科の甲状腺外科治療を土谷総合病院で継承しています。杉野圭三副院長を中心に、難治性甲状腺がん等の甲状腺疾患に対する最先端医療を行っています。根治手術を行い、かつ、食道・気管・喉頭・神経・頚動静脈などの甲状腺周辺の重要臓器を温存・再建しています。
第7次広島県保健医療計画(2018~2023年度)においても、土谷総合病院は地域周産期母子医療センターに位置付けられています。
土谷総合病院の産婦人科は、土谷治子院長以下、医師全員女性で、病棟スタッフはほぼ全員助産師です。分娩に関しては、何よりも母児の安全を優先し、手術時には麻酔科医師(麻酔科標榜医:和泉博通部長、新澤正秀医長、北川麻紀子医長、豊田有加里医師)が麻酔を担当し、ハイリスク胎児に対しては小児科医師が立ち会います。
しかしながら、広島市においても、産婦人科医師不足が顕在化しています。2005年以降、広島市内の4つの病院で、医師不足のため分娩休止となりました。
医師不足が表面化した産婦人科だけでなく、小児科・救急診療等においても、医師は過酷な労働を強いられ、数多くの当直業務をこなさなければいけない状況に追い込まれています。こういった状況下で、2018年6月、「働き方改革法案」が成立し、医療界においても「労働時間の是正」が強く求められることとなりました。しかしながら、医師は、応召義務(診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。医師法第19条第1項)を課せられていて、目の前に苦しんでいる患者さんがいて、命にかかわる状況にある場合、立ち去るわけにはいきません。また、プロフェショナルとして早く一人前になるためには、時間外であっても医療現場で自己研鑽を行いたい、患者様を診ることが勉強になると考える医師も数多くいます。こういった医療の特殊性について、どの程度考慮していただけるのか、注意深く、行政の判断を見守りたいと考えております。
土谷総合病院の前身は1937年4月に開院した土谷病院(外科)で、1966年に医療法人化しました。地域の医療ニーズに応えるべく、診療科を拡充し、1988年には、土谷総合病院に改称しました。あかね会では、土谷総合病院の他に、阿品土谷病院(療養病床:慢性期病院、廿日市市)、介護老人保健施設シェスタ(廿日市市)、中島土谷クリニック、大町土谷クリニック、居宅介護支援事業所8か所、訪問看護ステーション5か所、ヘルパーステーション9か所、デイサービスセンター2か所、地域包括支援センターを運営し、急性期から在宅まで切れ目のない医療・介護を提供しています。
2025年に向けて地域包括ケアシステムを構築すべく、各自治体や医療機関でさまざまな取り組みが行われています。
地域包括ケアシステムとは、高齢者が、住み慣れた地域で、安心してその人らしい生活を継続できるように、住まい、医療・介護、予防、生活支援を包括的に提供するシステムです。
あかね会の理念の一つが「明日の医療のあり方に機能しよう」です。地域包括ケアシステムは明日の医療のありかたのひとつだと考えています。土谷総合病院は地域包括ケア病棟を備え、阿品土谷病院・老人保健施設シェスタ・中島土谷クリニック・大町土谷クリニックおよび在宅事業部で地域包括ケアシステムに取り組んでいます。在宅事業部の居宅介護支援事業所・訪問看護ステーション・ヘルパーステーション・デイサービスセンター・地域包括支援センターのご利用者は、2,500名を超えてきました。
我々あかね会職員は、地域医療を支えていく医療機関の一つとして日々の診療に尽力し、地域包括ケアシステムに貢献できるよう取り組んでいます。
今後も日々の努力を積み重ね、地域の皆様に必要とされる医療・介護を提供できるよう、努力してまいる所存です。
(医)あかね会 理事長
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。