安芸高田市に位置する吉田総合病院は健康管理センターでの地域住民の健康維持に努めるほか、急性期治療の提供や療養病棟、地域包括ケア病棟で慢性期医療の提供に尽力しています。過去にはモンスターペイシェントから職員を守るため、さまざまな取り組みを行い職員が安心して働ける環境の維持に努めたこともあると住元先生はおっしゃいます。同院の折組やモンスターペイシェントに対して行った対応について、JA広島厚生連 吉田総合病院 院長 住元一夫先生にお話を伺いました。
1988年に開設した人工腎透析センターでは、血液浄化をはじめ腹膜透析を提供しています。また、薬物中毒や敗血症(感染症をきっかけにさまざまな臓器に機能不全が現れる病状)などに対する血漿交換も実施しています。
同センターは、外科の医師、臨床工学技士、看護師が中心となって人工透析を行っています。血液透析は、透析治療を開始する前にシャント術を行わなければいけません。そのため、シャント形成のための外科手術が必要になります。
血液透析を開始する前だけでなく、その後も外科の医師が透析治療に携わることでシャントの破損や狭窄が起こった場合も迅速な修復が可能です。
さらに、地域の医療機関から血液透析やシャント術の紹介を受けることもあります。地域の医療機関との連携を今まで以上に深め、人工透析治療を支えていきたいと思っています。
当院は精神科病棟を設置しています。精神疾患で別の医療機関に入院していた患者さんが骨折やがんなどになることもあります。精神科病棟では、そういった患者さんを受け入れ、骨折やがん、リハビリテーションを実施しています。
総合病院のなかに精神病棟を設置しているため、県内の精神病棟を設置している医療機関から、患者さんをご紹介していただくことが多くあります。精神科閉鎖病棟も設置してあり、外科的、内科的な治療にも対応することができる病院として、当院で治療にあたっています。
地域の健康維持、促進に貢献するために健康管理センターを設置しています。定期健診をはじめ、人間ドックや脳ドック、生活習慣病予防健診も実施しています。また、オプションで前立腺がんの血液検査や肺がんのCT検査なども行えます。
検査の結果、病気の疑いがある方には対応できる診療科をご紹介し、治療につなげています。また、健診センターの医師が問診し、結果も医師からお話ししています。
当院は、過去にモンスターペイシェントの対応を行ったことがあります。職員が安心して働ける環境がなければ、自身の技術や能力を十分に発揮することができなくなってしまいます。
モンスターペイシェントとは、医療機関や医療従事者に対して理不尽な要求をし、ひどい場合には暴力をふるってしまう患者さんやそのご家族のことを指す和製英語です。近年、学校教育の現場でも問題になっているモンスターペアレントが医療の現場にもいる、と言うと想像しやすいかもしれません。
当院では、幸いなことに暴力を振るわれた職員はいませんでした。しかし、モンスターペイシェントの威圧的な言葉づかいや、無理な要求に職員の心が傷つき疲弊していってしまいました。この現状をどうにかしなくては、職員や患者さんの安全を守ることができないと考え、警察や検察官に協力を仰ぎました。
結果的に、職員と患者さんの安全を守ることができました。そして、この一連の出来事を受けて、近隣の警察とのホットラインの設置や警察OBの雇用などを実施しました。また、院内には防犯カメラや防犯ブザーを設置し、さらなる防犯体制の強化を図っています。
急性期医療の提供だけでなく、精神科開放病棟と閉鎖病棟を有していることから、近隣の医療機関から精神疾患の患者さんでがんや骨折などの身体合併症を持っている方のご紹介を受けることも多くあります。また、精神疾患だけでなく、急性期医療が一段落しても在宅復帰に不安の残っている患者さんや老人保健施設などに入所していて病状が悪化した患者さんを受け入れ治療にあたっています。
患者さんをご紹介いただくには、地域の医療機関や医師会との信頼関係を築くことが大切です。そのため、当院では医師会の先生方との親睦を深めるために年2回病診連携懇談会を開催しています。医師会の先生方と顔の見える関係をつくり、患者さんが次の医療を受けるうえでスムーズになるように努めています。
当院は地域の皆さまだけでなく、島根県などの近隣の県からも来院される患者さんがいらっしゃいます。全国的に高齢化が進み、高齢者医療だけでなく老人保健施設なども活用して切れ目ない医療提供に努めていきたいと思います。普段は在宅医療を受けていただき、病状が悪化した際に入院する形を取ることで、地域包括ケアシステムの構築につながると考えています。また、レスパイト入院やショートステイなども利用し、地域医療に貢献してまいります。
JA広島厚生連吉田総合病院 病院長、JA広島厚生連 理事
JA広島厚生連吉田総合病院 病院長、JA広島厚生連 理事
日本外科学会 外科認定医・外科専門医・指導医日本消化器外科学会 消化器外科認定医・消化器外科専門医・消化器外科指導医・消化器がん外科治療認定医日本透析医学会 透析専門医・透析指導医
1979年広島大学医学部第2外科に入局し、消化器外科医師としてキャリアをはじめる。専門領域とし肝臓移植をテーマに1988年医学博士を修得、以後臨床では腎移植、透析外科にもたずさわる。1997年JA広島厚生連吉田総合病院に赴任し、2001年副院長、2002年病院長に就任。2018年現在17年目を迎える。安芸高田市の総合病院として中山間地域の医療を守るため医師会、行政と緊密に連携し、医療の質と安全を確保しながら地域に開かれ親しまれ信頼される医療を提供している。
住元 一夫 先生の所属医療機関
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現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。