おりものが多い:医師が考える原因と対処法|症状辞典

おりものが多い

メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】

おりものは、女性生殖器からの分泌液などが腟を通して体外へ排出されるものです。腟内を潤し、細菌やウイルスの侵入を防ぐ重要な役割を持ちます。

おりものの量や色は性周期によって変化しますが、何らかの原因で通常よりも多いおりものが排出されることがあります。

  • おりものの量が多くなり、色や臭いに変化がある
  • ほかの症状はないものの、水っぽいおりものが大量に出る
  • 腹痛や発熱などの症状を伴う

このような症状が見られる場合に考えられる原因には、どのようなものがあるのでしょうか。

不規則な生活習慣などがおりものの量を増加させる原因になっていることがあります。以下のような生活習慣に心当たりがある人は注意しましょう。

ストレスや疲れは、体の免疫力を低下させ、腟内常在菌の自浄作用が低下することで細菌性腟炎やカンジダ腟炎を引き起こすことがあります。

また、ストレスによって女性ホルモンの分泌異常を生じ、性周期が乱れることで、おりものの量が増えることもあります。

ストレスや疲れが溜まったときは

ストレスや疲れを溜めがちな人は、十分な休息や睡眠を確保して体を癒す時間を取るように心がけましょう。また、自分に合ったストレス解消方法を身につけ、なるべくストレスを感じない生活を送ることも大切です。

外陰部は下着や生理用ナプキンなどでむれやすく、細菌やカンジダが異常増殖して細菌性腟炎やカンジダ腟炎の発症を促すことがあります。

外陰部がむれてしまうときは

外陰部のむれの原因は、通気性の悪い下着や生理用ナプキンの長時間にわたる着用などです。外陰部のむれを防ぐには、通気性のよい綿素材の下着を選ぶ、こまめに生理用品を交換する、長時間にわたってストッキングやタイツを履かないなどの対策を行いましょう。

生活習慣を改善しても、おりものの量に変化がない場合には、思わぬ病気が潜んでいる可能性も否定できません。一度婦人科の受診を検討しましょう。

成熟期の女性には性周期があり、卵子の成熟を促す卵胞期、排卵が生じる排卵期、子宮内膜が成熟する黄体期に分けられています。性周期の発現には、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが関与しており、おりものの量や色は性周期によっても異なります。一般的には、排卵期前後に分泌量が増えるとされています。

おりものの増加は女性の生理現象のひとつといえますが、以下のような生殖器官の病気が原因で起こることもあります。

腟内に炎症が生じると、おりものの量が増えることがあります。具体的には、以下のような病気が挙げられます。

細菌性腟炎

腟内には細菌やウイルスの侵入を防ぎ、腟内を清潔に保つ自浄作用のある常在菌が多く生存しています。しかし、抗菌薬の服用やストレス・睡眠不足などによる免疫力の低下、腟の過剰な洗浄などによって腟内の常在菌が減少すると、さまざまな細菌が腟内で繁殖して細菌性腟炎を生じることがあります。

発症すると、おりものは量が増えるほか、悪臭を伴ったり灰色や黄緑色などに色調が変化したりすることがあります。また、外陰部のかゆみなどの症状が生じます。

性感染症

腟は、性行為によってクラミジアや淋菌(りんきん)、トリコモナスなど、さまざまな細菌やウイルスに感染する可能性があります。性行為によって感染するこれらの感染症を総称して性感染症と呼びますが、おりものの量が増える原因になります。

性感染症の種類によっておりものの性状や色などは異なり、代表的には以下のようなものがあります。

  • 腟トリコモナス:強い悪臭を放つ黄緑色の泡状のおりものが多量にみられる
  • 淋菌感染症:刺激臭のある黄緑色の汁のようなおりものがみられる
  • クラミジア感染症:水っぽいおりものが増える

など

また、おりものの異常だけでなく、腹痛や発熱、外陰部のかゆみなどの症状を伴うのが一般的です。

カンジダ腟炎

カンジダは、腟内に常在するカビの一種で、通常は腟内常在菌の作用によって増殖が抑えられています。しかし、抗菌薬の使用や一時的な免疫力の低下などによって常在菌の自浄作用が弱まるとカンジダが異常増殖し、腟内に炎症を引き起こすことがあります。

カンジダ腟炎では、白いクリームや酒粕(さけかす)のようなおりものが増え、外陰部の強いかゆみ灼熱感(しゃくねつかん)(焼けるように熱い感じ)などの症状が見られます。

子宮からの分泌物は腟を通しておりものとして体外へ排出されるため、子宮内の病気が原因になっておりものの量が増えることがあります。具体的には、以下のような病気が挙げられます。

子宮がん

子宮がんは、がんができる部位によって子宮頸(しきゅうけい)がん子宮体がんに分けられます。いずれもおりものの量が増加する原因になり、出血や悪臭を伴います。

進行すると、下腹部痛や体重減少などが見られるようになります。

子宮内膜炎

細菌やウイルスが子宮内膜に感染することで炎症を引き起こす病気です。多くは腟への感染が子宮内に上行性に波及することで起こります。水っぽいおりものが増え、腹痛や発熱、倦怠感などの全身症状を伴うのが特徴です。

卵巣は女性生殖器のひとつであり、女性ホルモンの分泌や卵子の成熟など重要な役割を担っています。おりものの量を増加させる卵巣の病気としては、以下のようなものが挙げられます。

卵巣がん

女性ホルモンを産生するタイプの卵巣がんは、おりものの増加を促すことがあります。進行すると、腹痛や下腹部の膨満感などの症状を伴うようになります。

おりものの量は性周期によって変化します。一般的には排卵前後の時期におりものの量が増えますが、分泌量には個人差があります。こまめにおりものシートを交換しなければならない人もいれば、下着がわずかに濡れる程度の人もいます。

このため、おりものの分泌量の正常範囲についての明確な基準はありません。大切なのは、おりものの増加が急激に起こったか、おりものの色や性状に変化があるか、おりものの異常以外の症状があるかという点です。おりものの量は、さまざまな病気が原因となって増えることがありますので、これらの観点から異常を感じた場合はなるべく早めに婦人科を受診するようにしましょう。

また、受診時には、おりものの量が増えはじめた時期、おりものの臭いや性状、他の症状を医師に明確に伝えるようにしましょう。性感染症にかかっている可能性がある場合には、その旨も伝えると診察・検査がスムーズになります。

受診の目安

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • おりものが多い、かゆみ、痛みなどがある
  • 月経周期に関わらず、ずっとおりものが多い

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 排卵期と思われる時期のみおりものが増える
原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。