陰部がかゆい(女性):医師が考える原因と対処法|症状辞典

陰部がかゆい(女性)

メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】

女性の陰部は、大陰唇(だいいんしん)小陰唇(しょういんしん)、陰核、腟前庭(ちつぜんてい)など腟口の周囲を取り囲む部位からなります。陰部の多くはデリケートな粘膜で覆われており、便や尿、腟分泌物などが溜まりやすい上に蒸れやすいため、さまざまなトラブルを起こす可能性があります。中でも、陰部のかゆみは発生頻度の高い症状であり、病気や日常生活上の好ましくない習慣など、原因は多様です。

これらの症状が見られた場合、原因として考えられるものには、どのようなものがあるのでしょうか。

陰部はデリケートな上、不衛生な状態になりやすいため、かゆみを引き起こしやすい部位です。以下のような好ましくない生活習慣が、かゆみの発症を促すこともあります。それぞれの対処法も合わせて見てみましょう。

陰部は下着や衣類で通気性が悪く、汗や分泌物が溜まりやすい部位であるため蒸れやくなります。蒸れは陰部の皮膚や粘膜の刺激となってかゆみを引き起こすことがあります。

陰部を蒸らさないためには

綿やシルクなどの汗を吸収しやすい素材の下着を選び、汗をかきやすい夏場はストッキングやスキニーパンツなど蒸れやすい衣類の長時間の着用は控えるようにしましょう。また、生理用品も蒸れの原因になることがあるため、こまめに取り替えることを心がけましょう。

腟内にはさまざまな常在菌がおり、それらが膣内を清潔な環境に維持する自浄作用を持ちます。陰部や腟の過剰な洗浄は、これら常在菌を洗い流してしまうことがあり、自浄作用の低下によってかえって不衛生な環境に陥ることがあります。その結果、陰部のかゆみや発赤、ただれなどの症状を引き起こすことがあります。

陰部を正しく洗浄するには

陰部を洗浄する際には、固いスポンジやタオルなどは使用せず、よく泡立てた石鹸を手に取って優しく撫でるように汚れをふき取るようにしましょう。また、デリケートゾーン用の刺激の少ない石鹸を使用するのもおすすめです。

月経血にはさまざまな雑菌が含まれ、生理用品は通気性が損なわれるため、長時間の使用は陰部を非常に不衛生な状態にします。その結果、陰部が荒れてかゆみを引き起こすことも少なくありません。

生理用品による陰部の炎症を予防するには

生理用品はこまめに取り替えるよう心がけ、肌に合わない刺激のある素材のものは避けるようにしましょう。特に、タンポンの長時間使用は非常に危険ですので、2時間以内をめどに取り替えるようにしましょう。

日常生活上の対処法を講じてもかゆみがよくならない場合は、思わぬ病気が潜んでいる可能性があります。見過ごさずに、それぞれの症状に合わせた診療科を受診しましょう。

女性の陰部は非常にデリケートなため、さまざまな原因でかゆみを引き起こします。陰部のかゆみは以下のような病気が原因で生じることもあるため、注意が必要です。

陰部のかゆみは、陰部に特異的に発症する病気によって発症することがあります。原因となる主な病気は次の通りです。

腟カンジダ症

カビの一種であるカンジダが腟内で異常増殖し、腟内~陰部のかゆみ、白いカッテージチーズ様のおりものを生じる病気です。かゆみは非常に強く、灼熱感を伴うことも少なくありません。カンジダは腟内の常在菌ですが、風邪をひいたときや疲れが溜まったときなどに免疫力が低下すると、異常増殖して腟カンジダ症を発症することがあります。また、抗生剤を使用した際などに生じることも原因として多いです。

カンジダ症
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性感染症

性行為によって種々の病原体に感染することによって発症する病気です。クラミジアや腟トリコモナス、淋病(りんびょう)梅毒(ばいどく)などさまざまな種類のものがあります。これらの性感染症の中には陰部にかゆみを生じるものが多く、おりものの色や量、形状の変化、下腹部痛などの症状を伴うのが特徴です。

腟トリコモナス症
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淋病
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梅毒
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細菌性腟炎

大腸菌や黄色ブドウ球菌など陰部から検出されることが多い病原体が、活発に作用して腟や陰部に炎症を引き起こす病気です。強い悪臭のある水っぽいおりものが大量に分泌されるのが特徴で、陰部のただれや痛み・かゆみが生じることがあります。

原因は、衛生状態が悪い陰部のほか、体調の変化による免疫力の低下や、陰部の過剰な洗浄による自浄作用の低下などが挙げられます。

陰部のかゆみは、全身のどこかに生じる病気の症状の一つとして発症することがあります。原因となる主な病気は次の通りです。

接触性皮膚炎

特定の物質に触れることで皮膚や粘膜に炎症を生じる病気です。いわゆる、かぶれと呼ばれるもので全身のさまざまな部位に起こり得ます。陰部では、生理用品や下着などが原因になることが多く、特に汗で蒸れやすい夏場に発症しやすくなるのが特徴です。また、陰部のかゆみのほか、発赤や熱感、ただれなどの症状を伴うこともあります。

アレルギー

特定のアレルゲンが体内に取り込まれたり、触れたりすることで蕁麻疹や皮膚のかゆみ、くしゃみ、鼻水などのアレルギー症状を引き起こす病気です。これらの症状が陰部に生じることもあり、通常は発症後数十分~数時間で自然に症状が収まりますが、重症な場合には呼吸困難や血圧低下などの重篤な症状が見られることもあります。

アレルギー
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更年期障害、閉経後

女性は45歳頃から、閉経へ向けて女性ホルモンの分泌が徐々に低下する更年期を迎えます。更年期にはおりものの分泌量が低下し、閉経するとおりものは著しく減少します。このため、腟や陰部が乾燥して炎症やかゆみを生じることがあります。

閉経
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陰部のかゆみはありふれた症状であるため、軽く考えて自然に治るのを待つ人も多いでしょう。しかし、かゆみの原因は病気であることもあり、放っておくとますます症状が悪化したり、将来的な不妊症につながったりするケースもあるため、注意が必要です。

特に、陰部の皮膚や粘膜にただれなどの症状がある場合、おりものに変化が見られた場合、発熱などの全身症状がある場合などはなるべく早めに病院を受診するようにしましょう。

受診に適した診療科は婦人科ですが、アレルギーが疑われるような場合には皮膚科や内科などで診てもらうことも可能です。

受診の際は、いつからかゆみが生じたのか、かゆみ以外の症状、性行為歴などを詳しく説明するようにしましょう。特に、パートナーが性感染症にかかった場合や不特定多数との性行為を日常的に行っている場合は、性感染症の可能性がある旨を事前に医師に知らせておくと診療がスムーズに進むことがあります。

受診の目安

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • おりものが多い、臭い、かゆみ、痛みなどがある
  • 皮膚の表面に発疹(ほっしん)などがある

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • ナプキンにかぶれたなど原因がはっきりしており、原因を取り除く事で改善する
原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。